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若年者保護に関する理屈の整理

性交同意年齢・若年者保護に関する意見が混乱しているので、理屈を整理しておこうと思う。

まず、保護法益論と、性交同意年齢・若年者保護規定を単一の理屈で説明する方法がある。
たとえば、性犯罪の保護法益を、性的自由・性的自己決定とする立場から、「何歳であれば、性的な行為について、自由な意思決定をする能力があるのか」と考える方法である。

このように考えると、ロミオとジュリエット法のように、年齢差要件を設けて若年者同士の性交を非犯罪化する考え方は、論理矛盾にみえるかもしれない。

しかし、性交同意年齢・若年者保護規定は、性犯罪自体の保護法益だけに結びつけられるものではない。

性交同意年齢・若年者保護規定の理屈は、脆弱性ある者の保護にあるという考え方がある。

脆弱性保護の考え方からすると、性交同意年齢は、保護すべき脆弱性のある年齢はどこか?という発想で検討する。
また、ロミオとジュリエット法のような年齢差要件のある規定は、「どの程度の年齢差があれば、脆弱性を利用して、性交に持ち込むことが類型的に可能か」という発想になる。

野党議員の「50歳の私が14歳と性交したらつかまるのはおかしい」との発言を「キモい」と批判した人がみな、加トちゃん夫妻を同様に批判したりしない。むしろ結婚当初は綾菜氏が遺産目当てとバッシングを受けた記憶だ。
では、なぜ野党議員発言は「キモい」と叩かれたのか。

法制度を語るに足る格式のある言葉で表現すれば、「若年者の脆弱性を利用するに足る年齢差」があり、中学生と国会議員には「若年者の脆弱性を利用するに充分な事実上の影響力を推認させる社会的地位の差」があるからである。
「キモい」という表現は感覚的であってバックラッシュを招きやすいので、ぜひ脆弱性をベースとした表現を、お使いいただきたい。

脆弱性保護の考え方は、性犯罪自体の保護法益をどのように解しても結びつく。

性犯罪の保護法益を心身の完全性・心身の統合性にあるとする国にも、若年性保護規定はある。
また、性犯罪の保護法益を、性的自己決定権とするドイツにも、脆弱性保護の理由で若年性保護規定はある。
しかも、ドイツは、年齢差要件・影響力利用要件がダブルである。

以上のとおり、性犯罪の保護法益をどのように解するのであれ、若年性保護規定は結びつく。保護法益がどうあれ、ロミオとジュリエット法をくっつけても論理矛盾ではない。性犯罪に関する刑事法検討会で、保護法益からギチギチ詰めて議論しなかったのも、これが理由である。



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