【DIGDAGMUSIC+】音楽掘削作業と雑感 (4)Bénabar - Gilles César

 ZackではなくZak、SarahではなくSara。普通と少し違う綴りを持った少年と少女が主人公の Zak and Sara は Ben Folds のヒット曲である。

 ベン本人の解説によれば「この曲は、ある高校生カップルのポートレートになってるんだ。サラがアンプの上に座って、ザックという彼氏がギターを弾いてるのを見つめている光景。彼女は彼の演奏をちゃんと観ているように見えるんだけど、実際のサラの頭の中では、テクノ・ミュージックが流れてるんだ。」とのことだが、なぜ少年少女二人の名前からCやHが抜け落ちているのかには言及されていない。よくある名前なのに少し人とは違う綴り、彼らのキャラクターは変わり者だと暗喩してるのだろうか。わからない。こんなカップルは珍しくもないだろうに。

 ところで、こちら、 Bénabar の新しいアルバム Inspiré de faits réels に入っている曲 Gilles César の歌詞は分かりやすい。 

  ジル・シーザーは、ローマ最大の英雄ジュリアス・シーザーと姓が同じであること以外は、何の変哲もない男である。そんなジルの気持ちを唯一わかってくれる友人のアンリ・ポッターは、もちろん、あの魔法使いの少年ではない。不動産屋だ。ジルはモンローではないマリリン・モローと出会って恋に落ち、アンリ・ポッターが立会人となって結婚した。

 歌詞は「で?」としか感想の出ない内容だが、その音は、まるで勇壮な活劇のように始まり、登場人物が何かドラマティックな人生を生きているようなメロディーが続く。そこに、 Bénabar の真剣なのかとぼけてるのかわからない声が弁士のように重なる。

Ma chanson qui se termine. J’espère au moins qu’elle était bien ! Gilles Césa.(ぼくの歌はこれでおしまい。とにかくよかったね!ジル・シーザー)

 凡庸な人たちの凡庸な幸せだってドラマだ。よかったね!