【DIGDAGMUSIC+】音楽掘削作業と雑感 (1)Eddy Miath-Tonbé Damou

 カリブ海に浮かぶアンティル諸島出身のズーク歌手Eddy Miath。おそらく日本での知名度は限りなくゼロに近い。

 ズーク誕生の地であるアンティル諸島はフランス領だが、もしかしたらフランス語圏でも知名度がないのかもしれない。だってフランス語で検索してもあまり情報がないんだもの。 

 Rythmo Discというレーベルから1988年にリリースされたアナログ盤のタイトルチューン『Tonbé d’amou』はEddy Miathの甘い声に、擬人化されたセクシーなカバのごとく微笑むClaudia Saint Amandのシフォンの声が絡む。

 最初にこの曲を聴いたとき「これ誰の曲?」「エディー…なんて読むのかわからないけどM・I・A・T・H」そんな会話をした記憶が漠然とあるのだが、会話の相手が誰だったのか思い出そうとすると、なぜか心臓がチクチクと痛い。何か嫌な出来事と紐づけられているのだろう。

 「amou」はフランス語のクレオールらしくRが欠けた「amour(愛・恋)」と思われる。そうするとタイトルは日本語で『恋に落ちて』か。

 カリブの青い海辺で太陽の下で出会ったその日の夕方に愛をささやき合って夜には速攻一発やってそうな、そんな恋の夕方あたりの情景が目に浮かぶ柔らかなメロディが耳に心地よいが、サビで「魔人ポイ!」と聞こえてしまい、ああポイとヤリ捨てられる歌なのかと。歌詞何いってんのかわからないおかげで小さな物語が脳内生成されるとてもセクシーな一曲である。

 残念ながら自分よりも音楽の好みが雑食な男に惚れたことも付き合ったこともないので、私の心臓のチクチクは「惚れた男に教えてもらった歌」なーんて色っぽいものではあり得ず。せいぜい私が酔ってトンカツをぶつけて疎遠になった飲み仲間からこの曲を教えてもらったとか、まあ、そんなとこだろう。あ、なんだかトンカツの気がしてきた。