「裏切りの街」で生きる人々

3/20 髙木さん主演舞台「裏切りの街」を観劇いたしました。
なんだか色々文字に残したくなったので、記録を残します。


ダメ人間と裕ちゃんと智子

人間、誰でもダメなところはあると思うんです。
だけど、"ダメ"が許容できる範囲ってきっとあって、許容できなくなった所から、"クズ"であったり、もっと行くと"気持ち悪い"が出てくる。

裏切りの街、観劇した皆さんが"クズすぎる""気持ち悪い"と口を揃えて仰っているけれど、きっとそう感じたタイミングって皆違うんだろうなぁと。

私は1幕はまだ許容できました。
智子は元々プライドが高くて、自分はもっとできると思ってる節があるけど、旦那といると何者にもなれなくて、それが息苦しくて。
裕ちゃんは……まぁヒモの時点でどうかと思うけど、色んなことがその場しのぎなのもどうかと思うけど(ダメじゃん)里美ちゃんの生真面目さや正論に、なんだか疲れる部分があって。
共感、はできないけど、どこか似た空気を感じる相手に逃げたんだろうなぁと理解はできた。

でも、二幕が始まった瞬間、私の許容できる範囲を越えた。

裕ちゃん、ヒモだしだらしないし、なんかもう色々どうしよもないけど、智子への少しの気遣いみたいなものは感じられていたのに、二幕最初の電話では、智子に有無を言わせない高圧的な雰囲気があった上に、不倫相手の旦那の稼ぎでやることやろうとしてるし。
お前、彼女の金で遊ぶのでもぱちキレもんなのに、そんなことってあるか!?
そして、裕ちゃん、まだまだ幻滅させてくれる。(いや元々ダメダメだけど)
智子の妊娠で心配したのは自分のこと、おろすと聞けば「大したことなかったってことっすよね」
……いやいやいや!!大したこと無いわけなくね!?
本当に大したことなかったら、智子だってお前に言わねぇと思うんだが!?

裕ちゃんって、その日暮らし、その場しのぎなんですよね。
全部。
その時よければいい。
その場がなんとかなればいい。

だから、里美に「俺変わるから!」と力強く言うけど、結局何も変わらないし、智子から妊娠を聞いて謝りはするけど、責任の取り方を考えてはいないし。

……でも、人間ってその場しのぎのこと、するよね。
自分が傷付きたくないから、失敗したくないから。
だからかな、裕ちゃんが気持ち悪く見えるのは。
自分のダメなところを凝縮して煮詰めて濃くして、最悪の状態で見せ付けられてるみたいで。

智子の方も、旦那に外堀埋められて、子供を産まなければいけなくなったけど、それでも裕ちゃんに連絡して、会おうとして、なに考えてんだ?と思ったけど、それってやっぱり智子にとっての逃げ場所ってことで。
例えば、私はオタクだから、嫌なことがあったら、アイドルに逃げるけど、智子にとっては裕ちゃんがそういう逃げ場なんだろうなと思ったら、私だってそういう可能性を持ってるのかな、とか考えてしまって、やっぱり自分の底にあるものを見せ付けられてるみたいだった。


旦那

ところで、私個人としては、一幕から裕ちゃんより旦那が本当に無理でした。
男尊女卑の感覚が見えるというか、何をするにもやってやる、やらせてやってる、と思ってる感じが否めないというか。
挙げ句、自分の子供じゃないと分かっているけどちゃんと育てるよ、と寛大なフリをして自分は智子より上の立場だと案に誇示して、けれど自分はガチガチに人まで仕込んで不倫して。(あれ何でも屋とかそういう職業の人なの?)
気持ち悪いを通り越した何かが旦那にはあった。


里美ちゃん

あんただけだよ良心は…
と思ってたら、里美ちゃんお前もか…。
ありのままの裕ちゃんが本当に大好きで、だからお金を渡すのも別に嫌じゃないし、自分がお洒落できないことも我慢できる。
でも、裕ちゃんは自分と同じ熱量でないことをどこかで分かっているから、伸二にフラッと行ってしまったのかな。
里美ちゃん、多分真面目なんだけど、自分でどうにかしようとしちゃって、周りの言うことを聞かないタイプなんじゃないかな。
多分、裕ちゃんはやめとけって言ってくれた友達もいたはずなのに、聞く耳持たなくて離れられちゃったりしたのかなぁと勘ぐったりもして。
さっさと裕ちゃんと別れて、伸二とも関係切って、ついでにもっと環境の良い職場に変えて、穏やかに幸せに生きてほしい。
(にしても伸二も定職就いてないっぽいし、里美ちゃんダメ男ホイホイすぎる)


あれやこれや

レポも初日の取材記事もそのインパクトがあまりにも強かったけど、別にそれが際立っているわけではなくて、あくまでも今が楽しければいい、逃げ場所であることの延長線上にある行動の一つで、即物的だけど意味は無いものだった。

……なんて分かったようなこと言いよりますが。
ジャニーズのオタクやってて、推しのガチガチの濡れ場を生で見ることになるとは思ってなかったわ。
あれR指定かけてなくて本当に良かったの?
推しがえV見て一人でやる姿を見たことがありますか?私はある。
推しが(ほぼ)全裸で女抱きまくる姿を見たことがありますか?私はある。
そもそも、普段シュッとしていてイケボで優しい王子様のような推しに、ものすごい猫背で気持ち悪い喋り方をされたことがありますか?私はある!!

………目に見えるくらい痩せてた(9kg落としたそうですね)のに、全然腹筋割れてなくて、自堕落な生活も見えました。あんな体重の落とし方もあるんですね。
(一旦落ち着こうか)

気持ち悪さとか感情の面は置いておいて、二幕の件のシーンは好きでしたね。
「うわーーーーやだーーーーーっ!!」と智子の膝に顔を埋めて叫ぶところ……ギュンとなってしまった。
なんだあれ、そりゃ髪の毛わしゃわしゃしたくなるよな。
なんか母性本能ってやつくすぐられたよな。
可愛いなって思っちゃったよな。
分かる、分かるよ智子。
(髙木推し人格が現れた瞬間)
そこからまぁ、めちゃめちゃ抱くわけだが()キスからそこまでが、リズムがあって、なんだか舞っているようで、あくまで動作だけを見ると綺麗だった。

あとは最初のキスかな。
「あの…ごめんなさいごめんなさい」と言って猫背状態のまま近付くのは本当にめちゃめちゃにキモかったけど(キモかったけど)その強引さとか、仕方とかは普通に純粋なラブストーリーのようで好きだった。
(てかあのキスって髙木さん本人のスキルだよな…?しんど)

この仕事を持っていった事務所も、受けた髙木さんも本当に凄いよ……。
元々セクシー担当でアダルトなこともまぁ似合う人だけど、やっぱりアイドルだし、ましてJUMPは中でもキラキラわちゃわちゃしているグループで、一歩間違ったらイメージを壊しかねないチャレンジで。
でも、舞台に立っていたのは"菅原祐一"であって、間違っても髙木雄也ではなかった。
イメージが壊れるなんてとんでもない。だって別人だったから。
そう思わせたのは、髙木さんの努力あってのこと、なんだよなぁ。


ラストシーン

4ヶ月会わなかったわけだけど、結局4か月目に会っちゃってるし、しかも智子お腹大きいし。
そんな状態なのに、雪の中で平気で話し込んで、裕ちゃんは智子を心配する素振りもないし、智子も別に気にしてないし、「ダメ人間だから」で笑って片付けて。
あぁ、この二人はずっとこのまま、その日暮らしを続けていってしまうんだろうなぁ。
もうちょっと一緒にいましょうか、はその合図。またループ。
一緒にいてもどうにもならないとお互い言ってるから、分かってはいるけど、逃げ場を手放したくない、そんな感じなんじゃないかと私は思った。

なんとも言えないラスト、でした。


演劇でありながらリアルであるということ

劇場に入る前までは何とも思っていなかったのに、劇場を出て街を歩くと、行き交う人達がみんな何かを隠して生きているんじゃないかと勘ぐってしまうほど、強烈な作品だった。
それは、役者の皆さんの"こういう人いるな"と納得させる説得力の演技と共に、作品の舞台があまりにも身近すぎるという所にあるのだと思う。


電車のアナウンスと改札の音(帰りにしんどくなった)
銀だこ(帰りにテイクアウトの袋持ってる人がいてしんどくなった)
お昼の番組(ヒルナンデス見てるんです、のセリフあったね。確かにあったけど)
相棒(私昔から見てるんだけど、あのOPテーマがきっかけで智子に電話かけるのやめてくれないか?今週最終回なのに変に思い出しちゃうじゃん…)
芸人さん
ファストファッション


すぐ隣で繰り広げられていても何もおかしくない話が舞台の上でされていく。
板の上とこちら側、どこか境界が曖昧な雰囲気が、怖くもあった。


おわりに
何の学びもない、ただただ後味の悪さが残る作品。
けれど、その後味の悪さから、感じ取るものも多かったような気がします。
"裏切りの街"
もしかしたら街には色んな裏切りで溢れているのかもしれませんね…。

余談
呉城さんの智子は、凄くおどおどして控え目に見えるのに、なぜか色気が溢れている感じがなんだかとっても魅力的(いや、なんていうか、全身から人妻の持つエロさが滲み出ちゃってて、ありゃ裕ちゃんたまんねぇよな)だったのですが、奥貫さんの智子も見てみたいなぁと思った。
そして呉城さんの裕子が見てみたい。
智子を生きた呉城さんが裕子として智子にどんな風に声をかけるのか、気になります。


この仕事を完遂した先で、またキラキラした王子様然とした"雄ちゃん"に会えることを楽しみにしています。
そして、また髙木さんが新たな舞台に立つ日を夢見て。
(観劇したメンバーの感想が聞きたいですね)


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