ミックスという作業のあれこれ
そもそもレコーディングエンジニアって何してんだって話ですよね。一般的認知度は相当低いです。人から仕事何してる人なの?って聞かれて、「レコーディングエンジニアです。」って答えると、大体「え?何それ?」みたいな事が返ってきます。
そこで、「CD作ってる人で、編集とか録音とかしたりする人です。」と答えてます。なんかうまい説明ないかな。
まあ、コソコソと地道に作業してる人なんです。
ざっくり言うと、レコーディングってまだ分かり易いですよね。録音って誰でもした事あるだろうし。ところが、ミックスってなると何をやってるのかさっぱり分からないってところなんでしょうか。
たぶん、失礼ながらおおよその人はこう考えてると思うんです。
録音→完成
ほんとうにこうだったら分かり易くていいですね。本音です。
ところがなぜかそうはいかないのが不思議な所です。レコーディングされた音って生演奏に比べてすごくしょぼいんですよ。この辺りは録音という技術力がまだまだ劣ってるという事なのかもしれません。
レコーディングという行程で良い音を録るというのもとても重要なんですが、ミックスという音を混ぜていき編集していく作業というのもとても大事です。ミックスで何が変わるのかをバンドを例にしておおまかに書いていこうと思います。
バンドの演奏力が大きく変わる。
ミックスはこれに尽きます。むしろエンジニアの良し悪しはこれで決まるといっても過言じゃないんでしょうか。
もちろん、演奏者が良いアレンジでうまい演奏をすればほとんど何もしなくてもそれなりに聞こえます。ただ、このうまいってレベルが超一流のトッププロにしか当てはまりません。
技術のあるエンジニアというのはここで大きく差が出ると僕は思ってます。技術のあるエンジニアは幅が広いです。要は、演奏力がそれほど無いバンドでもエンジニアの技術でそれなりの作品に仕上げる事が出来るという事です。
技術が無いと、演奏力が無いバンドだとそれがそのまま演奏力のないままで作品になります。その逆もあって、演奏力があるのに演奏力のない作品になってしまう事だってあり得ます。
ちょっと毒を吐きますが、インディーなどのCDを聞いて演奏が下手だなー、なんてものもありますが、それはエンジニアの技術が無いせいです。
でもこれ、リスナーが聞いてそんな事は関係ないんですよね。エンジニアのミックス技術によってバンドの演奏力は大きく変わってきますが、それらは全部バンドの責任になります。リスナーとしてはエンジニアのせいとはなりません。
逆に言えばエンジニアは責任重大です。エンジニアのミックス作業によってそんな評価のされ方が変わってくるんですから。
なので、僕の場合は可能な限り、演奏のミスがあれば編集して直して、演奏がうまく聞こえるように心掛けてます。演奏を編集で直すのを嫌がる方も多くいらっしゃると思いますが、直さないと僕のせいじゃなくてバンドのせいになるんですから直した方が良いと僕は考えてます。
バンドの世界観、完成度が大きく変わる
録音された段階では世界観や完成度はたぶん30%くらいだと思っています。そこからどれだけ100%に近づけていけるかというのがミックスでの作業です。
世界観を作るのはほんと難しいです。僕の考えてる世界観とバンドの考えてる世界観が違うなんて事もよくあります。メンバー同士が違うなんて事もよくあります。それらをすり合わせていく作業がとても大変です。たまたまみんな一致しているとラッキーくらいなもんです。
ここはまだまだ僕が未熟な部分でもあるんですが、何も言わなくても音だけで世界観を感じ取って、完璧に表現出来るという形がエンジニアとして一番の理想です。
これもエンジニアが変わるだけで大きく違ってきます。録音された日時やレコーディングスタジオは全く同じなのに、ミックスするエンジニアが変わっただけで「バンドとして完成度が大きく成長した!!」なんて事が書かれているのも見た事があります。
まあ難しいですね。
しかし、所詮エンジニアです。
ここまで偉そうにぐだぐだ言ってきましたが、エンジニアは凄い!なんて事を言いたい訳じゃないんです。
録音された段階では世界観や完成度はたぶん30%くらいと言いましたが、0%から30%に持っていくのと、30%から100%に持っていくのでは大きく労力が違ってきます。圧倒的に0%から30%に持っていく方が大変です。
0から生み出す力を持っているのがアーティストさんの凄いところです。エンジニアには所詮それは無理です。エンジニアというものはアーティストが作り出したものに乗っかってやってるだけに過ぎません。
なので、才能という事だけを考えるとアーティストよりエンジニアの方が少なくて済みます。
というのがミックスでのおおまかな作業です。世に良い作品を出す為にこれからも頑張ります。
これも投げ銭にしておこう(笑)
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