【GS・ロードシート】他の人に自分の命を預けることはできますか?

1.ロードシートとは?

飛行機が出発するには、たくさんの必要書類を搭載する必要があります。現在自分は、オペレーションスタッフとして勤務しているのですが、最終的には「ロードシート」という書類を出すことが仕事です。

ロードシート」とは、その運航する飛行機に関する情報がひとつにまとめられています。行き先などはもちろんのこと、搭乗者人数(トータル人数・男女数・乳児と小児の数)・搭載燃料・飛行機のそれぞれのポジションの人数と荷物や貨物の重量・それから飛行機のトリムと呼ばれる搭載バランスが一枚に掲載されています。一便一便に必ず搭載されていて、グランドスタッフが作成したものに最終的にキャプテンがサインを貰わなければ飛行機は出発できません。

ロードシートを発行するに当たっては、我々はものすごく神経を遣っています。はっきり言って命を懸けて仕事をしているといっても間違いありません。例えば、燃料を入力する際、桁を一桁間違えたとします。そうすると、必然的に先ほど書いた「飛行機のトリム」の数値が狂ってきてしまうのです。トリムが狂うということは、飛行機が墜落する可能性が大いにあるということなんです。絶対に出力した数値が間違っていてはならないのです。我々が扱っている飛行機には、お客様の命がかかっているいるのはもちろん、同じくらい大切な荷物や貨物が載っています。その荷物や貨物の重量のことを私たちは「Dead load」と呼んでいますが、命が無いだけで、誰かにとって大切なものであることは間違いないのです。だかた、自分がオペレーションスタッフとして勤務しているときは、Dead loadもお客様の命と同じと考えて仕事をしています。

2.航空業界は、プロの集まりである


そしてなにより、自分の作ったロードシートに100パーセントの信頼を寄せてくれる、フィリピンのエアラインのパイロット達に本当に感謝しています。だって、その数値が間違っていたら、自分の命も無くなる可能性があるんです。最後の乗客が搭乗すると、我々はコクピットにキャプテンのところに、このロードシートを持っていきます。乗客の最終的な人数を確認し、搭載される燃料、全体・飛行機全体とそれぞれのパートの重量を再度機長・副操縦士・そして私の三人で最終確認をします。間違いがなければ、私の作ったロードシートに100パーセントの信頼を寄せて出発してくれます。

いままで沢山の便を担当してきましたが、とても忘れられない出来事があります。このロードシートを作成するときは、私一人で作るのではなく、このエアラインの運航本部である、マニラのエージェントスタッフと一緒に作成しています。ところが、たまたまその日のマニラのエージェントが入力数値を間違えてしまいました。その時は実は出発時間ぎりぎりで、私も少し焦っていましたが、向こうの入力ミスに気づき、訂正を依頼しました。ところがこのせいで、出発時間から遅れてしまい少し落ち込んでいました。何とか正しい数値の入ったロードシートをキャプテンのところに持って行き、事情を話し、平謝りをしたところ、意外な言葉を言ってくださいました。

Understood.But did you notice the mistake on the loadsheet,right? It's not your fault!!Furthermore,thank you for delivering the correct one. I trust you!!

とキャプテンは私に笑顔で言ってくれました。本当にうれしかったし、信頼をしてくれ、自分の仕事のことを理解してくれる人がいることが本当にうれしかったです。また、飛行機が無事に出発した後、考えました。自分は将来的に、誰かの作ったロードシートを信頼して飛べるのだろうか。正直その答えはまだ出ていませんが、自分と同じように命をかけて仕事をしている人と分かれば、絶対に信頼をして飛べると思います。

3.チームワークとは、『1人ひとりが独力で任務を完結することである』

飛行機に命をかけているのは、何もパイロット・キャビンアテンダントだけではありません。我々グランドもそう、命がけでメンテナンスをしてくれる整備士、決まった燃料を搭載する燃料屋さん、航路を守るランプコントロールや管制官。みんなそれぞれのポジションで、それそれのやるべきことをこなして初めて飛行機は飛べるのです。

以前、私はホームセンターに勤めていました。そこで、小売業の語録集があるのですが、そこに書いてあったチームワークとは、何も助け合うことではないんです。もちろん、お互いにピンチの時は助け合います。でも前提は1人1人が独力でこなすことなんです。1人1人がプロとして仕事をこなす事。それがチームワークなんです。だからこそ、自分もプロとして仕事をするしかない。

私もそうですが、お客様が何も考えず、安全に飛行機を利用して貰える日がまた来ることを、心から待ち望んでいます。早くまたキャプテンたちに会いたいな。1日でも早く再開しますように。

SHOTA

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