窓を閉めた


机に向かいやらなきゃいけないことを
やらなきゃいけないからやっていたら
換気のため、と数センチ空けていた窓から
5月のにおいがした


別に小説になるような
映画化できるような
甘酸っぱい青春を過ごしたわけでは全くないし
そもそもそんな奴いる?って話だし

それでも自分が過ごした時間は確実にちゃんとあって
心の中は写真館みたいで
一瞬を切り取ったような写真がいくつも飾られていて
題名があるものからないものもある

なんでもない一瞬も
なんとなく美しくて
知らん画家の知らん絵みたいに
理由や意味はないけどなんとなく美しい
そんな一瞬の数々は生きた分だけ溜まっていく


そんな飾られた部屋の鍵は
季節のにおいが握っている

開けないで
勝手に開けないで
その部屋は勝手に開けないで


って今日も思いながら
窓を閉めた

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