見出し画像

「SLOW MOVE」1掴んだ砂利を記憶する

星野です。
なんとなくなのですが、新しい連載を始めてみることにしました。

先月から始まったSHOP編集の新しい企画「SLOW MOVE」に合わせてSLOW MOVE的な?SLOW MOVEのように?SLOWでMOVE!なかんじで、とにかく内容は決めてないのですが、SLOW MOVEの会期中、7月位まで時々書いていこうかなと思います。
大体想像はついているのですが、なんとなく適当に書き始めてどうにかSLOW MOVE的なものに着地できないかと途中からジタバタし始めるのだと思います。

画像1


SLOW MOVEについて話し始めたのは年明けのこと。
わたしたちの居間のようなスペースには炬燵が置かれていて、そこで温まりながらどこかからやってきたメロンを食べ、話をした。

画像2

どういう順序で話が進んだのか忘れてしまったけれど、本という形のものを作ってみたいということと、それはわたしたちのここ一年くらいの気分を反映させたものがいいんじゃないか、ということがぼんやり浮かんできた。
ここ一年のわたしたちの気分、というのはコロナによって大きかったり小さかったりいろいろな影響を受けていて、そういう影響を自分の日常でどう受け取ってどう付き合っていくか、(まだ何もまとまった答えは出ていないけど、)を、一度形にしてみることにしたのがSLOW MOVEの始まりだったと思う。

いくつかタイトルの案が出たけどSLOW MOVEは一番リズムが良かった。

画像3

ぷいぷい?

ここ数年記憶力が悪くなっている気がする。
年明けのこの話し合いのこともいまいち詳細が思い出せない。
昔は人が言ったことも自分が言ったことも大体全部覚えていて、人が、この間と違うことを言ってる、とかまた同じこと言ってる、とかすぐに気がついたけど最近はその辺がすごくぼんやり。どうしてそうなったかよくわからない。
でももしかしたら昔もそんなに記憶力が良かったわけではなくて、自分は絶対覚えてるし自分は絶対間違えないという妙な自信がそう思わせていただけなのかもしれない。最近はちょっと、そう考えてみたりもする。

何度も思い出すことは忘れないけど、思い出すたびに自分の都合のいいように景色をずらして定着させてしまっているような気がして不安になる。
部室の前の小さな段差に座って、足元の砂利を手で触るその目線と感触がなぜかわたしが高校時代を思い出すときに真っ先に浮かぶイメージだけど、これもどんどん何かずれていっている気がする。
先月、誕生日があって何人かの友達が連絡をくれた。
その中には小さな段差に一緒に座っていた友達もいたけど、向こうはまた違った砂利の感触を記憶しているかもしれない。そもそも砂利はその人にとって覚えておくほどのイメージじゃないかも?

連絡をもらった時、その友達のTwitterのことをふと思い出して、今もやってる気がして気になってそっと覗いたら、やはり今もやっていた。
敬愛する友人の誕生日と書かれていたから、あ、友人って多分わたしのことか?と思ったけど、敬愛の意味がぱっと掴めず検索して理解して、なんか妙な気分になって、あ、と思って見るのをやめた。
言葉が好きな人だから、敬愛という言葉をささっと持ってこれるのかもしれないけど、わたしは敬愛という言葉に馴染みがなくて、その特別感に妙にドキドキした。
わたしはそういう言葉を使ってもらえる自分なのか、自信がない気がしたけど、それは向こうが思うこと。
きっと友達はわたしが忘れたわたしの何かも記憶してくれているんだろう、と、そんな風に思った。

そういうことがあった。
そういうことも覚えておきたいけど、とにかく自信がない。
この一年のいろいろなことも覚えておきたいけど、やっぱりあまり自信がない。
いろんな人がいろんな形でこの一年のことを残そうとしているけれど、わたしがどう思ったかはやはり自分で残しておくしかないから、何か形にしたり文章を書いたり、そういうことでなんとか保存しておきたい。
他力本願だけど、人に話しておいたり、読んでもらっておいたり、それをその人が保存してくれることにも勝手にうっすら期待したりしたい。


星野

SHOP編集のラジオや活動にいかされます!