エヴァと設定変更

新劇場版エヴァでは旧劇からいくつかの設定変更が加えられていますが,これらは行き当たりばったりではなく,合理的な計算の上になされているのではないでしょうか?この記事では2つのポイントからエヴァの設定変更を考察します.

シトからヒトへ

 アニメ版では17番目の最後の使徒ととして登場した渚カヲルも設定変更の流れを受けています.Qの終盤ターミナルドグマでの戦闘シーンにおいて,カヲルは「まさか第1使徒の僕が、13番目の使徒に堕とされるとは・・」と発言します.視聴者はシンジくんと一緒に「カヲル君が何を言ってるのか分からないよ」となってしまいますが,ここに設定の合理化があります.

 旧劇では渚カヲルはアダムの魂と人間の遺伝子から作られた第17の使徒でした.しかし,前述のカヲル発言を見ると新劇の渚カヲルは第一の使徒だったのに,カヲル自身も想定しないイレギュラーな事態が生じて十三番目の使徒になってしまったようです.なぜ最初から第13の使徒として登場してはいけなかったのでしょうか?

 この疑問に答えるために,改めて旧劇を復習しましょう.渚カヲルはセカンドインパクト時に第一使徒アダムの魂と人間の遺伝子から作られた第17の使徒でした.既にこれだけで矛盾しているのが分かりますか?アダムの魂と人間の遺伝子から新しい使徒が生まれるのであれば,リリスの魂と碇ユイの肉体から生まれた綾波レイはなぜ使徒ではないのでしょうか?

 渚カヲルは使徒なのに,綾波レイは人.この矛盾を解決するには渚カヲルは最初は人間として登場し,イレギュラーな事態によって新たな使徒となる必要があったのです.


アダムとリリス

 旧劇を知っていた人が序を見て驚くのは,ターミナルドグマに眠るリリスが最初からリリスと呼ばれていることではないでしょうか?旧劇では序盤はターミナルドグマにはアダムが眠っていると語られ,物語の終盤で実はリリスだった!と明かされるのですが,これも疑問符のつく展開です.そもそもなぜアダムをリリスと偽らなければならなかったのでしょう?

 ネルフ職員は「アダムと使徒が接触するとサードインパクトが起る」と信じていましたが,わざわざリリスをアダムと偽る必要がないのです.ネルフ職員に「リリスと使徒が接触するとサードインパクトが起こる」と伝えても同じように働いてくれたでしょう.しかも,綾波レイがリリスの魂を持っていることを赤木リツコは知りうる立場にいましたからリリスをアダムと偽ること事態が困難だったはずです.

 これは単にアニメ製作途中にアダムからリリスへ設定を変項したことの弊害でしかなかったのです.新劇場版作成中に誰かが最初からリリスをアダムと偽る意味がないことに気づいたのでしょう.そもかわり,新劇ではアダムがアダムスに変わり新たな謎が生まれています.

新たなエヴァへ

 行き当たりばったりとか,監督にも話がわかってないとか批判されるエヴァですが,少なくとも新劇では旧劇の破綻した設定が合理的に修正されているようです.しかしただ単に矛盾した設定を簡略化して解消するだけでなく,その上で新たな深みが付け足されてもいます.

 第一使徒だったのに第13使徒になってしまった渚カヲルや,謎の深まるアダムスはただ単に捻れた設定を消すだけでは満足せず,新たな展開をもたらそうと言う努力にも見えます.そしてこの努力は行き当たりばったりでなく,旧劇の捻れを合理的に解消できる頭脳のもとに導かれたものですから,益々シンエヴァンゲリオンへの期待も高まると言うものです.

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