小児と栄養(経腸栄養剤・流動食・PEG)
経腸栄養剤
咀嚼を要しない経腸栄養用の製剤
咀嚼とは?
・摂取した食物を歯でかみ、粉砕すること。
・単に嚥下しやすくするのみでなく、口腔内を刺激することにより各臓器の消化液の分泌を促進し、口腔内の自浄を行い、また、食物と共に口腔内に侵入した異物の除去などの役割がある。
経腸栄養剤の種類
〇天然濃厚流動剤(食品)
・天然食品をそのまま材料としている
・各栄養成分が天然に近い
・窒素源はタンパク質
・咀嚼の必要はない
・浸透圧が高い(400~500mOsm/L)
血漿浸透圧:約300mOsm/L
・粘度が高い(経管栄養チューブの閉塞)
〇人口濃厚流動剤
1、半消化態栄養剤(低残渣食(食品、薬剤))
・窒素源:蛋白精製物(カゼイン、乳蛋白、大豆蛋白など)の加工、ペプチド、アミノ酸
・糖質:デキストリン、単糖類(グルコース)、2糖類など
・脂質:植物油を中心とした長鎖脂肪酸(LCT)、中鎖脂肪酸(MCT)
・浸透圧は比較的低い(役350mOsm/L)
・食物繊維を含むものもある
・味が良い
・ある程度の消化吸収能は必要
例)エンシュアリキッド、ラコール、アミノレバン、ハーモニック
2、消化態栄養剤
ペプチド栄養剤(食品、薬剤)
・窒素源:アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド
・糖質:デキストリン、2糖類
・脂肪:様々
・消化を必要としない
・浸透圧は約500mOsm/L
<利点>
〇遊離アミノ酸より浸透圧が低い(浸透圧性下痢が少ない)
〇遊離アミノ酸より吸収が速い
〇遊離アミノ酸より吸収能は比較的保たれる
例)ツインライン、エンテミール、ペプチーノ
成分栄養剤
・窒素源:合成アミノ酸(抗原性がない)
・糖質:デキストリン、2糖類
・脂質:含有量を抑えている
・浸透圧が高い(600~900mOsm/L)
・消化能が不要
・味に難あり
例)エレンタール、エレンタールP、ヘパンED
病態別経腸栄養剤
〇肝機能障害
・芳香族アミノ酸は肝臓で代謝されるので、肝機能障害時はその割合を低くする(芳香族アミノ酸:フェニルアラニン、チロシン)
・分岐鎖アミノ酸から糖新生を行う(バリン、ロイシン、イソロイシン)
『Fischer比』
分岐鎖アミノ酸(BCAA)/芳香族アミノ酸(AAA):モル比
通常の食事は約3.0
例)アミノレバンEN(Fischer比38.4)
ヘパンED(Fischer比61.0)
ヘパスⅡ(Fischer比18.0)
〇腎機能障害
・水分、尿素質素の排泄障害、電解質の調節障害のため、高エネルギー、低たんぱく、電解質の調節、が主体となる
・Non-protein calorie/N比(NPC/N比:非タンパクカロリー/窒素比)を高めにする=300以上(多くのエネルギー必要)
例)リーナレンLP(NPC/N比485)
リーナレンMP(NPC/N比151)
レナウェルA(NPC/N比1637)
レナウェル3(NPC/N比392)
〇糖尿病用経腸栄養剤
・総エネルギー量に占める糖質の割合が低く、脂質含有量の比率が高い
・一価不飽和脂肪酸の比率が高い
・食物繊維の強化
・糖質にタピオカデキストリンを使用(デキストリンより吸収が遅く血糖値上昇を抑制)
・パラチノース、分岐鎖デキストリンを含有(血糖値上昇が緩やか)
例)インスロー
グルセルナ-EX
タピオンα
リソース・グルコパル
〇呼吸障害(COPD)用経腸栄養剤
・COPDは血中CO2濃度が上昇する
・努力性呼吸⇒呼吸筋の消費熱量が増加する
・高たんぱく、高エネルギー、高脂肪食が原則
・呼吸商の低い栄養素をとる
『呼吸商』
代謝される時に単位量あたりに消費されるO2に対する産生されるCO2の比
炭水化物:1.0
タンパク質:0.8~0.9
脂肪:0.7
例)プルモケア-EX
ライフロン-QL
オキシーパ
〇免疫増強経腸栄養剤
・Immunonutrients(n-3系多価不飽和脂肪酸、L-アルギニン、L-グルタミン、核酸、ビタミンA,C,E、亜鉛、タウリン、短鎖脂肪酸、成長ホルモン、IGF-1、オリゴ糖、食物繊維など)を含有する
※Immunonutrients(免疫栄養素):必要量以上を摂取することで本来の働きを超えた免疫調整作用を有する栄養素
・術前5~10日間投与が有効
・重症敗血症患者のアルギニン使用は控える
敗血症の場合
・アルギニン投与⇒NO(一酸化窒素)産生
・NOの血管拡張作用⇒循環虚脱
・炎症性サイトカインによって産生される活性酸素とNOの反応により過剰産生された傷害性の強い過酸化硝酸塩に起因した臓器障害
例)アノム
イムンα
インパクト
サンエットGP
〇創傷治癒促進用経腸栄養剤
・L-アルギニン(蛋白合成促進、コラーゲン合成促進、免疫賦活作用)を多く含有
・亜鉛、銅などのミネラルやビオチンを多く含む
・HMB【β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸】(蛋白合成促進、体蛋白分解抑制、抗炎症作用)を多く含む
・L-グルタミン(蛋白合成促進、コラーゲン合成促進、免疫賦活作用、消化管粘膜維持)を多く含有
例)アイソカル・プラスEX
アバンド
PEG(経皮的内視鏡的胃瘻造設)
〇小児における胃瘻造設術の適応:栄養ルート確保
1、自発的摂取不能・困難
⇒重症心身障がい児など
2、食道通過障害
⇒先天性食道閉鎖症、食道狭窄症など
3、頭・頚部腫瘤/外傷による摂食不能・困難
⇒頚部リンパ腫、血管腫など
4、摂食不十分(夜間注入)
⇒短腸症候群など
〇小児における胃瘻造設術の適応:胃内減圧ルート確保
1、胃・食道逆流症
2、腸管機能不全
3、消化管術後
4、呑気症、胃軸捻転症など
〇胃瘻造設後の合併症
1、皮膚トラブル(過剰肉芽)
原因:胃瘻ボタンによる過度の刺激
治療:第一選択:ステロイド軟膏塗布
第二選択:切除(硝酸銀焼灼、切除)
ボタン刺激の予防
2、皮膚トラブル(発赤、びらん)
原因:消化液の漏れ
胃瘻ボタンによる機械的刺激
真菌感染など
3、皮膚トラブル(漏れ)
原因:胃内圧上昇
胃の蠕動運動の低下
投与速度が速い
瘻孔開大
低栄養
過度の圧迫(皮膚とボタンの間で1cm以上)
チューブのずれ
〇カテーテルのトラブル
・劣化(1~2か月に1度は交換する)
在宅経管栄養、育成医療の適応
・閉塞(交換)
・自己抜去(一時的に再挿入し、速やかに交換)
〇消化管のトラブル(下痢)
・栄養剤の投与速度
・感染
・抗生剤
・病態によるもの(脂肪、乳糖など)
家族への情報提供
〇胃瘻ボタン管理
・手洗い(感染予防)
・胃瘻周囲の観察(発赤、腫れ、熱、化膿、胃内容物の漏れがないか)
・瘻孔周囲の洗浄
・ボタン内腔の洗浄(白湯でフラッシング)
〇定期的なバルーン充填液量の点検
・週に1回程度の確認
・液量が少ないか無い場合は医師に連絡
〇ボタンによる皮膚の圧迫状態の確認
・皮膚が圧迫されるので、1日に1回はボタンを回転させる
〇ボタンおよび接続チューブ閉塞の予防
・栄養剤投与のたびに、投与前後に白湯でフラッシュ
・長時間持続投与の場合は4~6時間ごとにフラッシュ
〇チューブがつまった時
・詰まっている部位を確認
・接続をはずし、接続チューブをフラッシュ
・ボタンが詰まってる場合は医師へ連絡
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