未承認薬、適応外薬に関する情報検索と評価~薬用量の考え方~
小児薬物療法の現状
・小児用量が記載されている医薬品は少ない
・小児領域で必要とされる医薬品が少ないのだろうか?
・小児薬物療法において、必要とされている全ての医薬品に小児用量が記載されているだろうか?
なぜ希少になるのか
・成人に比べ、小児を対象とした治験は実施が困難
・小児は薬用量が少なく、企業にとっては採算性が低い
↓↓
・小児に対する開発に対し、企業は消極的
・小児を対象とした開発が実施されない
・添付文書上は「小児等を対象とした臨床試験は実施していない」等
適切な小児薬物療法のためには?
きちんとした情報収集、評価が必要
〇適切な用法、用量
〇安全性
〇有効性
情報検索、評価のポイント
・適切な評価
〇信頼性が担保されていること
〇最新の情報
・適切な評価
〇情報の限界を把握
〇現在の検討事項に則した回答であること
情報検索
情報の種類
・教科書、成書
・総説
・原著論文
・症例報告
・ガイドライン、ガイダンス、指針
原著論文とは(日本環境感染学会投稿規定より)
原著:独創性に富む論文で、明確かつ十分な新知見を認める論文
知報:独創性に富む論文で、明確な新知見を認める論文であるが、情報が限定的または少ない論文
報告:疫学調査、アンケート調査、抗菌薬感受性等に関する報告で、編集委員会が掲載に値すると評価した論文
症例報告:稀な症例や治療法に関する内容で、編集委員会が掲載に値すると評価した論文
情報検索の方法
・適切なデータベースの選択
・適切な検索用語の設定
・適切な検索範囲の設定
情報評価
得られた情報の質は?
・査読されているか、私見か?
・適切なデザインの下で検討された結果か?
・偏りは?
・限界は?
ガイドラインの評価
・エビデンスに基づいて作成されているか
・エビデンスは文献としてきちんと引用されているか
・推奨の根拠とされているエビデンスは最新の情報であるか
・海外のガイドラインの場合、日本への外挿は可能か
ガイドラインは絶対か
・ガイドラインは、根拠となるエビデンスレベルによって、推奨度を変更
・ガイドラインは科学の進歩と共に変化
・エビデンスを収集、評価し、ガイドラインを作成するためには、一定の時間が必要
・ガイドライン策定後、新たなエビデンスが蓄積された場合、ガイドラインの記載内容が古くなることもある
Conflict of Interest
外部との経済的な利害関係等によって、公的研究で必要とされる構成かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態のこと。公正かつ適正な判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに継続する等の状態。
薬用量に関する情報検索、評価
小児薬用量の評価
添付文書における小児の記載
⇒「小児等を対象とした臨床試験は実施していない」
・多くの医薬品において、成人向け開発が先行
(小児に関する情報が得られていない)
・小児を対象とした開発が実施された場合いにおいても、新生児など低年齢層については情報が得られていない場合が多い
(一部の年齢層について、安全性が確立していない)
小児の特殊性
<発育過程にある>
・臓器機能が発育過程(薬物動態の成人との相違)
・第二次性徴
・余命の長さ(より長期の安全性)
成長と薬物動態
・体内相水分量(新生児は成人の約2倍)
・肝機能
・腎機能
・血漿タンパク濃度(低値、結合能も低い)
・血液脳関門 など
⇒発達の過程によって薬物動態が異なる可能性
小児の免疫能
・細胞性免疫
〇T細胞の数、種類は存在。機能が未熟
〇学童期あたりで成熟すると考えられる
・液性免疫
〇B細胞の数、種類は存在。抗原に未暴露
〇新生児が有する抗体は母親由来
・常在細菌叢
年少小児の解剖学的変化
・血液脳関門の発達
中枢移行率の上昇
・耳管が太く、短い
中耳炎を起こしやすい
小児特有の副作用
・クロラムフェニコールによるグレイ症候群
・テトラサイクリンによる歯牙黄染
・キノロン系薬による間接障害
・ピボキシル基による低カルニチン血症、低血糖
添付文書に小児用量が書かれていない時は・・・
・体重換算して用量を決定
・用法は成人と同じ
これで適切だろうか?
⇒「子どもは小さな成人ではない」
海外承認用法、用量を利用できるか
日本と海外の療法で承認されていても、承認された用法用量が異なる医薬品はたくさんある。