【エロ経典】として【性なる経典】として一部でお馴染みの『理趣経』
ロータスラジオで「最澄VS空海編」を作るにあたって、どうしても必要なので読んでみたら、すっごいいいお経だったので紹介する。
(『理趣経』を巡って最澄と空海がどのように決別したか、気になる人は是非ロータスラジオ「最澄の生涯編」をご覧ください)
『理趣経』はいきなりこんなことを言い出す
少しでも仏教のことをかじった人間なら、「えー!?」という感じである。いや、仏教のことを全然知らない人でも「それはまずいっしょ…」というレベルである。
さらに「イッチャッテル」表現が続く。
もう超露骨である…
「性行為を終えて、世界の主になったような気分にひたる…」って、どんな具体的な感想だよって突っ込みたくなる。きっとこの経典の制作者の個人的感想が発露してしまったのであろう。でもまあ…わかんなくはない。
※「一切自在主清淨句是菩薩位」の正木訳だけど、本当に合ってんのかは疑問。他の解釈もあり。
さて、これだけ読むと、たしかに「トンデモ経典」である。
でもその後にすっごくいいことが書いてある。
エロい欲望の肯定から始まった経典は、やがて自然界すべてを肯定していく。「自然界が光り輝き」、そこから「さまざまな歓びを得る」ことを肯定してくれる。なんか同じこと言っているのに、「自然界が輝く」って言われると急に性行為とかも尊く感じられるから不思議。言葉のマジックだろうか。でも「世界ってなんて美しいんだろう、なんて愛おしいんだろう」って思うこともあるから、この表現はすごく直観に合致してる。てか『理趣経』の文句はいちいち具体的に「そうだよね~」っていう事例を挙げてるからすごいなと思う(まあ、訳のせいでもあるけども)。
※正木訳「自然界が光り輝くことは~」の原文は「光明清淨句是菩薩位」だが、これもここまで突っ込んで訳していいのかは謎。でも素敵な解釈だなとは思う。
なんて心強い言葉だろう!
というかこの経典を書いた人は本当にダメダメな自分と向き合って苦しんだんだろうな~というのが感じられる。その上で、「それでもきっと大丈夫!」って場所に行きついたんだろうなという感じがする。背中をどんと押してくれる気がする。
「この世のすベての感情も行為も存在も、あるいは森羅万象も、みな差別なく等しく、光り輝いているという、ダイヤモンドのごとき永遠不滅の境地」
素敵だな~こんな境地に行きたいな~と思わせてくれる。
「一切皆空」とか「色即是空、空即是色」とか「煩悩即菩提」なんかよりも、よっぽど心にくる、ぐっとくる。
というわけで、僕のような煩悩&性欲まみれの生臭坊主には『理趣経』は本当に素敵な経典だなと思いました。元気が出ます。
興味のある人は是非読んでみましょう。
訳は基本的に正木 晃 (著)『読んで深まる、書いて堪能する「般若理趣経」』を引用しましたが、正木訳は結構大胆に突っ込んでいるので、適宜下記の原文(漢文&サンスクリット)を参照しました。
https://www.manpukujitochigi.or.jp/pdf/note_RishuKyou.pdf
最後に僕の大好きな「理趣経・初段」の抜粋(正木訳)を挙げておく。きっと日常の苦しみの中で瞑想にはげむ実践者には大いなるエールになるはず!
#理趣経 #性欲 #煩悩 #最澄 #空海