アルバム「Summer Tears」楽曲解説

アルバムに収録した楽曲について、動画サイト投稿版からの修正箇所や簡単な理論の話をしようと思います。

スカイドロップ (MATCHA)

オープニングを飾れるようアルバムの中ではやや明るい曲調となってはいますが、3拍子であったり2回ほど転調していたりと、よく聞けば特徴的な要素が感じられるかと思います。サビで属調転調を用いるパターンは雰囲気を大きく変えることなく展開に勢いを加えられるため、王道的なポップスでもよく見られます。この曲ではBメロの頭にノンダイアトニックコードのⅣmを置いていて、どちらかと言えばその部分の方に目が行くのではないでしょうか。

sign (GUMI)

バンドサウンド+ピアノストリングスという構成を好んで使用して来ましたが、動画サイト投稿順で見るとこの曲からサンプル音源を多用するようになります。有償サンプルパックのVEC4を購入したことが大きいのですが、これがかなりスグレモノで、エフェクト音からパーカッションまで幅広くカバーされています。例えば、この曲のパーカッションパートは全て生ドラム音源のように聞こえますが、サビ直前のフィルイン部分のみVEC4のループ音源を使用しています。動画サイト投稿版では初音ミクを使用しましたが、GUMIに差し替えて収録しました。

木枯らしプラットホーム (初音ミク)

kawaii future bassを作ってみようと慣れないアレンジに四苦八苦しているうちにいつの間にか普通のテクノポップになっていた曲です。イントロやサビで左右から聞こえるギターの単音リフはその名残りで、より機械的に聞こえるよう強めにタイミング修正をかけてあります。間奏のシンセソロはギターで弾ければよかったのですが実力的に厳しいものがあり実現しなかったため、どなたか弾いてみたをお待ちしています(笑)

蛍 (初音ミク&GUMI)

小編成のしっとりとしたバラードかと思いきや、ラストのサビで突如ボーカル交代&バンドサウンドという構成に変わる展開は好みが別れる所かもしれません。主に前半部分に入るストリングスやパーカッションは全てオーケストラ系の総合音源に収録されているものを使用しました。デフォルトの状態でアンビエント成分が多く含まれているこの手の音源は、大人しい曲調の場合高価な専用音源よりもマッチすることがあって面白いです。サビ以外で聞こえるドラムはループ音源で、オーディオデータをあえて引き伸ばし歪ませることで温かみを加えています。

花束 (GUMI)

ストリングスの打ち込み練習として作った曲です。冒頭のスタッカートを含み動き回るフレーズがより際立つよう、2種類の音源でユニゾンさせています。同じ楽器の同じ音階でも微妙にピッチ感が異なるため、重層的な効果が得られます。
Aメロ部分のパーカッションは異なるサンプル素材にエフェクトをかけたり左右に振ったりしていますが、単体では雑音にしか聞こえない、そもそもパーカッション用ですらない素材でもこうすることでドラムキットの一部であるかのように聞こえてくるのは不思議です。動画サイト投稿版からストリングスの定位等を修正したものを収録しました。

抱いた想いと空想日記 (初音ミク)

曲終わりのブレイクは「バンドがライブの最後に演奏する曲」をイメージしていて、本来ならアルバムでも最後に収録するべきだったのかもしれませんが、如何せん歌詞が暗すぎるのでここに配置しました。
動画サイト投稿版ではそのブレイクがなかったり落ちサビ終わりのストリングスフレーズが不自然だったので、その点を修正して収録しました。

花の便りに (GUMI)

同人即売会M3-2020年春にて販売した楽曲のボーカルを差し替えた後、細かい箇所に手を加えたものです。ネガティブな曲が多い自分の曲の中では珍しく、純粋に幸せを歌った曲です。
冒頭のピアノとパーカッションでローファイ感を演出したかったのでトラックに薄くディストーションをかけています。サビ前のストリングスの駆け上がりフレーズは8分音符×2 + 3連符×6という形をとっており、これにより緩急がつくため最近多用しています。

心気楼 (GUMI)

作編曲を始めて間もない頃に作った曲で、元々のアレンジは大変疎いものだったのですがメロディは好きな部類に入るので、少し前にピアノアレンジとして作り直したものを収録しました。この頃はコード進行も「定番コード進行」というようなネット記事で紹介されていたものをそのまま使用していたため、現在の自分の曲調とは異なる部分も多いかと思います。

ガラスの傷 (GUMI)

当初M3に出す予定の曲でしたが歌詞がコンセプトに合わなかったため一度はボツにした曲で、パーカッションも元は生ドラムでした。これまでの曲で楽器の構成がだいたい似通っていたため少し違うテイストのものを、と思い四つ打ちのシンセドラムに差し替え今の形になりました。サビ終わりに聞こえる英詩のような箇所は造語コーラスで、意味はありません。

Leaf (GUMI &初音ミク)

2番から楽器が増えていきサビで一気に盛り上がる、という展開が好きで、そこに至るまでリバースピアノやシンバルロールが要所要所を飾っています。ピアノのリバースエフェクトにはギター用のリバースディレイを使用し幻想的な音を目指しました。また、Bメロとの間にタメがあるため気付きにくいですがこの曲もサビで転調して元のキーのⅣにあたるキーへと進みます。
曲中で4種類のボーカルが聞けますが、順に「GUMI softwhisper→GUMI normal→GUMI power→初音ミクoriginal→GUMI power」となっています。

影法師 (初音ミク)

動画サイトの方ではそれほど再生されていないものの、この曲を投稿してから周囲の反応が変わったり聞いてくれる方が増えたりしたため、思い入れのある一曲です。
サビでブリッジミュートを繰り返すバッキングのギターはシングルコイルで、こういう音も出せると知って以来自分はシングルコイルのギターをメインに使用するようになりました。
3拍子はエモーショナルな曲調にしやすいので作っていて楽しいですね。動画サイト投稿版の調声にかなり手を加えたものを収録しました。

Summer Tears (初音ミク)

今作の表題曲で、個人的に一番好きな曲でもあります。1番にはなかったBメロが2番から入り、続くサビではボーカルが交代したりと盛り沢山ですが、登場するコード進行はいたってシンプルな王道進行(4536進行)がメインです。他の曲にも言えることですが、単純な4536ではなくⅣsus2(69)→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm7/9という様にテンションを加えていくのが自分のコード進行のクセみたいです。
動画サイト投稿版では1曲を通して初音ミクdarkを使用しましたが、2番のサビ以降を初音ミクsolidに差し替えて収録しました。


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