天之痕のストーリー その13

13.氐人族

仙人を探し求めて、海へ出た3人。小雪は初めて海を見るので興奮していて、陳靖仇は海を見て詩が思い浮かぶ。一方で水が苦手な玉児は船酔いしていた。陳靖仇は玉児に船酔いの対処法などを話していると、小雪は海の向こうに大きな魚のような何かを見つける。慌てて陳靖仇に話すが信じて貰えない。するとその魚の影がどんどん近づいてきて、次の瞬間視界は黒に占拠され、3人とも意識を失った。

目覚めた時には、船は壊されていた。どうやら大きな魚に船ごと丸呑みされ、そのお腹の中にいるようだ。玉児は未だに船酔いは収まっておらず不機嫌のままだった。とにかくここにいても仕方がないので道なりに進む3人。

3人は魚の特徴を持つ2人の戦士と遭遇する。怪しい人物を発見!捕らえよ!そのまま戦闘へ。なかなかの強敵だったで少し苦戦していると、やめなさい!と女性の声が聞こえる。

彼女の説明によると、魚の特徴を持ち、大きな魚のお腹の中に住むこの一族は氐人族と呼ばれ、彼女は氐人族の女王だ。そしてその大きな魚というのは、とてつもなく大きな鯨の姿をした太古神獣・巨海だった。氐人族の祖先は戦火を逃れるため東海まで逃げたのだが、盤古神は彼らを哀れみに感じ、自分が乗っていた神獣の巨海を与えた、という歴史があった。

仙人のことを少し知っているという女王について行き、氐人族の住処に入った。そこに広がったのは煌びやかな景色だった。女王の宮殿は特に豪華爛漫としか言いようがなかった。そして氐人族は皆とても若々しい見た目をしている。
女王によると、700年前に一人の剣侠が、とある上古十大神器の力を利用して術を施し、氐人族全ては200歳まで生きられて、なおかつ死ぬまで若々しい姿のままでいられるようになったのだという。

しかし女王曰く、氐人族は今死活に関わる脅威にさらされているという。東海の覇王・黒龍王が氐人族を食べれば氐人族同様寿命が延びると思い込んだのだ。氐人族は巨海の眷属たちのお腹の中にも暮らしているが、効率を求める黒龍王は眷属の鯨たちを次々と丸呑みし、それによって既に3分の1の民が犠牲になってしまった。黒龍王はあまりにも強いため氐人族は歯が立たない。
そして今日黒龍王が巨海にも攻撃を仕掛け、それに驚いた巨海が逃げる時に誤って3人を飲み込んでしまったのだと言う。

ここまで話した女王は、3人に黒龍王の撃破をお願いする。仙人がいる仙山島は仙界の桃源郷に位置していて、普通の人間には見つかるはずもないが、神獣である巨海ならば近づけることができる。黒龍王の撃破を受けてくれるのなら仙山島に連れて行くと。
正義感の強い玉児はすぐにでも氐人族の危機を救う気満々だが、陳靖仇は躊躇っていた。もし3人は黒龍王に敵わず、逆鱗に触れた場合、氐人族は却ってますます危険なのではないか、陳靖仇はその心配事を女王にぶつける。女王は心配しないでくださいと話す。どういう結果になろうと、黒龍王がどんな仕返しをしようと、全ての責任は私が取る、と。そこまで言ってくれたので3人とも黒龍王の撃破を試みることにした。

女王が言うに、黒龍王は龍宮にいるが、向かうには小さな鯨の背中に乗る必要がある。2人の氐人族の少女が道案内および鯨を扱うため一緒に来てくれるとのこと。更には女王は混天綾なるものを用意してくれていて、これを手首に結べば水を避けることができる。これで玉児は水を怖がらなくて済むように。

女王は最後に重要なことを話す。龍宮には大きな蛤の殻があり、その上に龍族の神器が置かれているが、その神器を取ってはならない。もし取ったらどうなるかと陳靖仇は質問すると、女王は、年老いた黒龍王は神器の力によって生き長らえているので、取ったら黒龍王は必ず死ぬものの、氐人族も大きな災難に見舞われてしまう、とだけ答えた。

これで準備万端。陳靖仇たちはヒトデの迷宮と深海を突き進み、龍宮付近に辿り着く。危ないのでと、氐人族の少女と鯨を外に待たせて、陳靖仇、小雪、玉児は奥に向かう。入り口の蟹、蝦、魚の衛兵を倒し、奥の黒龍王と対峙する。

玉児は単刀直入に、私欲のために氐人族を食べているのは本当かと聞くと、黒龍王はそれの何がいけないのかと逆に質問をする。彼らに家族がいるのに殺すのはあまりにも酷すぎると答えると、お前たち人間も何の罪もない動物を薬の素材にしたりするではないか、偽善者どもに説教される謂れはない!と黒龍王は言う。陳靖仇と玉児は反論しようにも、言葉を詰まらせてしまった。
そんな時氐人族の少女2人が中に入ってきて、私たちの家族を返せ!と泣き叫ぶ。氐人族同様家族を理不尽に奪われていた玉児はこの2人の気持ちを痛いほど分かっていた。力こそが全て!来るなら来い!と話し、本来の巨大な黒龍の姿になった黒龍王と戦闘開始。

さすがは東海の覇王、技が強い上、受けた傷もどんどん塞がっていく。持久戦に持ち込み、なんとか瀕死まで追い込んだ。
反撃する力はもう持たず、人型に戻った黒龍王の首に刀を構える玉児。もう死しか残されていない黒龍王だが、取引をしないかと玉児に持ちかける。あなたの家族も殺されてしまったそうだが、自分なら蘇らせられる、と。最初は信じない玉児だったが、黒龍王の話術に取り込まれ、続きを聞いていくことに。

黒龍王が言うに、この龍宮に崆峒印という神器がある。それには死者を復活させる力があって、黒龍王が生きている間にその龍の血を崆峒印の上に垂らして、亡くなった玉児の家族の遺体の上に置けば肉体が蘇るらしい。命を握られているから嘘を吐く理由がないと言う。
すっかり黒龍王の言葉を信じた玉児は、後ろの蛤の殻に置かれた崆峒印を取ろうとする。陳靖仇と小雪はすぐにそれこそが氐人族女王が言っていた神器だと分かり、女王は取るなと言っているのでこれはきっと黒龍王の罠だ、と玉児を止める。しかし玉児は、殺された家族が私にとってどれくらい重要なのかあなたたちにはわかるはずもない、ただ借りるだけでちゃんと返すのに何がいけないのか、女王はきっと許してくれる、止めないで、私はもう決めた!そうして崆峒印を手に取ってしまった。

次の瞬間空間が揺れ、なんと氐人族の少女2人が老婆の姿になってしまった。この崆峒印こそが700年前にとある剣侠が氐人族の不老不死のために術を施した神器そのものだった。驚いた玉児は慌てて崆峒印を元に戻したがもう何の意味はなかった。
存分に怒るがいい、お前たちのその顔が見たかったのだ!黒龍王は死の間際に玉児たちを煽るような言葉を言い続けた。お前は取り返しの付かないことをした、お前こそ私欲に取り憑かれているのではないか、私のことを言う資格はない!そんな言葉を吐きながら黒龍王は息絶えた。

どうしたらいいのか慌てふためく3人。氐人族の少女に謝罪すると、家族の仇を取ったことを感謝していると言ってくれた。更には、女王はきっと激怒しているので早くお逃げください、崆峒印のことは我々が取ったことにするので、とも言ってくれたが、さすがに玉児は他人のせいにするような人ではない。謝罪のために3人は氐人族の少女と共に帰った。

氐人族はやはり皆老人となってしまった。しっかり止められなかった自分たちも責任があるから、そんなに自分を責めないで、と陳靖仇と小雪は玉児を慰めた。ありがとう、わがままで迷惑かけて本当にごめんなさい、玉児はひどく落ち込んでいた。

女王の宮殿へ赴き、3人は女王に謝罪する。女王はやはり激怒していた。本来ならばありがとうを言うべきだが、我が民が皆こんな姿になってしまったのを見てしまったらそんな言葉は死んで言えない!玉児は前に出て崆峒印を取ったのは自分だと認めた。その理由を聞かされたので事の顛末を話すが、女王はますます怒り続けた。
氐人族を若々しい姿に戻すには700年前のあの剣侠にもう一度術を施してもらうほか望みはないが、雲遊剣俠と呼ばれていた事以外は、何一つ分かっていなかった。

ごめんなさいしか言わない玉児に対して女王は怒る。ごめんなさいを千回万回言ったところで何の意味もない、そんなに詫びたいのなら、あなたのその綺麗な顔も私たちのように醜くしてから謝りなさい!その言葉を聞いた玉児は、次の瞬間、なんと刀で自分の顔を切ってしまった。
その場にいる人は皆騒然としてしまった。小雪は回復の術を使うが、傷が深すぎてどうすることもできなかった。女王もまさか玉児が自分の顔を切るとは思わず、玉児の手当を周りに命令した。

6時間後。女王と医者から、玉児は顔の傷が一生残るのは確実だが、何より失明の可能性が高いことを聞かされる。医者は女王に対し、その怒りやすい気性の荒い性格をこの期に変えたらどうですかと言い、その場を去った。今度は女王がごめんなさいを言う立場になった。

数日後、玉児の傷はようやく少しは落ち着くようになった。女王は、あの時は黒龍王がどんな仕返しをしようと全ての責任は私が取ると言ったのに、私たちの恩人にこんな思いをさせて申し訳ないと改めて謝罪した。そして当初の約束を守り、陳靖仇たちを仙山島に案内してくれることになった。
玉児には傷が完治するまでは留まるよう勧めたが、玉児は仲間たちと共に仙山島に向かいたいと決意した。

こうして鯨に乗り仙山島に足を踏み入れた3人、女王に別れを告げた。

氐人族女王(ていじんぞくじょおう)
本名年齢不明。太古神獣・巨海のお腹の中に住む氐人族の女王。氐人族は神器の力によってほぼ不老不死、だった。

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