天之痕のストーリー その21

21.宇文太師

長沙駐屯地には既に隋兵がたくさんいた。近付くと小雪が久しぶりに再び頭痛し始める。頭痛に耐えながらも小雪は早く長沙の人々を避難させなくてはと言う。しかし玉児は、今更行っても遅いのでこのまま駐屯地に突入して直接万霊血の術を止めたほうが早いと話す。
しかしいずれにしても結局間に合うことはなかった。長沙の人々の仇を取るため陳靖仇一行は駐屯地の奥に向かう。

そこにいたのは、たった今万霊血を入手したばかりの宇文太師だった。君たちか、今まで散々邪魔してきたのは。
玉児にとって宇文太師に会うのは龍舟と魔王砦に続いてこれで3回目、そう話すと、宇文太師は龍舟以外で玉児と会ったはずがない、玉児以外と会うのも初めてだと言う。違和感を感じる玉児。

ここで師匠は、目の前の宇文太師こそが、16年前陳国にとどめを刺した左右違う瞳を持ち黄金剣を操る少年楊拓その人だと気付く。すなわち陳靖仇にとって両親と祖国の仇に当たる存在だ。
師匠は楊拓の強さを知っているので陳靖仇たちに逃げるよう助言するが、陳靖仇と玉児はもう聞く耳を持たない。崆峒印と神農鼎を持っているのは知っている、置いていけと話す宇文太師に強く反抗し、戦闘へ。宇文太師は若者を殺すのは忍びないと話し、なんと片手で応戦するが、それでも陳靖仇たちは勝てるはずもなかった。

ついに宇文太師は痺れを切らし、強硬手段に出て奪おうとする。次の瞬間、なんと師匠が陳靖仇を守ろうと前に飛び出し自ら宇文太師の剣気を食らい、重傷となり気を失う。
宇文太師は突然のことに驚いたものの、今度は師匠の命と引き換えに崆峒印と神農鼎を出すよう命じる。陳靖仇は師匠も神器も守るために、神農鼎は大きいので普段持ち歩いていない、師匠を連れて帰らせてくれたら必ず持ってくる、もし自分たちを殺したら一生見つからない、と嘘をつく。神農鼎を普段持ち歩いていないと言うくだりはともかく、それ以外の子供騙しは当然通用するはずもない、宇文太師は氷の術で師匠を凍らせ、3日以内に崆峒印と神農鼎を持って来なければ師匠の命はないと一行に告げる。

どうすべきか悩む陳靖仇たち3人。小雪は古月仙人と然翁老仙人に助言を求めてはどうかと提案。ほかに当てもないので早速仙山島に向かう。しかし召使いの女の子によると2人とも用事のため今は仙山島にはいなくて、しばらく戻りそうもないとのこと。途方に暮れる陳靖仇。
自分を育ってくれた師匠と、拓跋部族と氐人族のそれぞれの神器、それらを天秤にかけることは陳靖仇にはできなかった。悩む陳靖仇を見て、玉児は神農鼎は差し出してもいいと話す。今まで自分は散々陳靖仇のお世話になったし、なにより人の命が最優先、神器は差し出しても自分は必ず取り戻すから、今は師匠を救おう、と。罠の可能性が高いので陳靖仇は自分一人で向かおうとするが、小雪と玉児は猛反対。死ぬなら一緒に死ぬ、3人でずっと一緒にいると約束したのだから。

再び長沙駐屯地に戻る。素直に神農鼎と崆峒印を渡すと、宇文太師も素直に師匠を返してくれた。彼曰く、師匠はかなりの重傷らしく、生きられるように治療もしたとのこと。その言葉を信じられない玉児は突っかかっていくと、宇文太師は、自分はそんな卑怯な真似をする人間じゃない、今回は手を抜いたが、もしまた邪魔立てするなら今度こそ容赦しない、そう話しその場を去った。

まだ気を失っている師匠を宿屋に運んだ。3人は罠などなくいとも簡単に師匠を取り戻せたことに驚きを隠せずにいた。宇文太師の本当の人となりを考えるようになるが、神器2つを奪われたことには変わりないので、とりあえず今は協力してくれている寧珂郡主に謝罪するため独孤郡王府に戻ることに。

宇文拓(うぶん たく)
26歳、男。現隋国太師で、宇文太師と呼ばれる。左右違う瞳を持ち、黄金剣を操る。元隋国太師楊素の弟子。

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