天之痕のストーリー その14

14.仙山島

女王が去って、小雪が玉児の体を支えながら進むことになった。すると玉児が泣き崩れた。小雪によると、昨晩薬と包帯を取り替えるときに玉児は思わず鏡を見てしまって、その時からずっと泣いていたそう。さっきは女王の前では強い姿を見せていたが、今はもう強がれなかった。
私はこれからどうすればと話す玉児に、これからもずっと一緒だよ、と陳靖仇と小雪は答える。

仙山島を進む3人。玉児の傷が幾度なく悪化したりするが、陳靖仇と小雪の献身的な看病によってその度難関を乗り越えてきた。
ある早朝、陳靖仇は近くから泣き声が聞こえた。行ってみると泣き声の主は玉児で、彼女はあと一歩で川に落ちてしまう場所にいた。陳靖仇は急いで玉児の側に向かった。玉児はもう完全に失明してしまったようだ。陳靖仇は彼女を慰めた。例え美貌と光明を失っても、玉児お姉さんは綺麗な心を持った正義感溢れる人なのはずっと変わらないよ、わがままとは思わない、そのままの玉児お姉さんが一番素敵だよ。玉児にとって心温まる言葉なのは言うまでもない。見えない玉児のために、陳靖仇は仙山島の景色を教えた。

数日後、玉児の傷がまた悪化してしまい、いつも以上に高熱でなかなか下がらなかった。どうしたらいいか悩む2人、陳靖仇は不意にずっと持っている本のことを思い出した。それは師匠がくれた漢方医学書で、調べてみると解熱用の薬草7種類が載っていた。女王が見せてくれた仙山島の地図によると、薬草が豊富な百草澗という場所があるそうで、そこに行ってみることに。
百草澗で7種類の薬草を入手し、漢方医学書に書かれた手順で薬にし、玉児に飲ませたが、全く効果がなかった。小雪は神農鼎が使えるのではと提案する。神農鼎を使い再び薬を作るが、残念ながらまたしても効果はなかった。

神器をもってしても玉児の症状が良くならないなら一体どうしたら、考え込む陳靖仇。すると小雪は、なんとナイフで自分の腕を切った。
小雪が言うに、とある母親が不治の病を患ってしまい、その息子が自分の腕の肉を切って薬にしたところ、母親の病が治った、そんな話を昔賀おじさんから聞いたことがあると。女の子がこんな痛い思いをすることはないよ、男の自分がやったのに、と陳靖仇に言われると、拓跋お姉さんのことが好きだから、苦しむ姿は見たくないから、と小雪は泣きながら答えた。
薬草と小雪の腕の肉を神農鼎に入れてみると、なんと神農鼎は綺麗な七色の光に包まれた。きっと小雪の思いが神様を感動させたんだ!今度こそ絶対効果はあるよ!陳靖仇の予想通り、4時間後、玉児の症状は完全に落ち着いた。

玉児はまた陳靖仇と小雪に救われたのだと分かった。玉児は、今度また症状悪くなったら私を置いて2人で進んで、でないときっと陳靖仇の師匠を救う期限を過ぎてしまう、と言ったが、陳靖仇と小雪はもちろん玉児を見捨てるようなことはしない。玉児は感動の涙を流した。

仙山島を進む3人は、ようやく初めて人、もとい仙人と出会った。それは老人と青年の2人だった。2人は囲碁をしていて、老人の番になったが、次の一手をどうするか悩んでいるようだ。一方で青年はひたすら琴を奏でていて老人を待っていた。陳靖仇は2人に話しかけるが、今考えているから少し待ちなさい、と老人に言われる。
他に行く宛もないため、立って待つことに。本当は玉児には休ませたかったが、私も仲間だからと言うので、一緒に待って貰うことにした。
しかし老人はひたすら考え続け、ついに3日も経った。途中さすがに玉児と小雪を休ませて、陳靖仇は1人でずっと立ち続けて仙人を待った。ようやく老人が次の一手を決めたが、それは青年の思う壺だった。結局老人は青年の罠にはまり、9110回目の敗北を喫した。

さて、ようやく陳靖仇たちの番となった。陳靖仇は師匠のことを話し、助けるよう土下座してまで、懇願した。老人が言うに、数千年前に昊天帝が饕餮を伏魔古鏡で洞窟に封印したが、それこそが陳靖仇と師匠が封印を解いてしまった洞窟だ。饕餮が動けないようにした師匠の判断は正しいという。とりあえず陳靖仇一行はだいぶ疲れているから、仙山島にある天外村の然翁の家に向かうといい、と告げられる。

陳靖仇たち3人はそこに向かう。天外村は仙人たちが暮らしている村で、その一番大きい屋敷が然翁の家だ。なんと仙人2人がもう既に家の中にいた。老人は剣の達人で、御剣術=剣を大きく変化させ、その上に乗り空を飛ぶことなどができる術で戻ってきたからだ。
2人の名前を知る。老人はこの家の主の然翁その人、青年は然翁の友人で名前は古月、仙人の中で医術の腕は一二を争うレベル。饕餮討伐も古月仙人の出番、然翁老仙人は自分では力不足とのこと。
しかしいくら陳靖仇一行が頼み込んでも、古月仙人は仙人はそもそも人間界に関わってはいけないと言って、頑なに引き受けなかった。玉児の傷はまた近いうちに悪化してそれが命に関わること、百年地稔草という薬草があれば悪化を防げること、それだけ言って古月仙人は帰った。

然翁老仙人曰く、古月仙人は本当はとても親切で、助けるなら最後まで助けるタイプの人。しかし以前とある人に頼まれ、死にかけた子供を救ったが、その子供が大人になると何の罪もない人を殺す害悪になってしまった、そこから彼は人間のことに一切関わらなくなったそう。

するとそこで玉児はまた高熱を出してしまった、今までずっと具合が悪いのを我慢していたようだ。然翁老仙人は3人を自分の家に泊めることにした。陳靖仇は今すぐ百年地稔草を探しに行きたくて然翁老仙人に道案内を頼んだが、もう日は落ちていて、暗い中で山を登るのはとても危険、明朝に行くからとりあえず休みなさい、と止められる。

しかし深夜、陳靖仇は小雪に起こされる。玉児が今までにない高熱になってしまった。どうしたらいいか焦る2人。私もう一度腕を、と小雪が言いかけたところ、陳靖仇はすかさず自分の腕を切った。小雪はたくさんやってくれたから、今度は自分の番だ、と言って。前回と同じ方法でとりあえず玉児の症状を抑えようとしたが、今回はなぜか全く効果が現れなかった。
このままでは玉児は明朝までに持たないと感じた陳靖仇は、然翁の家の侍女である幼い少女・阿如に仙人のことを尋ねる。然翁老仙人も出掛けていて明朝まで戻らないと言う。それを聞いた陳靖仇はすぐに外に飛び出した。

4時間後、まだ夜は明けない。古月仙人の居場所に小雪がやってきた。泣きながら地面に頭を付けて、玉児を救うよう懇願した。古月仙人にとって玉児の顔を元通りにするのも失明を治すのも造作もないこと。だからこそ小雪にこう言った。あなたはあの男の子に恋をしているよね、もし彼女が綺麗な顔に戻ったらきっとあなたの恋敵になる、と。古月仙人によると玉児はそもそも仙山島で死ぬ運命らしい。そんな言葉を聞いても、小雪の口から出たのは、私は拓跋お姉さんのことも好きです、だからお願いします、それだけだった。
そこに然翁老仙人が登場する、気を失った陳靖仇を連れて。陳靖仇は自分1人で百年地稔草を手に入れようとしたが、腕の傷もあったため崖から落ちてしまった。帰ってきた然翁老仙人が見つからなければきっとそのまま死んだと言う。古月仙人は懇願し続ける小雪を見て、あなたたちには負けたよ、と溜息をついて、陳靖仇と玉児を救うことを約束した。

翌朝、陳靖仇は目を覚ました。陳靖仇の危機も、玉児の応急処置も、古月仙人がやってくれた。玉児の傷を完全に治す方法も教えてくれると言う。陳靖仇と小雪は庭にいる仙人のところに向かった。

古月(こげつ)
青年の姿の仙人、医術の達人。古月仙人と呼ばれる。その正体は実は千年白狐である。

然翁(ぜんおう)
老人の姿の仙人、剣術の達人。然翁老仙人と呼ばれる。古月とは古い付き合い。

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