リニアが本当の争点なのか?静岡県知事選挙に関して

今回、誰かは決めています。

ただこの問題がどうなっていたのか、
この機会にしっかり確認はしておこうと思い
『静岡人vol.4 JR東海リニア南アルプストンネル なぜ、川勝知事は闘うのか?』
という本を図書館で借りて読み、考えてみました。

ざっと読んでみました。「リニア」推進 Yes or No の中に
①大井川水系の渇水リスクを受け入れる Yes or No
②静岡の地域経済衰退のリスクを受け入れる Yes or No
③原発再稼働・新規建設を受け入れる Yes or No
の3つが含まれ、それら全てを一括して選択を迫られているというように感じました。

それってあなたの”感想”ですよね?
はい、そうです。

ここから先を読み進める場合は、
一個人のつたない理解と感想をだらだらと
書き述べた字数制限のない感想文なので
そのつもりで読んでください。


①大井川水系の渇水リスクを受け入れる Yes or No

についてですが、この雑誌と静岡新聞のweb記事を
読んで思ったのですが、水源の全量保証は絶対に
不可能だと思いました。

なぜそう思ったかというと、地層の状態とそれに
ともなう工事の工程上避けられないからです。
トンネルを通そうとしている大井川の地下400m
部分は大井川自体地下水を多く含んでいると
いうのは普通に想像できます。それだけではなく
川と並行するように地下水帯が存在することが
分かっています。

地下水を多く含む地盤でのトンネル工事を行う
場合には作業中に地下水が掘っているトンネル内に
水が漏れ出ることが確実です。トンネル内に
水が漏れ出た場合、低い方に流れていきます。
したがって、こういった地盤でのトンネル工事は
掘っていく先頭部分を下向きにするのではなく
上方向に掘っていくという工程を取るそうです。

そうでないと、掘っている最中に水が出てきた
ときに下向きに掘っていると、そこに水が溜まり
機材も人も水没してしまうからです。
JRの作業計画はこれを避けるために大井川の
地下トンネルを掘る工程は、大井川下に向かって
上向きに掘る工程で計画されています。
地下水が漏れ出るということが分かっているから
からです。

そして漏れ出た水は、トンネルを掘り始める
山梨側と長野側へ流すことで作業に支障がない
ようにするということがそもそもの計画です。

JR側の説明によると、作業中に漏れ出る水は
地下水なので大井川を流れる水自体に影響は
ないと説明しています。

川勝知事は、作業中に漏れ出た地下水を全量
戻せと主張してきました。

ここから先は私の感想と他の情報を交えて
述べます。地層内に含まれている水や地下水帯
は大井川の水、土を水圧で押し上げることで
支えていると思われます。基礎部分に当たる
地下水が無くなってしまったら、おそらく
大井川の"川"に流れていた水は川底を伝って
乾いた土にしみこんでいくのではないか。
そうなると変わ自体の流量は減ってしまう。

ある程度時間が経って、地下に水が溜まり、
水が元のように戻れば大井川の水量も元に
もどっていくかもしれない。しかし、これは
かもしれないだけで何の確約もとれるもの
ではない仮定での話し。

これは静岡新聞の記事にありましたが、
新東名高速道路によって建設によって、掛川の
ある集落の地下水や河川の流量が減ってしまい
結局、その地域の農業は立ち行かず、未だ水量
は回復していない状態だという記事がありました。
施行主からは十分な補償はないといいます。

これに限らず、大井川は大正時代に水道が
導入された時に溢れんばかりの大井川の
水量が一気に減ったり、その後も度々の
渇水が引き起こされるなど、渇水のリスクを
抱えた地域のようです。

リニア工事によって漏れ出た地下水が
どの程度の影響を及ぼすか、だれも正確
には予想できないと思います。もし影響が
でてしまったとすると、その規模は一集落
に留まるなどということはありえず、
流域全体に影響を及ぼすと思います。

水の用途は、生活用水、農業用水、産業用水
に別れ、水利権なども絡み、地域内での
"水争い"が起こることも予想されます。

こうなってしまうと、水域全体が一気に
衰退してしまい、水域全体が過疎化してしまう
ということも大げさではないと思われます。


②静岡の地域経済衰退のリスクを受け入れる Yes or No

リニアではありませんが、新幹線や高速道路
をつくったことでそれまで主要沿線でにぎわって
いた地域が衰退していくということは歴史上
何度も繰り返し続けてきたことです。
あまりなじみが無いかもしれませんが、
新幹線ができる前まで、九州地方の中心は
熊本でした。しかし、新幹線が博多(福岡市)
に乗り入れた昭和50年以降、人口が一気に
福岡市に集中し、熊本から人口や産業がどんどん
奪われることになりました。

東北地方の宮城県でも、石巻地方は非常に
産業が栄えていましたが、昭和57年に東北新幹線
開通以降、衰退の一途をたどり、仙台市の一人勝ち
になってしまいまっています。

東京―大阪(京都)を結ぶ街道、鉄道、高速道路
の主要幹線はすべて江戸時代以降、静岡県を
通る設計に創られてきました。徳川家康以前は
大きな川を横切る平野部の移動ではなく、
山の尾根づたい、川伝いとする中山道が主要街道
だったようです。

明治以降、鉄道が主要は移動手段と沿線する中で
有名な、馬籠宿、吾妻宿は取り残されることと
なりました。逆にそれが幸いして、江戸のたたず
まいや文化が継承され続けているともいえます。
私たち静岡県の人々は時代をリードする産業振興
という形で徳川家康の国家像、国家戦略の恩恵を
今もって受け続けているということになります。
リニア導入以降は、人口流出は今以上に加速化
することになることが容易に予想されます。

もちろん馬籠宿、吾妻宿のような形で観光産業を
軸に営むということもあっていいと思いますが
リニアを受け入れるということは、現状からは
大きく産業も暮らしぶりも変化するということを
受け入れるかどうかという選択になると思います。


③原発再稼働・新規建設を受け入れる Yes or No

原発何の関係があるのか?と思われるかもしれま
せんが、リニアの消費電力量は新幹線の3倍かかる
そうです。日本全体における新幹線の消費電力量は
何%かは分かりませんが、実際にはおそらく1%にも
満たないと思います。リニアに3倍かかるからと
いっても日本全体の消費電力量をひっ迫させる
ほどの消費量にもならないと思われます。

しかし、「リニアには電力が必要だ」という分かり
やすいフレーズによって原発推進が進められる
ことは容易に想像できます。

現在、日本経済の中で一番の工業製品出荷額を誇る
のが愛知県を含む中京工業地帯。東京を含む
京浜工業地帯の2倍以上になります。また静岡県
を含む東海工業地域は京葉工業地域よりも出荷額
は高く、東海4県は日本の工業をけん引している
と言っても過言ではありません。

しかし、この中京工業地帯は中部電力管内で、
原子力発電所は御前崎にあるもののみ。それは
現在、停止しており、原発なしの状態でも工業生産
が維持されています。

火力発電は二酸化炭素を排出するために環境への
負荷をかけてしまうという問題点と、化石燃料の
石油や石炭、天然ガスのほとんどを海外からの
輸入に頼っているため、現在の円安傾向や世界的な
物価高に対応することが難しくなるという見方も
あります。

しかし、こういった問題が定量的な比較ではなく
いつのまにか「リニア推進=原発再稼働」という
まったく非科学的な論調に置き換えられてしまう
ということが過去幾度も繰り返されてきました。

アメリカは原子力発電を辞めました。スリーマイル
の事故を教訓に、建設・発電コストに加えて事故を
含む損害賠償コストのトータルで、経済合理性が
ないという評価に至ったからです。

日本の政策は定量的に評価し、議論して決めていく
というプロセスが未成熟なために、往々にして、
誰かの思惑、権威主義によって方針が決定されて
いく。その繰り返し。

これに関しては意思決定プロセスが合理的、
民主的な手続きであれば挙げる必要のない項目
なのですが、こういった訳の分からない"合唱"が
起こることが想定されるので、敢えて挙げさせて
いただきました。


④補足として「国家事業」

過去、国家事業として取り組まれたものを
思いつくまま上げると、新幹線、高速道路、
オリンピック、大阪万博など。一定の成功と
思われるものはすべて戦後の昭和期に集中して
いるような気もします。

その後、平成令和でいうと、北陸新幹線、
新東名、コロナワクチン、大阪万博(これから)
など、評価が分かれるようなものが目白押し
という印象を受けます。

戦争前に目を向けると、戦艦大和もそうでした。
乗組員に任命された若者が上官から
「大和が沈むときは日本が沈むときだ。
よかったな」(絶対に生きて帰れるぞ)
と言われて送り出されたといいます。

芸能人のタモリさんが、何かのときに
「これからは新しい戦前の時代がやって来る」
とコメントされたそうです。
私もそう思います。

選挙は、だれを選ぶか?ということが
焦点になりがちですが、そうではありません。
たれを選んだらいいか?だと選ぶ人がいない
ということに陥りがちです。

候補者はより多くの人が関心をひいてくれる
だろうものだけを厳選して主張しているから
です。

自分の関心のあることや問題意識を持っている
ことを主張してくれるとは限りません。
もちろん候補者自身そういった問題自体知ら
ないという場合の方が多いかもしれません。

ですので、単に公約や主張に耳を傾けるだけ
でなく、集会に参加して質問したり、色々な
形で選挙運動などに関わり、候補者にその主張
や問題意識を届けるというプロセスがもっと
あってもいいと思います。

政治にお金がかかる主な原因は、普段誰も
政治的な主張に耳を貸してくれないので、
運動員となる秘書やスタッフを有償で雇い、
郵送でチラシを送付したりする費用に消えて
無くなることだと思われます。

そして色々な人が色々な思いを表出すべきだと
思います。その方がよりよい選択ができるし
知らない間に取り返しの利かないことが決まって
しまっているということが無くなると思います。

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