夫の鞄の中から離婚届を見つけた30代妻の相談(5)

「養育費はどうやって決まるのですか?」
「当事者で合意できない場合は、既存の算定式に従って裁判所が決めます」
「養育費は一度決めたら、変えられないのですか?」
「子の状況や、両親双方の収入等の事情が変われば、増額や減額が可能です」
「親権者になった親が、子を高額な私立幼稚園に入れて、もう一方が養育費を増やせと言われたら、増やさなければならないのですか?」
「養育費を支払っている親の収入が低く、公立の幼稚園に入れても支障がないようなケースだと、増額は認められないでしょう」
「もし調停がまとまらず裁判になったら、嘘をついた方が得ですか?」
「離婚裁判の場合、お互いの言い分が全く逆になることが少なくありません」
「両方とも嘘つきということですか?」
「いえ、一つの事柄をそれぞれが反対側から見ているようなものなのです」
「どういうことですか?」
「例えば、旅行に行ったとしましょう。夫は妻を楽しませるために仕事をやりくりして旅行に行ったと主張します。それに対し、妻は疲れているのに無理やり夫のわがままに同行させられたと主張するようなケースです」
「片方は月の表だけを見て、もう片方は裏側だけを見るようなものですか?」
「月の表と裏がものすごく違っているとしたら、そのようなものです」
「離婚するには、法律で理由が決まっているとよく聞きますが、どうなのでしょう?」
「離婚事由が民法770条で列記されてはいますが、あまり気にする必要はありません」
「え、法律を気にしなくていいのですか?」
「当事者で合意すればどんな理由でも離婚できますし、そのような協議離婚が日本ではほとんどです」
「裁判になったら?」
「民法770条1項5号に「離婚を継続しがたい重大な事由」と明記されています。双方が法廷で争うほど険悪な関係になったら、戸籍だけの夫婦にしておいても無意味でしょう。一方が有責配偶者でもない限り、離婚自体はたいてい認められます」
「有責配偶者って?」
「不貞行為(浮気)で家庭を壊した夫や妻を指します。家庭を壊しておきながら、離婚を請求するのはけしからんということです。余談ながら、最高裁の判決文に「(これで離婚が認められたら)妻としては踏んだり蹴ったりだ」というものがあり、「踏んだり蹴ったり判決」として有名です」
「最高裁の判決文に「踏んだり蹴ったり」ですか?面白いですね」
「ただ、一定の要件を満たせば離婚は認められますし、その要件も年々緩和されつつあります」
「要件って何ですか?」
「未成熟子がいないこと、相手方が経済的、社会生活的に悲惨な状況に陥らないこと、相当期間別居していることが、一般的ですが、これに当たると絶対ダメというわけではありません」
「認められるのですか?」
「裁判中に裁判官が和解勧告をして、双方が納得する条件で折り合えば離婚になります。離婚裁判は裁判上の和解で決着が付くことが現実にはとても多いのです」
「そうなのですか~」

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