夫の鞄の中から離婚届を見つけた30代妻の相談

「ところで高橋さん」
「はい」
「離婚届の話から、離婚の話、親権の話とご説明してきましたが、高橋さんには早すぎる内容じゃないでしょうか?」
「いいえ、夫のバッグの中に離婚届を見つけてから、私、先が不安で不安で・・・いろいろと教えていただきたかったのです」
「最初にも申しましたとおり、ご主人は何か別の理由で離婚届を持っていたのかもしれませんよ」
「どうして、そう思われるのですか?」
「相談や法廷での証言からもわかるのですが、男は嘘が本当に下手なのです」
「女は嘘つきだとおっしゃるのですか?」
「少なくとも、男より女の方がはるかに嘘が上手です」
「ずいぶん失礼なことをおっしゃるのですね」
「あ、もちろん高橋さんが嘘つきだと言っている訳ではありません。誤解を与えたとしたら、何卒ご容赦下さい」
「それで、先生は何をおっしゃりたいのですか?」
「ほとんどの男は、妻に隠し事をしていると態度等に変化が出るものなのです」
「どのように?」
「そうですね~。あまり喋らなかった夫が突然おしゃべりになったり、横柄だった夫が下手にでるようになったり、聞いてもいないのにその日の行動を報告したり」
「それって、後ろめたい気持ちがあるからでしょ」
「ズバリ!その通りです。後ろめたい気持ちが表に現れて態度が変わってしまうのです」
「女性だって後ろめたさは感じますわ」
「高橋さんは正直ですから・・・(汗)でも、そぶりにも見せない人がたくさんいるのですよ」
「どんな人ですか?」
「子どもと一緒に笑顔で夫を仕事に送り出し、夫が帰宅したら「離婚します」という書き置きを残して家を出る妻、けっこういるのです」
「それは・・・力でかなわない夫に知られたら大変ですから」
「私もそう思っています。神様は男に腕力を与え、女に奸智を与えたと」
「つまり、夫は私に後ろめたい気持ちがないから態度に出ない。離婚届は別の目的で持っていたとおっしゃるのですね」
「断言はできませんが、その可能性が高いということです。そもそも、離婚届についてご主人に聞いてみたのですか?」
「そんな恐ろしいこと、私にはできません」
「お気持ち、よーくわかります。訊ねたはずみに離婚を切り出されたら、どうしていいかわからなくなりますからね~」
「そうなのです」
「でも、今日のご説明で先々のことをご理解いただけたはずです。最悪の事態を覚悟すれば、後は前進あるのみです」
「そうですよね~私ももう疲れました。今晩、主人に話してみます。離婚の話になったら、また相談に乗っていただけますか?」
「もちろんです」

 その後、高橋さんは相談に見えませんでした。
 私が指摘したように、高橋さんの先走りだったようです。
 「夫は嘘が下手で、妻は先走りすぎる」・・・こういう傾向、大いにあります。


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