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絶対納得!ジブリ史上最強のヒロインは!?

今回はジブリ史上最強のヒロインについて語りたいと思います。

皆さんはジブリの最強ヒロイン、誰だと思います?戦闘枠だともののけ姫のサン、ロリババア枠で言えばハウルのソフィー、JS枠ならトトロのサツキ、三十路枠で行けば紅の豚のマダム・ジーナ、実にまぁ色んなヒロインがいるんですが、でもすみません、今回は全部違います。

その答えは...



『風立ちぬ』の里見菜穂子ちゃん!!

 いやーなんか、意外かも知れません。肩透かし感は否めない。申し訳ない。
 でも大丈夫、本稿を読んでいただければ何で菜穂子がジブリ史上最強か、ご納得いただけると思います。

 『風立ちぬ』あんま見てる人いないんですけど、今回は未視聴の方でもわかるように説明していきたいと思います。

それでは何故、菜穂子が最強のヒロインなのか?
それは、宮崎駿が女性に望むものを集めまくって作ったヒロインだからです。「オレが考えた最強のガンダム」みたいな感じですよ。

 まず、正常な人はあんまり気づかないんですけど、菜穂子って2WAYヒロインなんですよ。菜穂子は最初、年齢はわかんないんですけど、小学生くらいの時に二郎と出会うんですね(関東大震災の時)。そして、成熟した大人になってから軽井沢の避暑地で二郎と再開し、恋に落ちるんです。

 つまり、ロリキャラとしても大人の女キャラとしても楽しめる、水陸両用モビルスーツ的存在なんですね!!

  このロリっ娘と大人の女っていう組み合わせは紅の豚に登場したフィオとジーナを彷彿とさせます。もののけ姫のサンとエボシもそうですね。宮崎さんの性癖のレンジの幅がよくわかります。それを今回は一緒にしちゃったと。

そして菜穂子にはモデルとなる人物や作品があります。

 宮崎さんは本作の中でしばしば実在の人物と架空の人物をミックスするんですけど、実はこの映画自体が宮崎さんの大好きな文芸作品や映画、音楽の再構成でなりたっています。そしてこの菜穂子も小説だけではなく、色んな作品のイメージを重ねて作られてるんですね。

  まず、その最も有名な(オフィシャルな)出典は堀辰雄(この映画のタイトルの詩を訳した人でもあります)の恋人だった節子さんと、堀の著作『菜穂子』に登場する菜穂子です。宮崎さんはこの『菜穂子』が大好きなんですって。宮崎さんは『菜穂子』と『風立ちぬ』のミックスを「映画作りの特権」と言っています。

 アンオフィシャルで有名なのは本作のポスターにもなった菜穂子が絵を描いているカットがクロード・モネ『日傘の女』とめっちゃ似ていると言う件。これはググれば簡単に出てきます。

 そしてこの絵のモデルとなったのは、モネの妻カミーユでした。カミーユは32歳という若さで結核で亡くなってしまいます。

  そして本作の菜穂子も、二郎と結婚した後に結核で死んでしまいます。そしてそして、実は堀辰雄の妻節子も結核で亡くなっています。そしてそしてそして、実は宮崎さんのお母さんも結核で亡くなっているんですね。

 つまり、この菜穂子というキャラクターは結核という設定で繋がれたロリ属性からママ属性まで持ってる超カオスなキャラなんだと。しかも、その菜穂子は歴史的な絵画で描かれたような美少女で、宮崎さんが大好きな文学作品のヒロインでもあります。

    もうこの時点で菜穂子のパワーが伝わってきましたよね!

    でも、菜穂子が"ジブリ史上"最強な理由はまだ他にあるんです。

 実は『日傘の女』としての菜穂子は映画からも出典があります。しかもその映画はジブリ作品なんですね。日傘を持ってる女性といえば、ほら、あの人…!

え?誰?

  って声が聞こえてきましたが、火垂るの墓のお母さん!清太と節子のお母さん!
  このお母さんといえば、トラウマ的なお亡くなりのイメージが強いんですが、清太の回想シーンで生前の姿も描かれています。

 そして、このカットの直後、お母さんが持ってる日傘が風で飛ばされて地面を転がるシーン。実は宮崎さんは風立ちぬでもそれと同じシーンを描いてるんですよね。それは本作の最後で、死んだ菜穂子が風になって消えていくシーンです。その時菜穂子の持つ日傘も地面を転がりながら風に溶けていきます。

 風で飛ばされたお母さんの日傘と、風に溶けていく菜穂子の傘が非常に酷似したシチュエーション・構図を通して語られるのです。

  そしてこの瞬間、火垂るの墓と風立ちぬは「風」によって「死」というバトンが回されることになり、作品のテーゼ上緊密な関係を持っていることが明らかにされます。何故なら、ここで飛ばされる日傘はいずれも死者のものであり、風立ちぬはタイトルからわかる通り「風」がキーワードですし、火垂るの墓も「墓」、つまり「死」がテーマなんです。なんと言ってもこのシーン、かなり力を入れて描かれてます。

 火垂るの墓からの菜穂子の出典はまだあります。
 それは節子が死んだ後、清太たちの住処である防空壕の向かいの丘の家から『Home,sweet,Home』というレコードが聞こえてくるシーン。この向かいの丘の家はいわゆるブルジョワのコテージで、清太達の防空壕は構図的にはその対比で描かれています。裕福な人と貧乏な人のコントラストってことですね。

   そして、この避暑地に遊びにくる女の子の服装が、菜穂子が着ているワンピースや帽子にソックリ!

   絵を描くためのエプロンの有無しか変わらないほどです。

 めっちゃ似てますよね?ところで菜穂子も、絵を描きに軽井沢に避暑に行くようなブルジョワでした。この二人の立場や地位もそっくりです。
 ちなみに、火垂るの墓で菜穂子のモチーフとなった女の子が登場する場面も節子の死に繋がるシーンです。

 そうなんです、菜穂子って徹底的に死のモチーフの上に成り立っているんです。


 菜穂子というヒロインは実在の人物と芸術・文学作品が何層にも重ねられたヒロインであると同時に、それらを繋ぐのは全て”死”です。ジブリの中で唯一、死が臭うヒロインなんですね。

 宮崎さんは制作中に菜穂子を殺しくない!って言い出したそう。駿、どんだけ菜穂子が好きなんだ。

そしてそれは無理があると鈴木敏夫プロデューサーや周りのスタッフが諌めたエピソードがありますが、そりゃこんな5重くらいに死のモチーフが重ねられてる菜穂子を今さら殺さないというわけにはいかない。ストーリー的にも無理が出ちゃうし。

 そんなロリ属性もあればママ属性もあって、芸術的な美しさも与えられて、ジブリのヒストリーまで与えられ、高畑勲作品と宮崎駿作品を繋ぐ菜穂子はまさに"ジブリ史上"最強のヒロインです。そして彼女は、最強であると同時に死を運命付けられた存在…

 ラスボスっぽくないですか??笑
 

 ちなみに僕は飛ばされた二郎の帽子をキャッチして「セーフw」っていう菜穂子がすき。

 風立ちぬ関連は無限に書けるのでまた書きたいと思います。


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