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NotionのCOO、AI責任者、EMEAマーケティングマネージャーへのインタビュー動画を日本語訳しました

この記事は、Marcello AscaniさんのYouTube動画「Inside Notion 🚀 100 million users」の日本語訳です。
動画内容の翻訳にご快諾いただけたため、この記事を公開しています。

↑元動画


内容のピックアップ

  • Notionは現在毎日10万人以上ユーザ数が増えていて、トータルユーザ数は1億人に近づいている。
    (※2024/7に1億人に到達しました。)

  • Akshay氏がジョインした2018年の社員8人の頃から今までずっとキャッシュフローがプラスで、今までに資金調達した3億ドルのうち1ドルも使っていない

  • 2021年にNotionが数日間不安定になったとき、信頼性を重要視し、6ヶ月間新機能を一切作らずにパフォーマンス改善に努めた

  • マーケティング活動は一般的な広告施策をあまり行わず、クリエイターやコミュニティの支援を行ってきた。ブランドにもかなり投資しており、新しいブランドカラーを決めるのに9ヶ月費やした。

  • Notion AIがユーザを手助けして導いてくれるように、AIモデルのカスタマイズを行い、Notion内で何ができるかを正確に理解させている。


(動画の冒頭 1:08〜4:09 にはNotionのサンフランシスコオフィスの様子が紹介されています。気になる方はぜひ動画をご覧ください。)

サンフランシスコオフィスの様子1
サンフランシスコオフィスの様子2

COO Akshay Kothari氏へのインタビュー

Akshay Kothari氏

Akshay氏とNotionの関係性

Akshay:私の会社との歴史は、Ivanが2013年に創業したときにさかのぼります。
私は初期の投資家の1人でした。
実は当時Ivanを雇おうとしましたが、失敗しました。
そして数年後、彼が私を雇いました。
私がNotionに来たとき、わずか8人でした。

—— 2018年ですよね?

Akshay:2018年です。
3人のエンジニア、3人のサポート担当者、そして1人のデザイナーがいました。

2018年時点のNotion社の構成メンバー

Notionのターニングポイント

—— 歴史を振り返ってみましょう。
NotionはIvan Zhaoが創業しました。
当時、NotionのWebサイトビルダーでしたが、あまり人気が出ませんでした。

Ivan:Notionの最初のバージョンはWebページビルダーでした。
そこからウェブアプリビルダーに進化しました。
それがNotionの最初の数年に起きたことです。
人々はアプリを作りたくないということに気づくのに何年もかかりました。

—— Ivanは何年も働いてお金を使い果たした後、ほぼ全社員を解雇した。現在のNotionを作り出すために、日本に来てゼロから始めた。

Ivan:資金が尽きそうでした。
残念ながら、全員を解雇しました。そして小さくて面白くて静かな場所に行くことになりました。
そして私たちはコーディングに集中することができました。

Akshay:それが私たちにとって大きなターニングポイントでした。
ユーザがNotionを使ってアプリやソフトウェアを作ることを想像して、私たちは生産性を高めるための改善をしました。なぜなら生産性は誰もが必要とすることだからです。
メモを取る必要がある。プロジェクトを管理する必要がある。
Notionの根底では、人々にソフトウェアを作ってもらいたいと思っています。
人々を引き込むものが必要でした。
初期はドキュメントとWikiでした。これが実際に人々にNotionをダウンロードして使い始める理由となりました。

Akshay氏がNotionにジョイン

—— この新しいアイデアが軌道に乗り始めたとき、IvanはAkshayに入社と事業のスケールのサポートを求めました。
実際、Akshayはスタートアップの経験がありました。
大学卒業後、彼はスタートアップを設立し、LinkedInに売却しました。

Akshay:私の仕事は会社をスケールさせ、ビジネスをスケールさせることでした。
最初の4, 5ヶ月に私がやったことはサポートだけでした。
そこで興味深かったのは、需要が非常に高かったため、私たちはサポートで溺れてしまっていたことです。
3人のサポート担当者と私は、1日に約100〜120件のチケットを処理していました。

—— 口コミで広まったのですか?

Akshay:はい、主に口コミでした。なぜなら私たちは広告を出しておらず、マーケティングチームもなく、セールスチームもありませんでした。

—— プロダクト主導型マーケティングですね。

Akshay:プロダクト主導型マーケティングやプロダクト主導型グロースと人々は呼びますね。
本質的には、プロダクト自身によって人から人へと伝わっていく良いプロダクトでした。

—— Akshayが参画したとき、会社には8人しかいませんでした。
しかし短期間で、Notionはマーケティングなしで製品のみの力で急速に広まっていきました。

Akshay:私が参画したとき、20,000人ほどのアクティブユーザがいました。
そして毎日約1,000人の新規ユーザを獲得していました。

私はとても心配でした。COOとして雇われたのに、サポートしかしていませんでした。
しかし実際には、その4ヶ月間のカスタマーサポートチケットへの回答は、人々がNotionをどのように使用しているかについての学位を取得するようなものでした。
Notionでできるなんて思っていなかったような利用法もありました。
どのように答えたらいいかわからないこともありました。
そこでサポート担当者に「この質問にどう答えたらいいの?」と尋ねました。

カスタマーサポートチケットはすべて、誰かが問題を抱えているということです。
エンジニアのところへ行って修正してもらい、顧客に「更新すれば上手く動くはずです」と伝えることができました。
とても密接なフィードバックループでした。

初期の頃、Notionが成長した理由は、素晴らしいプロダクトと素晴らしいサービスを持っていたからです。
その2つしか持っていませんでした。

セールスとマーケティング

—— 次のステップは、新しいセールス部門でチームを拡大することでした。
当初の目標は、Notionに移行した企業の支援することでした。

Akshay:初期の顧客の中には、数百人でNotionを使っているイギリスの銀行がありました。
とても驚きました。どのように使っているのだろう?と。
そして深く掘り下げていくと、大企業で使用され始めていることがわかりました。
大企業には特定のニーズがあります。
プロダクトの価値を最大限引き出せるようにアカウントマネジメントが必要でした。
それが、セールスチームを構築し始めた経緯でした。初期のセールスはとてもコンサルティング的で、既存の顧客と密接に協力してサポートするものでした。

マーケティング側では、2つのことに非常に重点を置きました。コンテンツとコミュニティです。
コンテンツは我々がコンテンツを書くのではなく、あなたのような方々に書いてもらいました。
ユーザに連絡して、「あなたのNotion利用をどのように支援できますか?その話をどうすればもっと上手く伝えられますか?」と尋ねました。
最近、Notionをどのように知ったか尋ねる調査を行いました。
今Notionを知っている人の30〜40%はYouTubeやその他ソーシャルメディアを通じて知ったと答えています。
最初は、私たちについて話してくれる何人かを見つける必要がありました。
より多くのクリエイターが私たちについて話すほど、他のクリエイターもNotionを認識するようになりました。
そして今では、多くのクリエイターがNotionを自分たちのオペレーティングシステムとして使用しています。
彼らはNotionを使って多くの作業を作り出しています。

—— マーケティングは他の企業とは異なる手法をやってきました。
クリエイターによるチュートリアルやワークスペース紹介のコンテンツの後押しをすることを決めました。

Akshay:マーケティングはあなたのようなクリエイターを支援することでした。
また、コミュニティイベントを行うための助成金も提供しました。
世界中の大都市で多くの人が集まる様子を見ました。
COVID-19の前の年、世界のさまざまな場所で毎日のようにイベントがありました。
Notionが主催したイベントではなく、コミュニティによって主催されたイベントです。
中にはクレイジーなイベントもありました。
2019年に東京で参加したイベントを覚えています。日曜日の午後でした。
50人がパソコンを持って現れ、Notionのセットアップについて熱狂していました。
お互いに自分が構築したNotionを見せたがっていました。
本当に信じられないことです。

—— Notionがこれほど人気がある理由の1つは、自分のパーソナライズされたワークスペースを構築できるからです。
レゴで何かを作る方法を示すビデオを作れるように、Notionでも同じことができます。
さらに、有名なIKEA効果があります。つまり、何かをゼロから作ると、それを非常に価値があるものだと感じるのです。

Akshay:彼らと話すと、「あぁ、それはNotionじゃなくて私なんだ」みたいな感じでした。「これは私の作ったものだ」と。
私たちはその反応が大好きです。私たちがクールになりたいのではなく、ユーザをクールにしたいのです。
より多くの人がNotionを使えば、私たちのビジネスはとてもシンプルです。
使ってくれる人、お金を払ってくれる人、それが私たちがビジネスです。

ユーザ数1億人

—— 5年前、Notionには25,000人のユーザがいて、毎日1,000人が新規登録していました。

Akshay:5年後の今日、毎日10万人以上の人が登録しています。
ユーザ数も1億人に近づいています。
※2024年7月にユーザ数1億人を達成しました。

まだ長い道のりがあります。
約10億人の知識労働者がいます。
数十億人のアクティブユーザを持つツールもあります。

私たちはNotionのプロダクトをよりシンプルにするために一生懸命努力しています。この問題について考えるのは楽しいです。
深く掘り下げるほど、このプロダクトでもっとたくさんのことができることに気づきます。ただ、その代償として複雑さが伴います。
私たちが望むのは、パワフルでありながらシンプルであるという組み合わせです。
ビデオゲームはこれをとても上手く実現しています。
マリオの最初のレベルをプレイすると、「よし、最後までいける」と感じます。
できることが増えるにつれて、複雑さのレベルも上がっていきます。
Notionもそのようなものだと思います。
登録したとき、レベル1で使い始めることができます。ドキュメントを書くことができます。AIを使うこともできます。
そして、より深く掘り下げていくにつれて、新しいことを発見できます。

Akshay氏が抱えた責任

—— PMF後でさえ会社をスケールさせることが難しい理由に、会社の構造の問題があります。
多くの新しい顧客をさばく能力が必要となります。
そうしないと、すぐに燃え尽きてしまう危険性があります。
そこで、Akshayに彼の最初の責任は何だったのかを尋ねました。

Akshay:私はよく冗談を言っていました。「Ivanがやりたくないことを全部やっているんだ」と。
私の仕事は、Ivanが彼の天才的な領域に集中できるようにすることです。
サポートから始めて、セールスとマーケティングチームを構築しました。
すべてのチームのリーダーを見つけました。
現在すべてのチームは最高収益責任者(CRO)のEricaに報告しています。
また、数年間かけて人事、財務、法務といった基盤となるチームの構築にも取り組みました。
CFOが入社する前は、私は約9ヶ月間財務チームにいました。

—— つまり、ビジネス管理、財務、セールス、グロースなどビジネスのバックエンドをほぼ構築したわけですね。

Akshay:4ヶ月前にIvanからプロダクトをやってくれないかと頼まれて、プロダクトリーダーになりました。
すべてのことを少しずつ経験してきて、Notionが私のライフワークのように感じ始めています。

7歳の娘がいます。
私の夢は、娘が大学に行く頃にクラスの全員がNotionを使うようになっていることです。
この会社に必要なことは何でもします。
自分に報告する人が何人いるかなんて気にしません。
自分が何に取り組むかも気にしません。
私たちが持っているミッションをとても大切に思っています。
私の目標は、1億ユーザから10億ユーザにどのように到達するかを解明することです。

3つの注力領域

—— 日々の仕事はどんなことをしていますか?

今はプロダクトの業務に集中しています。
プロダクトマネジメントチーム、デザインチーム、リサーチチーム、パートナーシップチームからの報告を受けています。
エンジニアリングパートナーであるFuzzyととても密接に協力しています。
長期的な戦略を考えることにほとんどの時間を割いています。
3つの領域について考えています。

1つ目は、ナレッジです。ドキュメント、Wikiを中心に、AIに関する多くの作業を行なっています。

2つ目は、ワークフローです。データベースからの継続的な作業です。
2018年にデータベースをリリースしましたが、人々がすべてのワークフローを可能にできるように、まだまだできることがあります。

3つ目は、長期的なサービス提供について考えることです。
ここに多くの投資をしています。
学生にも多くの投資をしています。
今年リリースしたカレンダーのような新しいプロダクトにも投資しています。

プロダクトが普遍的になるために何ができるか?
これら3つの領域の土台にはインフラチームがあります。

信頼性の大切さ

Akshay:何度か厳しい時期がありました。
2021年にはNotionは数日間にわたり数時間ダウンしました。

—— 私の人生すべてがNotionにあります。
いつも言っていますが、Notionが無くなったら困ってしまいます。

Akshay:現時点で何百万もの個人や企業がNotionに依存しています。
私たちにとって最も重要なことは、信頼できて安全でパフォーマンスが高いと言えるようにすることです。

—— Notionがダウンしてみんなが不満を言っていたとき、どのように対応しましたか?

Akshay:私たちの長い道のりの中で最も辛い時期でしたが、同時に最も豊かになった時期でもありました。
辛かった理由は、6ヶ月間一時停止することを決めたからです。
新機能を一切作らず、会社全体が信頼性とパフォーマンスを確保することに集中しました。

—— ダウンした原因はなんでしたか?
会社が急成長したため、ペースを維持する必要があったのですか?

Akshay:技術的な詳細には立ち入りませんが、当時のNotionは単一のデータベースに依存していました。
あと数日で完全にダウンしてしまうところでした。
突然多くの新しいユーザが押し寄せてきて、データベースの容量を使い果たそうとしていました。
残り35日ほどで完全な世界の終わりでした。何も機能しなくなります。
そのため、全員でデータベースシャーディングに取り組み、単一のデータベースから数十のデータベースに移行しました。
6ヶ月間は痛みを伴いました。なぜなら新機能を全く出していないからです。
しかし、信頼性と速度が最高の機能であるとわかりました。
信頼性が高くなったことで、利用数は大幅に増えました。

—— 顧客として、プロダクトを気に入っています。
信頼性が高いプロダクトであることを期待しています。
もし新機能があれば驚き嬉しくなりますが、ないからといって怒ることはありません。

Akshay:パラドックスですね。私たちは常に次のものを作りたいと思っています。ときどきこういった状況によって、プロダクトが信頼できて速く動くことが大事だと気づかされます。パフォーマンスは最高の機能です。
そのときの改善による利用数の増加が数字で表れています。

会社の構成

Akshay:会社の40%がインフラに取り組んでいます。
30%が領域1のナレッジに、20%が領域2のワークフローに取り組み、そして10%が長期的なプロジェクトを見ています。
これが大まかなエンジニアリングチームの内訳です。

エンジニアリングチームの内訳

—— セールスについてはどうですか?
外から見ると、アクティブなマーケティングはほとんど行なっていないように見えます。
自然発生的なコミュニティがすべてを行なっているように見えます。

Akshay:大まかに言えば、40%がエンジニアリング、製品設計です。
40%がGo-To-Marketチームで、セールス、マーケティング、サポートが含まれます。
20%が基盤チームで、人事、財務、法務です。

会社全体の内訳

Akshay:私たちはかなりマーケティングを行なっています。
たくさんのプログラムを運営し、コミュニティを支援し、クリエイターを支援しています。
あなたの言うとおり、有料広告はあまり行なっていません。
クリエイターやコミュニティの力を借りる方が効果的であることがわかりました。

ブランドへの投資

Akshay:ブランドには多くの投資をしています。
SaaS企業としてはユニークなことかもしれません。
よくあることはパフォーマンス広告をするだけです。
私たちはブランドに多く投資しています。

—— 新しいキャンペーンをリリースしたばかりですね。今は色がありますね。

新しいキャンペーン

Akshay:色があります。これには9ヶ月かかりました。というのも、私たちはブランドと洗練さをとても大切にしているためです。
新しいキャンペーンでは色だけでなくタグラインもあります。「Think it. Make it.」です。これはとてもNotionらしいものです。アイデアを考え、すぐに作ることができます。
おそらく典型的なSaaS企業よりもはるかに多くブランドに投資しています。

—— 顧客獲得コストにはあまりこだわらず、Notionとは何か、どのように認識されるかに重きを置いているのですね。

Akshay:Notionはポジティブな感情を抱く数少ないソフトウェアの1つだと言われています。
デザイン、ブランド、顧客にとって楽しい体験を作るために注いでいる努力があるからそう言われているのだと思います。

会社のバリュー

—— 成長のもう1つの課題は、会社の文化です。
会社の価値観を8人に伝えることと500人に伝えることは全く異なります。
Notionは全員が足並みを揃えなければならない方法論に従って運営されています。

Akshay:それは継続的なプロセスです。
8人に有効なことは80人には機能せず、80人に有効なことは800人には機能しないので、進化し変化し続けなければなりません。
私たちは多くの失敗もしてきました。コミュニケーションの問題や、間違った人や間違ったリーダーを雇うなどの問題がありました。
おそらく最も役立ったことの1つは、ほぼ1年かけて私たちのバリューを明確に定義したことです。
バリューの明確化を反復のプロセスで行いました。最初のバージョンはそれほどよくありませんでしたが、今では4つのバリューがあります。

4つのバリューはこちらです。
「Owner of my mission(私のミッションの所有者)」
「Kind and direct(親切で直接的)」
「Pace setter(ペースメーカー)」
「Truth seeker(真実の探究者)」
これらはとても私たちらしいものです。
次に雇う人について考える際に、バリューを持っているかどうかという考えが役に立ちます。

—— Notionではバリューが実践的に役立ちます。例えば、意思決定に使用します。

Akshay:「Pace setter」と「Truth seeking」は相反するものです。
真実を探究しているとき、速く進めないことがあります。

—— 待つ必要がありますね。

Akshay:そしてペースを設定しているときは、真実の探究ができません。
私たちはこの両方を選びました。なぜなら状況によっては速く動く必要があるからです。
元に戻せることなら速く動こうと考えています。
スタートアップとして、速く動く必要があるからです。
しかし、元に戻せないこと、例えば東京にオフィスを作るかどうかなどは大きな意思決定です。
そのときは真実を探究すべきです。
料金体系を変更するときはどうか?かなり大きな影響があります。よく考える必要があります。

—— Farnam Streetのメンタルモデルですね。
元に戻せないことはゆっくりと。元に戻せることは非常に速く。

Akshay:そのとおりです。

財務面

—— 会社を大きく成長させるには、通常は多くの借金をして、多くの株式を手放して、キャッシュフローがプラスになるまで何年も待つ必要があります。
しかし、Notionの場合はそうではありませんでした。

Akshay:私が入社したとき、会社はすでにキャッシュフローがプラスでした。そしてそれ以来ほぼずっとキャッシュフローはプラスを維持しています。
シリコンバレーの他の企業と比べて私たちが違ったことの1つは、資金調達の機会がたくさんありましたが、ただできるからという理由での調達はしない、と決めていたことです。
良い理由があるときにのみ調達すると決めました。
そして今ではかなりの資金を調達しています。

—— 3億ドル以上ですね。

Akshay:そうです。
初期の頃は「No」と言いました。なぜならキャッシュフローがプラスで、ビジネスを継続して自己資金で賄えると感じたからです。

初期の頃にキャッシュフローがプラスを維持できた理由の1つは、チームをかなり小規模に保ったからです。
実際、今でも新しい人を雇うことはとても慎重に考えています。
「より良いシステムを構築できるだろうか?今いる人で実現できるだろうか?」と。
世界で最も収益性の高い企業になりたいからではありません。
船を動かすよりもボートを動かす方が簡単だと気づいたからです。
このAIの時代において、機敏でありたいと思っています。
私たちが速く動いてたくさんリリースできる理由は、小さなボートだからです。
700人でもまだ小規模で、素早く方向転換して特定の地点に向かうことができます。
小規模かつ効率的であり続けて、ビジネスが成長し続けて、多額の資金調達をする必要がなかったことが、初期の大きな要因でした。
常に顧客と共に成長しようとしています。

幸運なことに、ここ数年で数回の資金調達ラウンドを行うことができました。
ごくわずかな希薄化で行うことができました。
過去3回のラウンドはすべて会社にとって2〜3%未満の希薄化でした。
私たちは資金を必要としなかったからこそ、それが可能でした。
実際、調達した資金のうち1ドルも使っていません。
それは狙っていたことではなく、幸いビジネスが出費よりも速いペースで成長し続けているだけです。

—— 将来的にNotionは上場しますか?

Akshay:可能性はとても高いと思います。
会社が上場企業になるまで導く経験ができたら素晴らしいことだと思います。
同時に、私たちは急いでいません。
多くの点で、「まだ始まったばかり」という感覚があります。

将来の脅威

—— 将来の脅威についてはどうですか?

Akshay:Notionが直面する最大の脅威はおそらくセキュリティです。
私たちはそれをとても真剣に受け止めています。
Notionのビジネスは信頼の上に成り立っています。
その信頼を築くのに何十年もかかりますが、失うのは一瞬です。
新しいスタートアップが毎日登場するようなとてもダイナミックな領域なので、私たちは他社のプロダクトを試して、常に警戒しています。

AIについてはとても興味深いです。
私たちが非常に速く動いた理由は、誰かがAI搭載のNotionを作るのではないかと不安になったからです。
誰かにやられる前に、私たちはそれを自分たちで行いました。
5人で作業して、1ヶ月でアルファ版を出し、3ヶ月で完全なGA版をリリースしました。
おそらく市場に最も速く出たAIプロダクトの1つです。

—— その動きの速さが、Notionがリーンな会社であることの証拠ですね。

Notion AI責任者 Linus Lee氏へのインタビュー

Linus Lee氏

Notion AIの始まり

—— Notionが導入した最も重要なアップデートの1つはNotion AIでした。
要約やNotion内の情報を見つけるなど、多くの新機能が追加されました。
そこで、AI責任者のLinusに、どのように始まったのかを尋ねました。

Linus:アイデアの種は2022年後半に始まりました。
オフサイトでミーティングを行いました。
その頃CEOのIvanはGPT-4の初期デモを見ていました。
かなり初期のバージョンで、今できることのすべてができるわけではありませんでした。
しかし、Ivanは可能性を感じました。
感情を理解したり分類したりする基本的な自然言語処理タスクだけでなく、指示を聞いてある程度の推論と思考を行うことができました。
そこから、会社としてプロトタイプの作成を開始しました。
AIがNotionの中にあったらどのように見えるだろうか?と。

Linus氏がNotionにジョイン

—— IvanはAIの驚異的な能力に気づき、専門チームを立ち上げてこの領域に投資することを決めました。
数ヶ月後、Linusがチームに加わりました。

Linus:私はNotion AIの取り組みが始まってから数ヶ月後に参画しました。
すでにプロトタイプはありましたが、細かい部分でまだ改良が必要でした。
初期のアイデアは社内ですぐに注目を集め、私たちは改良を重ねてきました。
多くのことが急速に変化しているため、上手く適応する必要がありました。
今日時点で何が可能かを考えるだけでなく、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後のモデルで何ができるようになるかを考え、将来可能になることに備えて構築を始める必要がありました。

一方、昨年の初めに構築しようとしたものの中にはある程度上手くいったものと、全く上手くいかなかったものがありました。
いつ準備できるかを正確に判断できず、一時的に脇に置いておいたものを、最近になって再び取り上げ、上手くいき始めたものもあります。

Notion AIの仕組み

—— 次に、Notion AIの技術的な仕組みについて尋ねました。

Linus:Notion AIの最新バージョンには3つのパーツがあります。

まず、ナレッジです。
私たちはEmbeddingの技術を使い、段落やページ、データベースなどの知識の断片を取得し、それをEmbeddingに変換します。
これは、その段落が大まかに何に関するものかを意味的に数値で表したもので、多くのトピックや文章の断片を、ある質問に対してどれだけ関連性があるかでソートできるようにします。

次に、ナレッジを表すEmbeddingのデータセットができます。

そして、モデルがあります。
モデルは入力と指示を受け取り、何かを検索するか、何かを編集するか、フォローアップの質問をするかを決定できます。

これらのパーツをすべてくっつけるものがあります。内部ではAIエンジンと呼んでいます。
エンジンはAIモデルを呼び出し、すべてのパーツをくっつけるものです。
AIに何かするように頼むと、エンジンがモデルを呼び出し、「これがユーザの指示です。次に取りたいアクションは何ですか?」と尋ねます。

—— その言語モデルは独自のものですか?それとも他の言語モデルを使用していますか?

Linus:私たちは使用する言語モデルの種類について柔軟であろうとしています。
現在はOpenAIとGPT-4が密接に関わっていますが、利用可能なモデルの上に、人々がどのようにNotionを使い、モデルがNotion内で何ができるかをモデルに認識させるために、多くのカスタマイズを行なっています。
そのため、先ほど話したエンジンがモデルを呼び出して、「何をしたいですか?」と尋ねたとき、モデルはNotion内で何ができるかを正確にしっています。

Notion AIの将来像

—— 特に印象的だったのは、まだ存在していないAIモデルの予測を立てなければいけないことでした。
この点について、将来の計画を尋ねました。

Linus:1年後、2年後、5年後には、モデルは現在よりもはるかに優れたものになるでしょう。
そのため、モデルを改善して知能を高めることに多くのエネルギーを費やすのではなく、Notionが独自に持っているもので、モデルと協力して他の誰も作れないような体験を作るにはどうすればよいかを考えています。

2つのことに注力しています。
1つは、あなた独自の情報、あなた自身の情報で働くことができるAIを作ることです。
もう1つは、AIがより複雑なアクションを取ろうとしたり、あなたにAIがより多くのことを任せようとした際に、簡単に使える直感的なインタフェースを構築することです。

—— 1つの可能性として、AIがテンプレートの作成を助けてくれるでしょう。
現在のNotionで最も難しいことの1つです。

Linus:現在でもAIに「こんなパーツとこんなセクションを持つページを作ってほしい」と頼むとかなり上手くやってくれます。
しかし、まだ持っていなくて現在モデルに学習させようとしていることは、本当に良いテンプレートがどのようなものか、という情報です。
単なる見出しとセクションの集まりでいいですか?そんなことはなく、データベースもあれば、セクションもあり、おそらく色やその他の視覚的な情報でどこに何があるかを示す必要があります。
Notion AIに良いテンプレートとはどのようなものか、人々がそれをどのように使うかを理解させなければいけません。
それがNotion AIと一般的なAIツールとの違いになります。

—— 将来、実現されるんですね。

Linus:はい。

—— NotionはAIに対する独自の視点を持っています。
人間を置き換える手段としてではなく、目標に向かって人間を助け、導くツールとして考えています。

Linus:Notionはツールを構築する会社です。
私たちがツールを構築する理由は、私たちはやりたいことはあるけれど十分な時間がない、十分なエネルギーがない、何かをどのように行うべきかを正確に知らないからです。
そこで、人々がやりたいことを拡張し、強化するためのツールを構築するのです。私はAIもツールだと思っています。
AIは根本的には人間がやりたいことを拡張するツールです。
そのため、私たちはNotion AIのことをツールを構築するためのブロックの一種として考えています。
競合他社や業界の他のプレイヤーが考えている"置き換え"ではなく、あなたがやりたいことを拡張したり増強したりするものと考えています。

Notion AIの将来の課題

—— NotionにとってAIの将来の課題は何でしょうか?

Linus:考えている課題の1つは、Notion AIのキラーユースケースを見つけることです。
すでにいくつかのユースケースを知っています。
Q&A機能や質問への回答ができるため、すべてを整理しなくても情報を見つけることができます。
また、人々の文章を修正して改善することも得意です。
それ以外にも、使い始めると本当に素晴らしいものがたくさんあるはずですが、まだ発見していないものもあるでしょう。
私たちはまだすべてのキラーユースケースを見つけ出せてはいません。
キラーユースケースを発見すればするほど、そしてより価値があればあるほど、Notion AIはさらに良いものになるでしょう。

—— ありがとうございました。

Linus:どういたしまして。

EMEAマーケティングマネージャー Yan Petretti氏へのインタビュー

Yan Petretti氏

Yan氏の役割

—— その後、ダブリンオフィスで働いていてヨーロッパで最初の従業員の1人であるYanと話をしました。

Yan:ヨーロッパ、中東、アフリカのスタートアッププログラムマネージャーになれる機会が社内でありました。
パートナーシップを通じてその地域のすべてのスタートアップにNotionを導入しようとしていた。
投資ファンド、インキュベーター、アクセラレーターとのパートナーシップです。
スタートアップに対して無料トライアルを利用してもらうようインセンティブを与え、その後も使い続けてもらえるようにしました。
ボッコーニ大学のインキュベーター、Elev Venturesとはパートナーシップを結んでいます。
イタリアは私たちが力を入れたい市場です。

—— そして今、あなたには新しい役割がありますね。

Yan:そのとおりです。このプログラムはヨーロッパ、中東、アフリカで非常に上手くいき、その結果として他の2つのプログラムを担当するように頼まれました。
学生向けのプログラムで、学生に無料提供する仕組みです。

Yan氏の仕事の日課

—— 仕事の日課はどのようなものですか?

Yan:朝9時に仕事を始め、最初の15〜20分はメールの返信もせずに完全に集中します。
数値を確認して私たちがどのような状況かを見て、その日の優先順位を決めます。
その後、午前中に既存のプログラムと新しいプログラムに取り組みます。
昼食時間はジムで過ごします。
午後はニューヨークが目覚めるとすぐにニューヨークとの通話があります。
5時頃に退社します。
歩いて帰宅し、1時間ほど街を見回ります。ポッドキャストに夢中です。
帰宅後、6〜7時にサンフランシスコと仕事します。

EMEAエリアの将来

—— 将来について、どのような道筋を予想していますか?

Yan:Notionのミッションは、すべての人々が使用する普遍的なプロダクトになることです。
私の目標は、ヨーロッパ、中東、アフリカのすべての学生がNotionを使い、Notionで学生生活を始められるようにすることで、これによりミッションに貢献したいです。
Notionで授業を組み立て、仕事を探し、そして会社に入社するときにはNotionがすでに彼らが選ぶツールになっているようにします。


いかがでしたか。

筆者はこのインタビュー動画を見て、Notion社への理解が一層深まり、ツールとしてのNotionだけでなく中の人のこともさらに好きになりました。
特に、Akshay氏の「この会社に必要なことは何でもします」という姿勢に感銘を受けました。

この日本語訳記事が参考になれば幸いです。

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