理論武装(因果・輪廻・資本主義)

序文

人類は、他の生物の犠牲の上に成り立っています。
食料にするために他の動物の命を奪い、着飾るためにも他の命を奪い、挙げ句の果てには、快・不快だけを尺度にして、命を奪うこともあります。近くで飛んでいるだけの蚊を、無惨にも擦り潰したことはないでしょうか。
あろうことか、生きているだけの虫に対して、「人間の生活圏に出現しないでほしい。」という感情を抱いたりしていないでしょうか。
地球は人間のものですか?
なぜ一時の感情の起伏で、命を奪うのでしょうか。
そこを論ずるためにはまず、人類の歴史を追う必要があります。

人類の歴史

人類はどのように進化してきたのか、いかに地球の支配権を奪い、それが当たり前かのような顔をしてきたのか。
ここではキリスト教的な人類の成り立ち(神の似姿として、突然変異的に人が誕生したという考え方)ではなく、ダーウィンの進化論を基にした人類の成り立ちを参照して話を進めます。
元々、人類はチンパンジーだったわけです。そこから派生して、知恵をつけていって、背骨が直線的になっていって、今の人類がいる。
この進化の枝分かれの中で、「人類になれなかった種」もいるということは想像に難くないと思いますが、結論から言うと、「今人類になっている種」はこの「人類になれなかった種」を意図的に滅したからこそ、「人類になれて」いるのだと思います。

なぜ滅ぼさなければいけなかったのか。主導権を得るためです。
別の種族がいればいるほど、統率を取るのは難しくなるからです。

ではこの「今人類になっている種」と「人類になれなかった種」は何が決定的に違ったのか。それこそが「欲求の多さ」にあると考えています。
地球を独占したい種と、別にどちらでもいい種、地球レベルで考えると具体性がなくなるかもしれませんが、要は小さなコミュニティで「声が大きい人」と「声が小さい人」がいた場合、声が大きい人の意見ばっかり通って、小さい人は淘汰されていくでしょ、という話です。

つまり、人類はそもそも先祖から凶暴性を秘めていて、我々の生は数えきれないほどの「人類になれなかった種」の上で成り立っているということです。
生活が数えきれないほどの他の動物の命の上で成り立っていることも、地球を独占したいという欲求から来る「驕り」のようなものが大きく関わっています。

人類は他の動物よりも「発展した文明」を築いてきたと言われますが、これはただただ他の動物よりも欲求が強いからです。
本来すべての生命に課せられている使命は、次の世代へバトンを繋ぐための行動をしてそのまま死んでいく、というだけなのですが、人類は欲に塗れているので、それを良しとしていません。
ただ日々生きて、食べて、呼吸して、機械的な繁殖をして…
人類は、それではいけない!と判断したわけですね。
人類は卑しくも、より良く、より快適に生きていこうとしている種族なのです。

この「より良く生きて」いく過程で文明は発展していきます。
一方で、この欲求にはマイナスの効果があります。それが、戦争です。

欲求のための戦争⇨因果

先ほどの、人類が「人類になれなかった種」を淘汰していった、という話にも繋がりますが、人類は自分たちの欲求のために、他者と平気で争います。
これは勿論、生活の向上のためだけの、何か表面的な欲求だけでなく、同じ異性を手に入れるために争ったりという、原始的な欲求のためにも戦争は起こります。

僕はこの、欲求のために争いが起こってしまうことを「因果」と呼んでいます。
また、争いが起こってしまうほどの強い欲求自体も「因果」と呼べてしまうかもしれません。

人間はこの因果に囚われてしまっているわけです。
因果に最大限囚われて、結果として子孫を残してしまうわけですが、その子孫を因果に囚われることは決定しているわけです。
このある種の諦念を、「輪廻」と名付けます。

つまり、人類は因果の輪廻の中で、それでも最大限自分らしく生きようとする、どうしようもない生命体なわけですね。
この因果の輪廻からある程度距離を置いて生活することは可能ですが、完全に解き放たれることはできません。何故ならそれが我々の祖先、最初に「他の種族を排斥する」という欲求に囚われてしまった種族の罪であるからです。
そんな祖先の血を引いてしまっている以上、人類が因果の輪廻から脱却することは不可能です。

ちなみに、性欲のために争いが起こってしまう因果は、ジェンダーロール云々みたいな話に繋がってくる部分もあるんですが、その話もいずれnoteに書きます。しっかりやります。

因果の輪廻からの脱却

さて、前段落で「因果からある程度距離を置いて生活することは可能」という話をしましたが、どのようにしたら距離を置けるのでしょうか。
結論として言うと、「社会通念としてある物差し以外の尺度で、自分を見る」という方法です。

欲求というのは、資本主義のもとで生まれる部分がほとんどです。
収入、学歴、娯楽のスコアでさえ、数値化されてしまう世の中が悪いというのは、言うまでもありません。
数字を明文化して使用するのは人類だけということを考えると、数字という概念自体、人類の欲求が生み出したものなのかもしれません。

なんでもかんでも数値化されてしまう以上、嫌でも自分の数値と他の人の数値と比べてしまいますし、自分で比べなくても第三者から勝手に比べられたりもします。
人類の根底には欲求がありますから、無防備な状態で数値の優劣を突きつけられてしまうと、何糞とより高い数値を目指して争ってしまうわけです。

ここで、「自分はこれがあるから大丈夫」という、確固たる自己、ブレない芯が心の中にあれば、数値がどうなったところで関係ない、というスタンスを取れるわけですね。これが「自分だけの尺度で自分を見る」という防衛手段です。

数値の争い(資本主義的な争い)に疲れてしまって、ここから距離を置こうとする人たちの大半が「心の芯」としての役割を担わせてしまっているものがあります。
そう、宗教です。

一見、宗教は資本主義的な争いから逃れるための万能な手段のように思えますが、ここでひとつ大きな落とし穴があります。
この世に存在する宗教が1つではない、という点ですね。

極論、宗教が1つしかなくて、全ての人が同じものを信仰対象として見ていた場合、争いは限りなくゼロになると思います。
(それでもゼロにはなりません。「信仰対象からの寵愛度」は数値化されてしまうからです。)
しかし、宗教は沢山ある。
その全ての信者が、自分の宗教が一番だと思っているでしょう。
なのに宗教を語る上では、信者の数や歴史の長さなど、数値化できてしまう要素が山ほどあります。ここの優劣を覆すために、また争いが起こってしまうわけです。

つまり、どのような手段を取っても、欲求を完全にゼロにすることはできない、ということですね。
(ここでは感情論とかは無視します。)
欲求をゼロにできない以上、どこかで因果に囚われ、輪廻の一部になってしまいます。

ただ、唯一「因果」から脱却して、欲求をゼロにする手段はあります。
あまりにも残念な話ですが、その唯一の方法が「死」なのです。

ここで大きく注釈を入れておかなければならないのが、私は「死は救済」とは思っていませんし、死ぬこと自体を推奨しているわけでは断じてありません。
事実として、逃れる方法は「死」だということを述べているだけです。

死は救済ではない

大事なことなのでしっかりと説明しますが、死は救済ではありません。
あまりにも乱暴な言い方にはなりますが、死は「逃げ」です。

ただ、自ら命を絶ってしまう人のことを「逃げ」だと批判しているわけではありません。一番悪いのは、死という究極の逃げを選ばないと、因果の輪廻から抜けられない社会構造そのものだからです。

例えば、悲しいですが、この社会には仕事が辛くて命を絶ってしまう人が沢山います。
その人に対しての意見として、「会社を辞めればよかったのに」ということを言う人が一定数いますが、これは因果を根底に成り立っている社会を無視した意見だと、私は思います。
命を絶つよりも会社を辞めた方がいい、というのは勿論なのですが、会社を辞めたからといって、数値化による競争を強いてくるという社会の暴力からは逃れられないのです。
次の仕事はどうだとか、生活をどうしていくだとか、周りの人はまだ辞めていないのにだとか、そういったことが自分ないし周囲から提言されることで、競争に身を置かざるをえない状況になってしまうのです。

じゃあどうすればいいんだという話ですが、会社を辞めるのは大前提として、一定期間何も関係のないことに触れ続ければ良い、と思っています。

家族を含む他者に、会社を辞めたことを言ってしまうと、必ずといっていいほど周りと比較した時の自分の状況とか、資本主義的な物差しを持ち出されてしまうので、よっぽど信頼してる人相手でない限り、報告自体が悪手になる可能性が高いです。

一旦会社を辞めて、誰にも報告せず、ただただ寝続けたり、好きな物を眺めたりして、心を落ち着かせましょう。
そうしてじっくりと因果から離れていくことで、いずれ心の黒い部分が小さくなっていくと思うのですが、いかがでしょうか。

結論

相当脱線してしまったので結論です。
何が言いたかったのかというと、人類は欲求に塗れた生き物であり、そのおかげで、これだけの文明を築いてきました。
しかし、その欲求がゆえに人は他の種族を攻撃し、自分たちの間でも争いごとを繰り返しています。

現状、競争社会から完全に自分を切り離して生活することは不可能です。
競争ばかりでは疲弊してしまうので、どこかに自分だけの判断基準、確固たる自己を持つことが、人類社会を生き抜く上で必要不可欠なのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?