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【法律】親の監督責任を理解するための外せないポイント(2)(暫定版)

■今回の事件現場

前回の記事で,事件の詳細な事実関係を前提にする必要があると言いました。と言う訳で,まず,今回の事件現場の状況を簡単に説明します。

大阪高裁及び最高裁の判決文によれば,今回の事件現場は以下のような状況だったようです。驚くほど非常に拙い図を利用している点はご容赦ください(私は美術の成績で「1」をとったことがあります)。

結論から言えば,今回の事件は,かなり偶発的な出来事だったと考えられます。

【追記】読売新聞にプロが作成された分かりやすい図が掲載されていました……。そちらを御覧いただいた方が分かりやすいと思います。私の作業時間を返せ……。

小6蹴ったボールよけ死亡、両親の監督責任なし : 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150409-OYT1T50063.html?from=tw


●本件小学校は,放課後,児童らに対して校庭を開放していた。

●本件校庭の南端近くには,ゴールネットが張られたサッカーゴールが設置されていた。

●本件ゴールの後方約10mの場所には門扉の高さ約1.3mの南門があり,その左右には本件校庭の南端に沿って高さ約1.2mのネットフェンスが設置されていた。

●本件校庭の南側には幅約1.8mの側溝を隔てて道路があり,南門と本件道路との間には橋が架けられていた。本件小学校の周辺には田畑も存在し,本件道路の交通量は少なかった。


最高裁の判決文によれば,今回の事件は,このような場所において,以下のような状況で発生したと認定されています(一部,文言を修正しています)。

「子供が,同日午後5時16分頃,本件ゴールに向かってボールを蹴ったところ,そのボールは,本件校庭から南門の門扉の上を越えて橋の上を転がり,本件道路上に出た。折から自動二輪車を運転して本件道路を西方向に進行してきた高齢者(大正7年3月生まれ)は,そのボールを避けようとして転倒した」

つまり,今回の事件現場では,子供が蹴ったボールが道路に飛び出していくことは,少なくとも「よくあること」ではありませんでした。

「本件ゴールにはゴールネットが張られ,その後方約10mの場所には本件校庭の南端に沿って南門及びネットフェンスが設置され,これらと本件道路との間には幅約1.8mの側溝があったのであり,本件ゴールに向けてボールを蹴ったとしても,ボールが本件道路上に出ることが常態であったものとはみられない。」


最高裁は,このような現場の状況を踏まえて,民法714条に基づくご両親の責任を否定しました。

つまり,第1に,本件現場は,ボールが本件道路上に出ることが頻発するような場所ではなかった(構造的に危険な現場ではなかった)。

第2に,本件現場は,子供達のために解放されていた学校の校庭であり,そこに使用可能な状態で設置されていたサッカーゴールに向けてフリーキックの練習をすることは,通常の行為である(子供の行為は,通常の使用方法に従ったものであり,異常ではない)。

第3に,今回の事故は,子供がサッカーゴールに向けてサッカーボールを蹴ったことによって発生したものであって,子供が殊更に道路に向けてボールを蹴ったなどの事情もない(子供に故意や害意があったわけではない)。


要するに,「本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,上記各事実に照らすと,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない」と最高裁は判断しました。これが,今回の判決の大前提です

更に,最高裁の判決文によれば,子供のご両親は「危険な行為に及ばないよう日頃から子供に通常のしつけをしていた」と認定されています。


前回の記事でも言いましたが,今回の判決は事例判例です。

最高裁は,上記のような事実関係を前提にした上で,ご両親の責任はないという判断を下しました。あくまで,これらの事実が前提になっています。


ところで,そもそも,親の監督責任って何のためにあるんでしょうか? どんな場合に免責されるんでしょうか?

そもそも,民法714条は何の為にあるのでしょうか。


つづく……?

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