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航空イノベーションアカデミー【特別編】


”1枚のスケッチから、全ては始まった。”

今回は、航空イノベーションアカデミー[特別編]のレポートだ。元々の予定には入っていなかったものの、今回特別にスペシャルなゲストの登壇となった。
今回の講演者はHonda Aircraft Company 社長の藤野様。
HondaJetの開発を成功させ、FAA(アメリカ連邦航空局)から型式証明を取得し、当初は予定になかった事業化まで漕ぎ着けたプロジェクトのリーダーであり、主人公である。

講演は、そもそもビジネスジェットとは?というところから始まった。
ビジネスジェットにもサイズや性能、航続距離など用途に応じてさまざまな種類があるが、初めて知ったのは、旅客機よりも高い高度を飛行するという点だ。
飛行高度は概ね12,500~15,545フィートで、乱気流の影響が少なく、かつ旅客機とも干渉しない空域なのだという。(だからこそ、速くて快適!)

それから話は、この日の本題、ホンダジェット開発秘話へと進んでいく。
HONDAが航空業界に参入して行ったきっかけ、時代の背景、需要など・・・。
藤野さんがホンダジェットを開発しようと試みるきっかけとなった1枚のスケッチには、その時点ですでに最新技術の構想が盛り込まれていた。

あくまでも”研究開発”として進んだ機体の開発。
新しいコンセプトでビジネスジェットを開発したい、そんな思いから少数精鋭のチームで世界最高クラスの設備を用いて試験、技術開発を進めていったという。

当初は事業化の見込みはなく、HONDAの経営陣もあくまで研究開発として予算をとっていた。しかし、コンセプト実証機の初飛行、アメリカでの展示会での参加者からのリアクションと事業化を望む声、そんなことが重なり、ついに事業化が決まった。そうして2006年にHonda Aircraft Company設立に至る。

事業化の目処がたった2006年、ドラマはここからだった。
事業化を進めるにあたっては、アメリカ市場をメインに考えていたため、FAAからの型式証明を取得しなければならない。
あらゆる想定においてかかる荷重をシミュレーションで出して調整してテストするため、3000時間を超える試験が必要となった。その過程では、技術的な面で厳しい追求を受けたり、FAAの審査官とうまく譲歩・調整をしたりしなければならない場面も多くあった。

それを乗り越えたのは、藤野さんが若手時代にアメリカで積み上げてきた経験と感覚と、人脈の広さだった。

2015年12月8日。
ついに、ホンダジェットがFAAから型式証明を取得する。
研究開発時代から注目されていた機体とあって、型式証明取得のイベントでは、会場にFAAの長官が来場し、直接証明書を渡すセレモニーが行われるなど、異例の盛り上がりを見せた。

このホンダジェットの成功体験から、航空イノベーションに必要なものとはなにか、技術的なイノベーションだけではなく、組織を動かす、思いを形にする、そういった面からも大変勉強になった。少数精鋭で始めたころは、開発に向けたビジョンの共有も簡単だった。しかし、組織が拡大しステークホルダーが増えてくると、ビジョンの共有や組織マネジメントも一筋縄ではいかなくなる。そこをどう乗り越えたのか、そんな話も藤野さんにしかできない視点でお話をいただくことができた。


講演会当日は、ホンダジェットの機能や行ってきた実証試験の映像も含めて、ここには書ききれないくらい深い話がたくさんあった。藤野さんは講演後の質問や参加者との交流の時間にも非常に丁寧に対応してくださっていたのが印象的だった。

帰宅後、気になってホンダジェットについて調べていたら、こんな記事を見つけた。

HONDAの挑戦はこれからも続くようだ。

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