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Oil、SCRAP

「3ヶ月は歌わないで下さい。食事制限も設けます。」



乗った事のないバスをいくつか乗り継いだ先にある
大学病院で先生にそう言われた4月。

僕は青ざめた。


4月からは色々やってやろうって思ってた。


何が何かわからなくなるまで全力で打ち込むつもりだった。

でも僕の喉は思ったより状態が悪くて僕は僕の全てである音楽から一時的に離れないといけなくなった。



ひどく不安だった。怖い。休む事は本当に怖い。
何もしない事は恐ろしい。血反吐を吐いて頑張る方が何倍もマシだ。そう思った。



そんな時だった。



彼女が僕の所から去ったのは。


でもあまり悲しいとも思わなかった。
誰かがどっかで言ってた、

「自分が本当に辛いときにそばにいてくれない人と一緒にいるべきじゃない」

って言葉を思い出したし、

なによりそんな事に気を使ってる余裕がその時の僕にはなかった。

だからさっさと忘れる事にした。
カーテンを閉め切って僕は深呼吸をする。


その時くらいからだったか、、


悲しいとか辛いとか。
眠たいとかお腹が空いたとか、

いろんな事に鈍感になった。


ただ喉だけは焼けるように痛かったから痛み止めをたくさん飲んだ。
そして痛み止めが効いてる間はなるべく曲を作った。



その日は起きてからずっと地下のスタジオにいた。
二曲作り終えて眠るためにベッドに入った。そのうちの1曲はナントカ流星群だったと思う。
それでも眠れなくてそのまままた地下室に降りてもう1
曲作った。


そんな時だったと思う。


僕の口から突然、

“本当はちょっと胸が痛いけどとりあえず大丈夫
「ずっと一緒がいい」って
君が言ってたよねけどまあ大丈夫”

揺れる揺れる日煙吐く弱音
バカだねまだ夢がある…


「とりあえず注ぎ切るオイル…」


Oilが出来たのは朝が白み切った後の朝7時頃だった。
カーテンを閉め切って寝てない僕には長い夜の延長のようだった。
体はとうに限界でこの曲を歌い終えた僕はそのままうしろのソファに倒れ込んだ。


この曲を聴きながら眠りにつく。

自分の口からごく自然に出てきた歌詞の一つ一つを噛み締める。

その言葉は錆びついた鉄のような味がした。
触れるだけで手が汚れてしまう赤茶色の鉄。
僕の手や服をひどく汚してしまう。


そして同時に僕は自分の中の色んな部分が壊れてしまってるんだと知った。


無意識に放った言葉が、Oilを通じて僕にそう言う



それが何かを知りたい。


どうして壊れてしまったのかいつ壊れてしまったのか
知りたい。

壊れた部分を直すために立ち止まった。



だから僕は小さな曲を沢山作ってみる事にした。



ツアーまでにはEPとしてまとめて出す。

タイトルは「SCRAP」










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