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THE TELESCOPEまでの日々3


始発列車を書いた日の事。

その日は朝起きた時から変な感じがしてた。
時間が凄く早く流れている感じがして、
"何か"に急いでいた。"何か"が分からなくてとにかく理由もなくひどく焦っていた。

ソワソワするから部屋着のまま自転車に乗って外に出た。

昨日まですごく僕の心とフィットしていたはずのバンドのアルバムもその日は何故か全然好きになれない。
だから昔聞いていた曲を聞いた。
J coleのmixtapeとか、Mac millerのアルバムとか。
一通り聞いてからEminemの "The Marshall Mathers LP2"っていうアルバムを聞いた。

このアルバムがリリースされた時の事をよく覚えている。俺は高校生でこのアルバムを狂ったように聞いた。

実は僕はEminemにすごく憧れながら、彼の事をずるいと思っていた事があった。

アメリカに生まれたEminemがラップを始めた頃、Hiphopはまだ黒人文化としての一面が強く、メジャーなものとはいえなかった。

Eminemは1人目の白人系ラッパーとして時代を切り開いた。(他にも勿論ヒットを生んだ白人ラッパーいたが)

でもそもそもその時代に白人として生まれてないとそれにはなれなかっんじゃないかと、当時はEminemに強く憧れたと同時に強く嫉妬したのを覚えている。

「俺も何かの"1人目"になりたい。1番前に立ちたい」


そう高校生の時は思っていた。



そう思っていた事を、自転車に乗りながらアルバムを聞いていて思い出した。


最近は特にHiphopや、Rock、Popsと言ったジャンルをほとんど意識していない。
自分が今の僕が持つこの雰囲気や、らしさを
誰もよりも開拓して先頭に立ちたいと思っている。

でも問題は多い。かなり多い。
やりたい事に前例があれば良かったんだけど、僕が作りたい未来に前例はない。

僕自身何をしたらいいかあんまり分かってないんだ。
出来ることがあまりにも少ない。
曲を作って、リリースして、ライブして。
みんなに曲を聞いてもらって。

事務所にも入らず自分でやってるからみんなにはすごいすごいと言われるが僕はそうは思っていない。

俺が切り開かないと何も始まらない事が分かってるし。俺が決めた事だからだ。

俺が狙ってるイスは誰も座ってないどころか、
そのイスの存在自体がシーンにはない。
歌も下手だし、ギターもまだまだだけどおれはやらなきゃらならない。


後半に入ったアルバム。Eminemが耳元で赤裸々に言葉をラップする。
俺は自転車を置いて小さな川の横、なんでもない場所に寝転ぶ。


Eminemが言う。
「前作と俺を比べるな」
「期待してるとかしらねえクソだ」

Eminemはずっと戦っていた。
当時俺が15歳だからこれは約9年前。
この時よりさらに前からそして今もずっと。


ずっと自分と、"誰かにさらさらた自分"と戦っている。
時に向き合い、時に拒絶し、時にぶちのめす。

10年も20年もEminemは戦っている。


息が苦しくなる。
時間が早く流れて、今自転車を猛スピードで漕がないと死んでしまう気がする。


俺は帰って曲を作った。


その日は映画に行く約束だったんだけど、約束の時間になっても俺は動けなかった。
後の流れは曲の通り。


俺は朝日が差し込む始発のモノレールに乗ってdemoバージョンの始発列車を聞きながら
昨日から倍速で動きっぱなしだった時計をそっと止めた。












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