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なぜコロナ禍でもLEXUS売上絶好調だったのか?公認会計士がその理由を教えます!

今回は、トヨタやレクサスの業績が絶好調である理由と、ここに潜む大きな問題点について解説します。実は、中小企業の経営者にとってとても大きな問題で、他人事ではない可能性がありますのでぜひ最後までコラムをお読みください。

トヨタの過去最高利益にはコロナ融資が関係している

まず、実際にトヨタがどういう状況だったのかを説明しましょう。

トヨタ自動車は2022年3月期通期連結業績(2021年4月1日~2022年3月31日)は、営業収益31兆3795億円、営業利益2兆9956億円と増収増益。コロナ禍前に遡っても、過去最高の営業収益、営業利益となりました。

コロナ禍で外出が減っている、若い人の車離れなどの話や、環境問題に配慮した電気自動車も出てきた、自動運転も現実味を帯びてきた……などの状況を踏まえると、皆さんの感覚的には「あまり良くない」「この先も厳しい」と考えているのではないかと思います。

しかし実際は、2022年トヨタはなんと過去最高利益を叩き出しています。皆さんはこれを見てどう思うでしょうか。

「え、なぜ?」「円安だからかな」ぐらいしか思いつかないのではないでしょうか。確かに円安の影響もありますが、国内需要が絶好調です。特にレクサスなどがとても伸びています。この国内需要の理由の一つには、経営者が会社の資金でレクサスやベンツなどの高級車を買っている、という背景があります。

コロナ融資などの利息や返済が当面かからない融資を、使う目的もないのにとりあえず借りるだけ借り、レクサスなど普段買わないような高級車を購入しているのです。税金対策として高級車を買えば、その分で一定程度の減価償却ができますから、税金も減らせるという意図もあります。

このような高級車の購入は、数字がわかっている社長であれば、100%絶対にやらないでしょう。そうではなく税金を払えばお金は残ります。無駄なお金を使う必要はありません。

しかし、政府が実施したコロナ融資は、経営者の知識不足により無駄遣いをされ、中小企業支援など本来使うべきところに届いていないのが現状です。

「税金を払うこと=悪いこと」?

以前「BS」貸借対照表について説明しましたが、もう1回おさらいしましょう。左側は資産の部、右側は負債の部と純資産の部です。

借金はいずれ返すものです。もし必要以上にお金を借りたとしても、「使い道がないので、とりあえず危ないから現金のまま手元に置いてます」という会社であれば、これをそのまま返済に充てれば会社は回ると思います。

しかし、コロナ融資で借金をして入ってきたお金がどんな形に置き換わってるかというと、高級車になっています。高級車に置き換えてしまったら、どうやって借金を返すのでしょうか?

これは以前にも話しましたが、借金で豪遊するのはいいことでしょうか、悪いことでしょうか。家庭に置き換えて考えていただくと、例えば「奥さんが消費者金融でお金を借りてきて、500万円の美顔器を買ってきた」という話しを聞いたら、否定的な意見を持つのではないでしょうか。

儲かっていてお金に余裕がある状態でしたらかまいませんが、借金でやることではありません。会社の資金も同じことです。なぜ借金で無駄遣いをするんですか?という話ですね。

もう1つ、「PL」損益計算書について説明します。
PLを単純化すると、売上があり、費用が下がる。その差額に残ったものが、最終的な利益です。例えば、売上が100出て、そこに税金が30%かかったとしましょう。税金が30%かかり、売上の70%が残る。この70%が、税金を払った後に残った最終的な利益=自己資本として積み上がり、借金の返済にも充てられます。

しかし、世間の常識的には、税金を払うこと=悪いことのように捉えられています。

現金を減らして得することがあるのでしょうか?税金を払っても何のリターンもないし、無駄だから払いたくないと思うのはわかります。しかし、税金を減らして得することは何一つありません。残るお金がもっと減るだけです。

売上を100、税金を30%払い、最終的な利益が70%残る。この100の売上をキャバクラに行って使えば、税金は0%ですが、残るお金も0円になってしまいます。最終的な利益=自己資本が1円も入ってこないので借金を返せないという状況になるのです。

それぐらい恐ろしいことなんですが、なぜか税金を減らすことに頑張る会社が多くあります。そして、「どうにかして今年も対策が間に合った」「どうにか税金0でいけた」というやりとりをしているのです。

重要なのは「税金を払わない」ではなく、「利益を出す」こと

しかし、重要なのは税額ではなく、残るお金ではないでしょうか。税額が1,000万円と1億円という、単なる税額だけの比較はできません。

1億円税金払うということは、おそらく2億円ぐらいは利益として残るはずなので、お金は2億円増えるわけです。税額が高くても、その方が良いのではないでしょうか。

毎年毎年税金が0円なら、いつまでたっても自己資本が増えずに、他人資本、いわゆる借金だらけという状態です。自己資本が5%しかなく、他人資本が95%という状態のままで利益を積み上げなければ、一生借金だらけのままです。

他人資本とはいずれは出て行くお金なので、会社が持ってる資産の95%はいずれ払わなければいけないお金です。その状態で、資金繰りが楽になるはずはありません。

なぜ利益を出さないんでしょうか?利益を積み上げないとお金が貯まらないのに、税金を払わないためにずっと貧乏でいるのでしょうか。社長は「税金を払わない人になりたい」「お金持ちになりたい」の二択のどちらでしょうか。

お金はあった方がいいと思います。税額をたくさん払ったとしても、手元に残るお金がたくさんあった方が、楽しいことも投資のビジネス投資も、やりたいことができるようになります。お金がたくさんあることによって、救える人も増えるわけです。その方がいいのではないでしょうか。

会社を強くして、その上で贅沢をしましょう

利益が出ていなければ誰も救えず、社会貢献もできません。日本の会社はこういった社会貢献などの側面に弱い傾向にありますが、今は、結構若い人もこういう部分をとても見ています。

昨今、SDGsの取り組みが浸透してきています。若い人はこういう部分に注目していて、どの会社から物を買うかを考えた時に「環境に配慮しているか」などを見ています。

それをしようと思ったら、お金を稼がないと対応ができなくなるわけです。生き残っていくためにはお金が必要なのです。節税や貧乏になってる場合ではありません。

たくさん稼いで儲かってあふれたお金で贅沢したり、役員報酬をたくさん増やして自分のお金を増やす分には、何の文句もありません。役員報酬は費用に入ります。これを払っても会社に残るお金が増えるぐらい利益が出ているのであれば、役員報酬を増やしてもいいわけです。

しかし、自己資本率が低くて借金だらけという会社や、新規の融資がストップしたら倒産してしまう状態の会社が多くあります。そのような状態なのに借金をして無駄遣いをするのは正気の沙汰じゃありません。

会社を強くして、その上で贅沢したいならしましょう。しかし借金ですることではないですよね、ということです。会社が大丈夫なのかというのは、一度きちんと見直した方がいいと思います。

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