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エクイティディストリビューションとシンプルGTO戦略

この記事では、よく耳にはするけれど分かっていそうでよく分からない
『エクイティディストリビューション(分布)』とバケツ化を使った簡略化されたシンプルなGTO戦略の構築方法の関係について解説します。
少し難しいかもしれませんがお役に立てれば幸いです。

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はじめに

GTOxソルバーの第2レベル(中間解析)では、同じくらいの強さを持つハンドをグループ化(バケツ化)し、そのグループ全体で使えるシンプルなGTO戦略を構築することで、人間が活用できる水準までGTO戦略を簡略化することを目的としています。

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マクロ解析

この中間解析のコツを説明する前に、第1レベルであるマクロ解析について簡単に説明します。
マクロ解析では、GTO戦略の3要素であるポジション、レンジアドバンテージ、SPRを考慮して、レンジ全体の傾向を評価します。

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最もシンプルな戦略は、レンジ内のすべてのハンドに対して1つの包括的な戦略を使用するものです。残念ながら、そのような戦略は、ごく限られたシナリオ、例えば、インポジションでフロップでレンジ全体で強いレンジアドバンテージを持っている場合や、アウトオブポジションで相手が直前のストリートでベットした場合などの極めて限定的な状況でしか採用できません。ほとんどの状況では、レンジ全体で同じアクションを採用すると、大きなEVロスが生じてしまいます。
通常は、レンジを細かく分割し、いくつかのグループに分けて(バケツ化)、それぞれのバケツに対して異なる最適戦略を構築する必要があります。

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バケツ化によるGTO戦略の簡略化

ポーカーAIでは、10年以上前からハンドの強さに基づいたバケツを利用してきました。その理由は、同じような強さのハンドは、同じようにプレイすべき共通のインセンティブ(注:コールしてもらってバリューを取りたい、ブラフで降ろしたい等)を持っていることが多いからです。また、ハンドが共通のインセンティブを持っている場合、大きくEVを失うことなく同じアクションを採用できることも多いです。

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ポーカープレイヤーは、意識するしないに関わらず、何らかの形でバケッティング(バケツ化)を活用しています。そして、GTOxは、ユーザーが体系的で、カスタマイズ可能かつ定量的な方法でハンドのバケツ化を行うことができる初めてのシステムとなっています。

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バケツ化の2つのステップ

バケツ化を効果的に活用するためには、次の2つのステップを踏む必要があります。
まず、自分のハンドがどのバケツに入るかを評価します。この評価は、自分のハンドが相手のエクイティ分布の中でどの位置にあるかを評価するものです。
次に、指定されたハンドクラスのインセンティブに基づいて、相手のレンジ内でこちらのEVを最大化すると思われるアクションを選択します。

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これらのプロセスは、2つの意味で解析を大幅に簡素化します。
一つ目は、レンジ全体のバランスを考え、レンジ内のハンドが持ちうるすべてのインセンティブを考慮するのではなく、

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そのハンドクラスに適用される特定のインセンティブのみに注意を払い、同じバケツ内にプラスのインセンティブに従ってプレイできる十分な数のコンボがあることを確認するだけで、バランスを取ることができるようになります。

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次に、そのハンドクラスに適用されるインセンティブを特定した後、EVを最大化するアクションを探るために相手のレンジ全体を検討するのではなく、相手のレンジの中からこちらに有利なインセンティブに関連する部分だけを選んでターゲットにすることができます。
なぜなら、共通のインセンティブを持つハンドは、相手のレンジの同じような領域からEVを引き出す傾向があるからです。

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エクイティディストリビューション(EQ分布)

中間分析の最初のステップは、対戦相手のエクイティ分布に対して自分のハンドがどの位置にあるかを評価することです。

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エクイティ分布とはあるスポットでプレイヤーが持つ可能性のあるすべてのハンドの分布のことで、エクイティ分布を縦のスペクトルとして視覚化するものです。スペクトルの下部は、相手が持つ可能性のある最弱のハンドを表し、スペクトルの上部は、相手が持つ可能性のある最強のハンドを表します。

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こちらのハンドがどのクラスに属するかを定義しようとする目的は、このスペクトルに対してこちらのハンドがどのような位置にあるかを正確に評価することです。もしこちらのハンドが相手のレンジ内のハンドのほとんどを上回っていれば、こちらのハンドがナッツクラスである可能性が高いです。この評価を簡単に行う方法としては、相手が持つ可能性があるコンボのなかで最も強いハンドから、順に自分のハンドの強さに到達するまで数えていくことです。それまでの間に存在するハンド(コンボ数)が少なければ少ないほど、こちらのハンドはナッツクラスである可能性が高いと言えます。

エクイティ分布の活用方法

6マックス100bb持ちで、ボタンが2.2倍をオープンし、BBがコールし、フロップはQJ8のハンドを例に見てみましょう。ボタンが88のボトムセットを持っていたと仮定します。このハンドは、BBのエクイティ分布のどこに位置するのでしょう?

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まず、ボタンのエクイティ分布を評価します。上から下に向かって、ボトムセットに到達するまでの数えます。このグラフは、実戦で評価をする能力を鍛えるのに役立ちます。このグラフは、両プレイヤーのレンジ内にある各ハンドを、Y軸上のエクイティでプロットしたものです。X軸には、そのようなハンドがレンジを構成する割合がプロットされています。そして、これらのハンドをマウスで選択して、ダッシュボードの中でフィルタリングすることができます。

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例えば、この画面で、BBのハンドのうちエクイティが70%以上あるものの割合を確認したい場合は、グラフのY軸を70以上にします。エクイティが70%のハンドは、BBのレンジの上位85%程度を占めていることがわかります。

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一方、エクイティ70%のハンドは、ボタンのハンドレンジの上位65%程度を占めています。つまり、ボタンの上位のレンジは圧倒的に強いということです。

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その理由は、ヒートマップを見るとわかります。ヒートマップでは、エクイティ70%以上のハンドだけを表示するようにフィルターをかけています。

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もし、BBの下位50%以下のレンジにどのようなエクイティのハンドがあるのかを見たい場合は、X軸の50%以下の部分を見れば分かります。BBで下位50%のハンドは、エクイティが約10%から40%であることがわかります。

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一方、ボタンの下位50%のハンドは、約10%から約60%の範囲のエクイティを持っています。

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つまり、全体的にボタンのレンジの方が強く、ボタンが全体的にエクイティとEVのアドバンテージを持っています。このことが、ボタンがこのフロップでかなりの頻度でCBetをしている理由となります。

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では、ボタンの88がどのような状況にあるのかを見るために、ヒートマップで88をクリックして、それを分離してみましょう。↓の図では、88が、ボタンのエクイティ分布でフィルタリングされた唯一のハンドになっています。

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チャートの下にあるズームバーを使って、この領域を拡大することができます。そして、分布図の上方を選択すると、BBのレンジでボタンの88よりも高いエクイティを持つハンドを特定することができます。(この場合はT9だけです。)

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エクイティはハンド対ハンドではなく、ハンド対レンジで決まることを念頭に置く必要があります。そのため、レンジが非対称の場合は、結果が少し歪むことがあります。しかし、このデータはほとんどのシナリオで役に立ちます。今回のケースでは、BBは少なくともT9のストレートを持っている可能性があります。
また、QQやJJを持っていた場合にはボタンに勝っている可能性がありますが、ほとんどのプレイヤーはプリフロップで3ベットするはずなので、このようなハンドの可能性はかなり低いと思われます。つまり、88はストレートには負けていますが、BBのエクイティ分布の残りの部分のすべてに勝っていることになり、ナッツハンドに分類されることになります。

ミドルハンド

次のクラスは、相手のレンジのほとんどに勝っていて、一方である程度のハンドには負けているようなミドルハンドです。

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例えば、88の代わりにQ♦︎6♦︎を持っていたとします。このハンドは、BBのレンジにある弱いハンドの大部分には勝っていますが、例えば、ストレート、88、QJ、Q8、J8のツーペア、そしてより強いトップペアグッドキッカー、またはフラッシュドローを持っているハンドに負けています。このクラスのハンドは、相手のレンジの上位ハンドのほとんどに負けていますが、それでもまだ相手のレンジのかなりの部分に勝っている可能性があることが分かります。

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リアライジングハンド

次のクラスは、相手のレンジのいくつかには勝っているリアライジングハンドです。

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例えば、BBのゴミハンドには勝っている77のようなハンドや、55、A9のような中程度のエクイティのハンドが含まれます。BBのレンジのうち、トップペア、セカンドペア、サードペア、ポケット9など、多くのコンボに負けているクラスになります。

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ノンリアライジングハンド

最後のクラスは、エクイティを実現できないような弱いハンド(ノンリアライジングハンド)で、このクラスのハンドはBBのレンジのほとんどすべてに負けています。

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このクラスのハンドは、ショーダウンで勝てるようなハンドレンジがあるかどうかで見分けられます。例えば、6♤4♤のようなハンドは、明らかに弱いハンドであり、BBのレンジのハンドに勝つことはないので、明らかにノンリアライジングハンドと言えます。

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エクイティ分布は相手のレンジに依存

ここで注意しなければならないのは、特定のコンボが大まかなハンドの分類に当てはまる例をいくつか挙げましたが、これらの分類をすべての可能なスポットに当てはめないように注意する必要があるということです。あるハンドがどのようにランク付けされているか、エクイティ分布がどのようになるかは、各スポットの様々な状況に左右されます。
例えば、相手が非常にタイトなレンジを持っている場合にエクイティ分布で上位にランクインするには、こちらのハンドが非常に強くなければなりません。タイトなレンジには、余分な弱いハンドが少ない傾向があるからです。

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また、相手のレンジが広い場合は、同じハンドでもレンジにおける相対的な順位が高くなるのが一般的です。

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その理由は、コミュニティカードは多くても5枚しかないからです。つまり、そのような少ないコミュニティカードが、13種類のカードに広くまたがるレンジのすべてのコンボのエクイティを大きくするような強い作用をもたらす可能性は低く、レンジにあるコンボが大きくなればなるほど、レンジ全体のエクイティが小さくなっていく傾向があるからです。

その結果、全く同じボードでこちらが全く同じコンボを持っていても、相手のレンジに応じてエクイティ分布が大きく変わることになります。例えば、今回の例では、ボタンが持っているAJsは、70%以上のエクイティを持っています。しかし、全く同じボードで、ボタン対COの3ベットポットでCOが持っている同じハンドは、56%以下のエクイティです。

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エクイティとは、相手のレンジ全体に対してハンドが勝つ可能性を測るものです。3ベットポットのボタンのレンジは、シングルレイズポットでのBBのレンジよりもはるかにタイトで強力なので、同じボードの同じハンドであっても、相手のレンジに対して大きく異なるエクイティを持つことになります。

まとめ

相手の強さに基づいて特定のハンドを大まかなクラスに振り分ける方法が分かりました。個々のコンボに独自の戦略を立てるのではなく、ハンドのグループごとに包括的な戦略を立てることができれば、この非常に複雑なゲームを大幅に簡略化することができます

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以上、エクイティディストリビューション(分布)とバケツ化を使った簡略化されたシンプルなGTO戦略の構築方法について説明させていただきました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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元記事はこちらです。翻訳掲載許可をもらっています。




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