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ライス田所死す、そして○○○と衝撃の出会い

村上の芸人自伝、10回更新の目前9回目を迎えました。
改めて、いつもお付き合い頂き本当にありがとうございます。
前回、しずるとして初めてコントを作り、それがどう評価され、コントに対して僕はどういう意識を持つようになっていったかなどを話させてもらいました。
そんな今回は打って変わって、他の同期との話をしたいと思います。
ライスとしずるでの忘れられない思い出、ある同期に出会いとてつもない刺激を受けたこと、その辺りの話です。
ということで、今日も何卒宜しくお願い致します。

NSCでの生活も半年が過ぎ後半戦に突入する頃、しずるはポツポツと選抜クラスに入るようになりました。
最終的には、4つ程の選抜クラスに選ばれました。
同時にライスも同じくらいの数だったと記憶してます。
そのしずるが上のクラスに入るきっかけとなったのは、“将棋部”と“ブーブー”というコントでした。
ありがたいことにどちらのコントも前回紹介した“立てこもり”と同様、その6年後にフジテレビ『レッドシアター』で披露させてもらうことになりました。
まさか、養成所時代に作ったコントを後にTVで出来るなんて、この時には夢にも思っていませんでした。
(『レッドシアター』は毎週放送のレギュラー番組で、各コンビが二週に一回コントを提出して収録に臨まなくてはいけなかった。そのおかげで、回を重ねる度に持ちネタが足りなくなり昔のコントを引っ張り出してくることが往々にしてあった。ジャルジャルさんはネタ数異常なので、そんなことなかったかも 笑)
改めて、今回は同期との話をしていきたいと思うので、ここらへんのコントの話はまた次回以降話させてください。
まずは、とにかくいつも一緒にいたライスの身に起こった印象的な話を紹介したいと思います。

とある授業の選抜クラスの終わりにライスといつも通り品川駅で待ち合わせていたある日の話です。
まだしずるがその選抜クラスに入っていなかった頃、先に授業を終わらせた僕と池田は品川でライスを待っていました。
いつもと同じように駅の方からライスがこちらに向かってくるのが見えました。
しかし、1つだけいつもと違うことに僕は気づきました。
田所の顔色です。
顔面蒼白になった田所が僕らの元に到着しました。
心配になった僕は体調でも悪いのかと聞くと、田所は「いや…」とか細すぎる声で返事をしました。
文字通り肩を落としている田所のそんな姿はそれまでに一回も見たことがありませんでした。


「どうした?なにがあったの?」
田所
「めちゃくちゃ怒られた…」

「なに?遅刻でもしたの?」
田所
「いや、ネタのことで…」

「ネタのことで!?」
田所
「顔真っ赤にして怒られた…」

「そんなに??」
田所
「めちゃくちゃ怖かった…」

「ネタのことでこんな風になるまで怒られることある?」
田所
「今にも殴られるんじゃないかってくらいの勢いだった…」

「どのネタで何があったのよ?」
田所
「あの、拷問のネタあるじゃん」

そのコントはライスが当時よくネタ見せで披露していたものでした。
簡単に説明すると、捕らえられた料理人の関町の前で田所がひどいチャーハンを作っているところを見せる、というものです(今振り返って書いていて文字面でも面白い)。
そのネタは、それまでの他の授業でもよくウケていたし講師からの評価も高いものでした。
しかも、例えスベった所でそんなに怒られることなんてありえないだろ、そう思いました。
耳を疑った僕は田所に聞きました。


「え?ウケなかったからとか?」
田所
「いや、それなりにウケたんだよ」

「じゃあ、なんで?」
田所
「関町はまだしも、お前の演技がなってないって」

「あの仁くんの演技?そんなに問題あった?」
田所
「…見えないんだって」

「え?見えないって何が?」
田所
「炎が」

「炎?」
田所
「お前が振ってる鍋の下には炎が見えないって」

田所には申し訳ないですが、それを聞いた僕はちょっとだけ笑いそうになりました。
しかし、大事な友人がこれだけ憔悴しきっているのです。
そんなもの微塵として見せてはいけません。
そして、何気なく横に目をやると、関町の顔が見えました。
最低でした。
関町は口をモゴモゴさせながら完全に笑っていました。

“笑ってはいけない”シリーズで言ったら「関町 OUT~!」レベルです。
自分が怒られていないことをいいことに相方のヘコみ様を見て、せせら笑っていたのです。
試しに池田の方を見ると、何を考えてるかわからない顔をしていました。
彼は一体何を考えていたのでしょう。

とにもかくにも、田所を励まさなければいけないと思った僕は労りの言葉をかけました。

「俺には炎見えたけどな~」

なんなんですか、このフォローの言葉は。
後にも先にも一生放たれることのない一文です。
田所は虫の息で言いました。

「コントって炎見えなきゃダメなの?」

何も言葉を返せませんでした。
あれから17年が経ちましたが、僕の中でその答えはまだ出ていません。
後日、同じネタを見せたライスでしたが、その先生に田所はまた烈火の如く怒られていました。
そして、そのタイミングでライスは選抜クラスから普通のクラスに落とされてしまいました。
降格システムがあったなんて、そこで初めて知りました。
田所からしたらどうかわかりませんが、今となってはとても良い思い出です。

ライスと入れ替わるようにしてその先生の選抜にしずるが選ばれ、そこからまた環境がガラッと変わることになりました。
選抜に上がると、今まで一緒に授業を受けていなかった他のクラスの猛者たちと出会うことになるのです。
ライスと同様に、他のクラスのコンビからもショックを受けたことが多々ありました。

そして、その筆頭に1組のコンビがいました。

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