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コンビが終わりコンビが始まる


僕の芸人自伝も今回で5回目となりました。
これを読んでくれてるほとんどの方がこれまでの記事を購入してくれて、その続きを見に来てくれてる方々だと思います。
もし、たまたま今これを見てるだけの人は良かったらマガジンの「村上芸人自伝」から遡って見てみてください。
ほら、急いでください。
まぁでも、ここからでも読めないこともない気もするので、とやかく言いましたがお好きにしてくださいませ。
さて、前回までのあらすじとしては、17年前に単身NSCに入学してSくんと“ピスタチオ”というコンビを組み、コントに目覚め、夏合宿で良い成績を収め、ずっと意識していたライスと池田に初めて声をかけられる、みたいなところでしたかね。
そんな今回はライス、池田とつるむようになり、Sくんとのコンビ解散を考えるようになり… みたいなお話です。


改めてですが、入学して早々にネタ見せの授業などで頭角を現したのがライスと池田でした。
その後も、それまで漫才をしていたコンビもその二組に引っ張られるようにコントを始めるくらい、その影響力は本当に大きなものでした。
他の生徒は勿論のこと、僕も彼らをビシビシに意識していましたが、夏の合宿が終わるまで接触は1度としてありませんでした。
そんな夏のある日、授業帰りの駅前で関町に話しかけられました。
内心では心踊っているのに「ん?(なにか?)」と小さなリアクションを打つだけの僕。

「あれだよね。ピスタチオ、面白いよね」
「ああ」
(このタイミングで初めての会話を持ち出してきたぞ。これはあちらさんも意識してるな)

そう思いました。
そのままたわいもない会話を続けていたのですが、ずっと違和感を感じていたのが池田が右手に持った“揖保の糸”でした。

「池田くん、それなに?」
「あ、これ関町さんにもらって。僕一人暮らしなんで、飯代とかマジでキツくて」
「そうなんだ」
「関町さん、マジでありがとうございます!」
(当時、池田は同期と言えど年上の人間には敬語を使っていた)

麻の変な帽子を被った池田は、関町に無邪気にお礼をしていました。
それは、人間の姿をした犬が見えない尻尾を振りまくっている、そんな風にも見えました。
ライスは二人とも実家暮らしだったので、時折池田に食料を恵んでいたそうです。
こうして、そのグループに僕も加わるようになり、養成所やそれ以外のところでもライス池田たちとよく集まるようになりました。

そんなこんなでNSCに通うのも楽しくなってきた夏の終わり頃、僕の中で何かが引っ掛かり始めていました。
Sくんと僕のコンビ“ピスタチオ”は、夏になってから新しく始まった授業でも選抜に入るなど、わりかし順調に行っていたと思います。
しかしその一方で、ライスたちのグループと一緒に行動を共にしていると違和感を感じることが多くなりました。
Sくんの年齢です。
Sくん、25歳。
村上、22歳。
ライス、20歳。
池田、19歳。
今考えると、年齢だけで判断するのもどうなのかと思うのですが、その時の僕は「若手としてフレッシュさが必要なんじゃ?」みたいなものに振り回されていた気がします。
そうなってしまうと、僕の性格上、ピスタチオに対してマイナスな考えが頭を占めていくようになります。

Sくんはおじさん?
漫才でツッコミをやりたいと思っていたSくんは僕の書くコントでいわゆるツッコミをやってないよな?
Sくんはおじさん?
100%僕の意見だけでネタをやらせてるけど、Sくんに不満はないのかな?
Sくんはおじさん?
ライスなどに比べると、Sくんのコントの演技はどうなのかな?
Sくんはおじさん?

そのモードになったらおしまい、脳裏に“解散”という二文字がチラつき始めます。
ネタ作りもなかなか捗りません。
隣の色んな芝生が青く見えてきます。
にわかに沸き上がってくるネガティブな感情たち。

そんな折でした。
ピスタチオ解散の意識を更に加速させる、ある大きなニュースが舞い込んできたのです。


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