NSCでライスと池田一真とコントに出会う
2003年4月。
僕、村上純は吉本興業の養成所(東京NSC)に9期生として入学しました。
年齢で言うと、大学を卒業と同時に22歳の時にその門を叩いたわけです。
ルミネtheよしもとで入学式的なものがあり(講師の木村祐一さんを初めて生で見て震えました※1)、それが終わると次の週にはすぐにネタ見せみたいなものが始まりました。
先に言うと、僕はその授業で何もせぬまま無駄に1ヶ月を過ごすことになりました。
それまでにネタを作るなんてことをしたことがなかった僕は、クラスのはじっこで「ちょっと様子でも見るか」みたいな雰囲気を出して無理矢理冷静を装いながら、内心は焦りながら、同期となったみんなのネタを見ていました。
NSCには一人で入ってきていたし、ろくに友達もできてなかったので相方は勿論おらず、ピンでやるとも考えてなかったので、ある意味ではそうするしかなかったのですが。
素人に毛さえも生えていない同期のみんなのネタは、ほとんどがなかなかに見れたもんじゃないものでした(何をほざいてるんでしょう、ネタ見せすらしていない僕の方がよっぽと見ていられないじゃないか)。
でも、その一方で早くも表現というものをしているコンビ達は輝いても見えました。
そして、その中でも一際異彩を放っていたコンビがいました。
結果的に今日までの17年間、苦楽を共にしてきたコンビ。
ライスです。
二人の風貌は田所が半端丈のカーゴパンツ、関町は虎のワンポイントの入った鮮やかなまでの紫のスウェットパンツでした(何故か主に下半身の記憶)。
そんな二人は当時からコントだけをやっていました。
最初に見た彼らのコントは、(ライバル心からなのか)基本的になかなか笑わない同期をも笑わすようなもので、実際僕も「くそぅ、おもしれぇな」と指を咥えて見ていました。
内容としてはブラックな保育士と園児の設定で弁当を扱った、不条理な世界のもの。
そんなライスを初めて目の前にし、まず目に飛び込んできたのは園児役の関町のビジュアルでした。
見たこともない、赤頬のメガネ野郎。
ブラックな世界の中に絶妙なポップさを与えていて、そこに田所のポーカーフェイスも相まって、早くもライス独特の面白さが体現されていました。
今思い出しても、他のやつらとは醸し出す空気が違いました。
そして単純に、コンビで入ってきて羨ましいなと思っていました。
ただ、それと同時に「一人で入ってきた俺はまだネタ見せできなくても仕方ないだろ」などと必死にそんな言い訳を盾にして自分を踏みとどめていました。
しかし、その言い訳を一瞬にして跳ね飛ばす存在が現れました。
見たこのない毛量と剛毛と天然パーマで、前頭部に貯金箱ハゲのある黒目だけの男。
今の相方である、池田です。
僕と同じく一人で入ってきたにも関わらず、最初の授業から彼はフルスロットルでした。
ネタ見せとはまた異なった、感情表現を学ぶ『エクスプレッション』という授業がネタ見せよりも前の日にあり、その最初の回のこと。
講師の方がランダムな質問を一人一人に問いかけるというものがあり、池田の番になった時にその講師は「ダウンタウンのことをどう思う?」と投げ掛けました。
そのデカすぎるテーマの質問が提示された瞬間、教室全体が異様な緊張感に包まれました。
息を飲む生徒たち。
2秒の静寂。
池田が口を開きました。
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