見出し画像

015.PARCOを巡る、都市開発の一考察

やっと行ってきたPARCO。間違いなく、ここ最近の商業施設ベストだと思う。

スペイン坂からの都市の抜け道と、そこにかかるブリッジ上の店舗、外からぐるぐる上がれる屋外テラス。この手の絵はみんな描くけど、実現できた事例としては、ほぼ存在しない。ゆえにPARCO開発担当は相当イケてるんだろうし、その複雑系を解いたここの設計リーダーはもっとイケてるに違いない。

しかし並びゆく店舗のインテリアは(もちろん目を見張るものもあったけれども)、なんとなく「素材感」的なものばかり。素材って、聞こえはいいのだけど、誤解を恐れずに言うとなんだか貧乏くさい。これ、近ごろ話題の「貧乏くさい日本」を地でいってる感じがした。新築なのに「スケルトン」をわざわざデザインってのも、どう考えてもナンセンスだし(マルジェラの「だんご張り痕の再現」には笑えた)。

そして、すでに人もまばらで、ミラノサローネの人気のないブースのような、互いに気まずい雰囲気さえ漂っていた。これが中国や台湾だったらワッサーと人がいて、見え方がぜんぜん違うのだろうけど。GUCCIとかのハイブランドの商品デザインが、のきなみ「関西のオバチャン化」してて、明らかにターゲットが「中国にしか」向いてないのがわかる。

話題の飲食ゾーンは、どの辺りに「フジモトソース系」がインストールされるのかは、よくわからなかった。そして残念ながら「丸の内ハウス」を超えられてない。

丸の内ハウスは(地下ではなく)地上に位置していて、かつ屋外デッキと繋がった廊下を”オソト”に見立てて、「歩道にはみ出し系のカフェ」的な感じにしたのが画期的だったわけで。そりゃもちろんリーシングは頑張ってるし、ぐるぐる回遊する「芝浦ゴールドからの系譜」も、踏襲はされてるんだけど。やっぱり、オフィスサポート機能としての、「いつもの」地下のフードコート感から脱皮できてないと思った。

そもそもフードコートのよさは、「賑わいが染み出す」点であって、虫は光に吸い寄せられるが、ひとは人が集まる場所に吸い寄せられていくわけだから。その「賑々しさ」を外部へと染み出し発信しない、つまり、賑わいを地下に封じ込めるのって、やっぱりどう考えても勿体ないよね。一階を、高級ブランドから金を巻き上げる「集金装置」とする考え方から、脱皮する時期に来てる気がしてならない。

街に貢献し、街の価値をあげることが、売上と完全にリンクしているデベロッパーならば、1階は飲食系に完全開放して、賑わいを街に染み出させる「飲食いちば」みたいにして、通えば通うほどに友達ができる「街のリビング」みたいにしたらいい。で、地下は上海のK11みたく美術館にして、文化を醸成したらよいと思う。いつも賑わっている建物ならば、上階にだって喜んでテナントは出店するだろう。

大人フードコートも、ダークマターな世界(たとえば変なオカマに絡まれるのを喜ぶようなちっぽけな世界)に寄せるんじゃなくて、もっと健全で未来を感じるような若き挑戦者たちに開放したらいいと思う。

人口減少の途中にあるとはいえ、一億人以上のひと(スペインとフランスとスイスあたりを足したくらい)が暮らしてて、「こんなに人間がおるのに、なぜゆえみな孤独なのか?」という課題に対して、いい加減「真剣に取り組む時期」に来てると思う。日本におけるSDGs目標はそこにターゲット絞ってしまえとさえ思う。

いや、どう考えてもPARCO開発チーム、イケてます。停滞する日本での数少ない「希望」だ。
次は昼間に散歩してみよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?