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023.組織事務所に勤めてた建築家の私が絵を描き初めて一年後には、独立して個展をする事になった話

みなさんは一年前の在宅自粛期をどんな風に感じただろうか?

当時わたしは、友達とか身近な人にヒアリングしてみた。
「ぶっちゃけどう感じる?」
すると殆どの人は、私が感じていることと同じことを答えた。

「実に快適だ」

「移動」と「人に会う事」が激減したことで、精神的にも体力的にも快適になった。みんな口を揃えて言っていた。あれほどホムパが好きだと思ってたのに、本当は好きじゃなかったとか。会食のお誘いが実はストレスだったとか。出張がなくなって、すこぶる快調だとか。

「自粛」になって、「誘いを断る大義明文」が生まれた。自分だけが、家でジィーっとしているわけではなく、みな「平等に」ジィーっとしてるわけで。「知らないところで何か素敵なこと」が起こってる可能性は極めて低い。

たとえ、こっそり「パーティ」だの、「イケてる人たちと集まってなにか」をやってても、自粛期なのだから、「見せびらかす」ことができない。

そして、この世からあらゆる「マウンティング」と「アオリ」が消えた。あの「空港オジサン」も消えた。

飛行機は飛ばなくなり、外人が街から消えた。世界中の空気が澄み渡り、ここ港区でもウグイスの鳴き声が聞こえた。

シーンとした世界は実にワクワクして、心の底から気分が良かった。人に会えなくて寂しいと思ったことは一度もなかったし、人に会わなくて済むことが、こんなに快適なのかとビックリした。

もっとびっくりしたのは、冒頭でも書いた「みんな似たように感じていた事」だった。

そうしてふと、少し前にアクリル絵具を買った事を思い出して、描き始めた。

在宅勤務になった当初の一番大変な時に、「ヘビーなコンペ」をふたつ同時にやっていた。めちゃくちゃ大変だったけど、「全てオンラインでやり切った」。すると、

会社に行く理由が、ほぼなくなってしまった。

会社に行かなくて良くなったことをいい事に、空き時間はずっと絵を描いていた。

ところで、会社の存在意義は「集まって働く価値がある」だと思う。「会えば会うほどに化学反応が起こるような仲間」がいて、「一緒に目指す目標がある」から。会社に行く理由がないということは、「その会社に所属する理由もない」ということだ。正直なところ、コロナ禍の期間、会社仲間に「会えなくて寂しい」と思ったことは、「一度も」なかった。

所属する理由があるとすれば「お金」のためだ。そこまでお金の心配をなぜするのだろうとも思った。いまだに心配ではあるけれど、畑でも耕せばどうにか喰っていけるのではないだろうか。

そんなわけで、気づいたら会社を辞める事を決意し、作品数は300を越えていた。

友人に絵を描いていると伝えたら、ぜひうちのギャラリーで個展をやらないかと言ってくれた。そして個展をすることになった。

約200点を展示しているけれど、壁全体に張り巡らされた絵画達は、我ながら壮観な眺めだ。

そして、ええ歳をして会社も辞めてしまったたから、はからずも「独立を記念した個展」みたいな形になってしまったというわけである。

なにもこれは私が特別だとかそういう事じゃない。絵を描くことは誰にでもできる。そして描きつづければ作品は生まれていく。下手か上手いかは関係ない。人は本来誰しもがアーティストだと私は思ってる。人それぞれに得意なことは必ずあるだろう。料理をつくる、珈琲を焙煎する、ミシンで縫う、編み物をする。集まってダラダラと飲んいた時間で、何かが生み出されていく。とっても素敵なことだと私は思う。

それを一年続けたらきっと誰もが変化を感じる何かを体験していると思う。

人より優れている何かをマウンティングする時代はコロナの前で終わった。これからは自分の魂が喜ぶことをワクワクしながらやればいいと思う。

これまで私は「会社」という「豪華客船」に乗ってきた。豪華客船に乗る為の「乗車券」を手に入れる為の、大学に入ったり、一級建築士という資格を取るのはそこそこ難しかった。そして豪華客船に乗せてもらった日々は、実に快適で有り難いものだった。

けれども、ここから先は手漕ぎボートに乗り換えて進む。船という種類は一緒だけれど、前に進む為にはこれまでと全く違った技術が必要になる。

人によっては溺れるだろうよと予想する。だけど私はひとつ思い出した。泳ぎだけは昔から得意で、個人メドレーも出来ることを。

※ 個展の会期は4月30日から5月30日迄です。
壁の色を塗り替えるのは勇気がいるけれど、絵を飾るだけでほんの少し屋内の空気感が動くことを体験してもらえたら嬉しいです。

5月8日にはトークイベントも行います。
5月23日には予約制の「しゅなっく」も行います。


ぜひお越しいただければ嬉しいです。

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