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二次創作小説のメイキング

※2023/9/22・10/18に別所で公開していたものの再編集版です

これのついでにメイキングを見ていってくれる人が多かったので、再編集します。

私がメイキングや他人の思考を読むのが好きなので書きました。
特に事件が起こらない、淡々とした日常を書くのが得意な方です。
私の文章は基本的にあっさりしていて味が薄いのですが、話の構成はわりと頑張っている部分なので主にそのあたりを書いてみます。

基本的には、短編の時はこれらを考えたり考えなかったりしながら書いていて、わりと実験している感じです。
10万字超クラスになったり、視点違いで8万字×2書くときなんかは、あとあと役に立つので書き出しておくことが多いです。


そもそも書く時に気を配っていること

基本的なことについては冒頭に貼った記事の方で書いているので、それ以外の部分について。
あくまでもオプション、というか、基本ではあるけど別に人の好みの範疇なので好きにしたらいい部分の話です。

・音読しても黙読してもリズムが良くなるようにする

意味の通りやすさ、字面としての美しさの他、読んでいてリズムが良くなるように読点を置く。
打ちすぎ傾向なので最近意識して減らしてます。
リズムってなんぞやという話になると、わかりやすく言えば俳句、短歌、都都逸など色々あるかと思います。
基本的には語感と音数というか韻律の話なのですが、感覚的なものなので、あまり理論的に詰める意味がないのもあり「自分が心地よい」を探します。

・漢字の単語が連続しないようにする

読みやすくするため。
たまに断腸の思いで連続させてます。

・同じ助詞が連続しないようにする

たまに断腸の思いで連続させてます。
印象付けるために、わざとやるときもあります。

・同じ接続詞ばかりにならないようにする

言い換えするか削ります。
同じ単語を繰り返すのは登場人物の人格を強調するのに役立ちますが、その意図がないなら無駄に意識を割いて話の邪魔になるので出来るだけ気にならないようにします。わかりやすいのが接続詞ですが、接続詞だけでなく、言い回しなども。

・「誰が」というのをはっきりさせる

基本の方にも書きましたが、まあ好みの範疇でもあるので…。
昔は曖昧に書いていましたが、わかりやすくなるよう意識して追加しています。あまりにしつこいと推敲の段階で削ります。最初から削ると話がぼんやりしがち。

・文章が長くなりすぎないようにする

一回読んだら意味がわかる長さにする。
すんなり読んでもらえるよう、「ん?今のどういう意味だ?」を減らすように努力してます。
たまにわざと長くして強調します。

・羅列する時は三つ以上

〇〇で、〇〇で、〇〇な〜という形。
単におさまりがよくなるのと、リズムと圧が生まれるので。
対比の構造なら二つでいい。

・視覚にかたよらないようにする

私は光がどうたらとよく書きがちなので、感情が大事な場面では温度などもろもろ入れられるなら入れてます。逆に言えば、瞳孔が開くと光が入りやすくなるので、感情の動きを光で表現するとわかりやすいかなとも思っています。
他にも視覚以外の感覚を足すように心がけてます。


基本的な工程

・書きたいことを書き出す
・キャラの設定
・舞台設定
・展開、書きたいシーンを考える
・プロットを練る

・書きたいことを書き出す

優先順位をつけながら箇条書きでひたすら羅列します。
全部盛り込めなくてもいい前提です。
この時点で
・テーマ(主となる書きたいこと)
・コンセプト(どういう味付けにするか)
・モチーフ(象徴するアイテムや例えに多用するもの)
はある程度考えておきます。
頭の中で既に話が完成している時はこの作業を省いたりもします。

・キャラの設定

キャラの設定(解釈の確定)をしていきます。
原語が日本語でない場合、一人称や二人称(がどういったときに揺らぐのか)、どう世界観を作るか(日本語・神道・仏教・その他特有の語彙や言い回しをどの程度使うか、細かい調整)など。また、勝手に追加した設定も固めておきます。
登場する人物全部とは限らず、逆に考えたキャラを出さないこともあります。こう進めていこう、という迷ったときに見直す地図のようなものです。
かたく考えすぎると自分がしんどいだけなので、あとから都合よく改変したりします。あくまでも一つの話の中であっちこっちしないためのものであり、一本筋が通っていれば問題ないからです。初期構想に忠実なものを書くのが目的ではないので。

視点違いで同じ話を複数書く時は、違いを出したいのでここが大事です。
個人的に重視するのは一人称と二人称です。日本語においては自認識と他者への向き合い方が出るんじゃないかな〜という理由です。
何かを契機として途中で変えたり、状況によって変えたりもします。

考え方の違いをはっきり出したいので、
・どういう思考回路をしているか
・意思決定の過程
・行動と思考の関係
・価値観
・物事の優先順位
・絶対に譲れないもの
・心体のスピード感
などを確認します。また、
・環境由来(周囲からの影響や、環境への適応の過程で身についた)
・エピソード由来(具体的なきっかけからそうしている)
・能力由来(スペックから自然とそうなった)
・生来の性格(生まれもっての特性)
のどれにあたるのか等も考えておき、何をきっかけにして揺らがせるかを考えます。これは私が揺さぶりをかけるのが好きだからかもしれません……。

・舞台設定

長編になると適当に処理した部分が揺らぎとなって後から面倒なことになる可能性もあるので、ある程度しっかり決めておくか、いっそほとんど描写しません。
特に二次創作は読み手が多くを補完して読んでくれるため、決められないならそれに関する余計なことは書かない方がましなため省きます。前回どう描写したかな?と確認する手間を省くためです。
こだわりがある部分はしっかり決めて落とし込みます。

・展開、書きたいシーンを考える

プロットを練る前に、書きたいものを踏まえながらどういったシーンを入れるか、言わせたい台詞は何か、山場はどうするかを考えます。
山場は話の山場ではなく「自分が書いていてテンションが上がる場面」です。
山場が最後の方にないと書く気が早々に萎んでしまうので、いくつか考えて、プロットの段階でバランスよく配置します。
と言いつつだいたいラストに大きいのを持ってきます。

・プロットを練る

人によってプロットの細かさも違ってくるでしょうし、出来事ベースか感情ベースか、どのくらい描写するかも変わってくると思います。

私は感情ベースで考えるので、どこからスタートし、どれくらいフラストレーションをためるか、どう上下するか、どこで転換点を迎えるか、どこでカタルシスを得るかを考えます。
感情の起伏を決め、そこに書きたいものをどんどん盛り込んで一つの話にします。
これは入れられない、と思ったものを苦渋の決断で削りつつ、何かで生かせるかもしれないので置いておきます。
不自然な話の流れになるなら書きたくても削ります。無理やりねじ込む時もあります。さらに、間に合わないな!文字数が多くなりすぎるな!と思ったら走り出してからもザクザク削ります。この機会に書かなければならない、と気負いすぎないようにします。
個人的には「ここは字数など気にせず自由に赴くまま好きに書いていいフリータイム」的な場面があると楽しく進められるので、プロットにフリータイムを練りこみます。
そのせいでだいたい文字数が予定よりかさみます。

また、常に何か「わからないこと」を持たせておきます。
それが本筋でもいいですし、サブの話でもよく、本筋に合流するとなおいいです。
詳しくは後述します。

小手先の見せ方

色々作り込んでいくというよりは、その場で即座に効果を発揮するタイプのあれこれ
・変わったことはしない
・こだわりをねじ込んで書く
・キーセンテンスを用意する

・変わったことはしない

もちろん挑戦することもあります。
必ずしも以下の通りとは限りません。
ただそれはかなり話を練った上でになります。

まずは登場するキャラ数を抑えます。
これはこの後出てくる書き方に関わってくる点が大きいのと、単純に考えるべきことが多くなるからです。私は多くてもだいたい4人までです。

あとは回想シーンも文章が上手い人でないと上手く書けないと思うのでほとんど入れません。
思い返しているのは書きますが、台詞などを入れ込んで上手く仕上げるのはめちゃくちゃ難しいと思います。なので回想しているところは大抵「」を独立させずに書き、回想であるとわかりやすくします。
私はたいてい話の流れ=時間の流れで、あくまでも「思い返している」だけにおさめます。最初に山場を持ってきて後々改めて回収する、という方法も短編では使うのですが、時間があっちこっちしても説得力を持たせつつ理解してもらえる話を書くのはハードルが高いので……。

一つの話で視点変更を繰り返す話も情報の整理が難しくなりますし、見せ場をどちらで書くか悩んでしまうので避けます。
視点を固定していてさえ主語と述語の関係などが適切かどうか毎度頭を悩ませているので、その辺りの日本語をすんなり苦労なく書ける人でないと大変かなあと思うのもあります。時間をかけないことを優先すると固定になりました。何度か挑戦してみて向いてないと気づいた結果です。
この辺りは好みと技量によると思います。

基本的に文章が上手くないと無理だな……ということは長編ではやりません。
しかし新しいことに挑戦する時もありますし、たまにこれが書きてえんだよ!!!!と暴走する時もあります。

・こだわりをねじ込んで書く

こだわりというのはここはこうじゃないとダメなんだ!!というものから、こういうの萌えませんか!?というプレゼンまで含めます。
私は食べ物の描写をしっかり入れることが多いです。
食事内容や食事の様子を入れるのが好きだからです。
楽しい食事、楽しくない食事を入れて関係性や雰囲気の変化を出したりします。加えて、食に対する考え方を出すと人物の差がわかりやすくなる気がします。
「静河さんといえばこれ」と言ってもらえるぐらい書けたらいいな〜と思っています。
こだわりを持って書くと個性が出て作品の雰囲気も自然と出来上がるんじゃないかな〜というのもあります。
そもそも私が味気ない文章を書きがちなので、モノクロの線画にトーンを乗せていく感じかもしれません。

また、一次創作とは違い、二次は読み手側がすでにある程度イメージを持っているので、こだわりがない部分はあまり描写しないようにしています。
具体的な例で言うと、私はどういう服装をしているのかわざわざ描写しないことが多いです。

特定の視点で書いている時には、その人物が何にこだわり、何を気にするか?という観点で細かく書くポイントを決めることもあるのですが、それも上手く自分のテンションが上がるポイントを混ぜ込んでいかないと飽きかねないのでふわふわさせてあります。

・キーセンテンスを用意する

何かこれぞという一文を用意しておくと色々利点があるので多用しています。タイトルにすることも多いです。
①話の軸が明確になるので、ブレにくい
②終わらせ方が見つからない…という時にさっと出してくるとなんとなくええ感じにしまる気がする
など。
恐らく、個人サイト時代を経験している人たちにはとても馴染みがある形式だと思います。概念としては意味深な文章が妙に薄い色で大きい字あるいはやたら小さい字で表示されていたあれです。なんだかんだ、なんとなくええ感じに仕上げるのに重宝しています。

どういったものをキーセンテンスにするかと言えば、
・話のきっかけとなる出来事
これで始めて、どう変化したかを少しもじった文章でラストに置くとどういう話だったのかがわかりやすくなる気がします。
また、同じ一文が状況によって全く意味が異なってくるのもいい感じになる気がします。

・視点によって解釈が分かれるダブルミーニング系
それぞれの性格や考え方、見え方の違いが出やすくなると思ってやってます。

・モチーフやテーマを表す
例えば、靴といえば何を連想するか?は人によります。
シンデレラ、赤い靴、オズの魔法使い、靴磨き、革靴、サンダル、ハイヒール、スニーカー、靴紐、靴屋、靴箱、玄関などなど……
何を象徴するものとしてそのモチーフを使うのか?を暗示するような一文を置くといい感じになる気がしています。

と、それらしく言っていますが、基本的にはなんとなくこんな感じだといいな……ぐらいで最初は設定して、後々こうしとけばあの一文に寄せていけるな……などと思い調節して話を作っていきます。毎回初めからビタッと決まっているわけではないです。段々こんな感じかな……と輪郭を掴みながら書いていきます。
基本的に、読み手に解釈を委ねる一文にしていることが多いです。
私はラストがやたらふわふわして概念的になることが多いのも含めて……。
最初と最後に配置したり、各章に配置したり、ここぞというところで繰り返し出してきたり、色々使えてバリエーションも出せます。
キーセンテンスを作ってしまうのは本当に便利。

以下、具体例です。
■話のきっかけ

冒頭「その夜、◯◯はただ自分の心臓の音を聞いていた。」
相手の怪我を心配しながら「その夜、◯◯はただ自分の心臓の音を聞いていた。」
一緒に寝るようになって「その夜、◯◯はただ△△の心臓の音を聞いていた。」
最後「その夜、◯◯はただ、自分の、心臓の音を聞いていた。」

テーマが「生まれてから恋に落ちるまで」、クライマックスに至るまで「好き」という概念自体を知らないので一度も好きという単語が出てこないという話になっています。
生まれてどきどきしているとき、
心配ではらはらしているけど自分には何も出来ないとき、
一緒に寝るようになって自分以外の存在を感じるようになったとき、
恋を知ってどきどきしているとき、
の対比になるようにしてあります。

■話のきっかけかつモチーフとダブルミーニング

視点1冒頭「息が出来ない。呼吸することさえ忘れてしまった。」
視点2冒頭「息が出来ない。呼吸なんてしている場合じゃない。」
それぞれの最後「龍の住処はそこにある。」

装丁のテーマが夏・水、龍の住処と呼ばれる川が重要な話だったので、出だしはそれに合わせて恋に落ちて溺れるイメージです。微妙な違いに性格と状況の差を出してあります。
最後一文はタイトルにもなっており、指示語としての「そこ」なのか「底」なのか、読み手によって意見が分かれる、そして両方の視点から書いていることで、視点によっても解釈が分かれるように設定しました。また、腕に龍の入れ墨が入っているので、龍の住処が何を指すのかも解釈が分かれるようにしてあります。

■モチーフとテーマ

冒頭「魔法がある。全ての憂いを越えて、ただ願いに至る、そんな魔法が。」

靴屋の話で、靴といえば何を連想するか?というところからイメージを明確にするためにこうしました。オズの魔法使い的なテーマを重ねています。
オズの魔法使いにおける靴は、序盤でドロシーが偶然何気なく手に入れた靴が実は自分が欲しいものだった(元の場所へ帰るために必要なものだった)、というところを拾っています。実はお互い一目惚れだった二人がめちゃくちゃ紆余曲折を経てくっつく話です。

■話のきっかけ、モチーフやテーマ

冒頭「全て、飲み干してしまえたなら、」
最後「全て、飲み干してしまえたから。」

キッチンドランカーというタイトルの話です。
これは書いている途中で思いついて入れました。
句読点の打ち方、漢字にするか否か、細かい言い回しなど、しっくりくるものを探しました。
飲み干せたのが誰なのか、何を飲み干したのかははっきりしていません。
読み手に解釈を委ねていることが多いです。

話の構成について

・「書くこと」と「書かないこと」のバランスに気をつける

書くこと、書かないこと、は即ち情報の管理ということになります。
この時意識するのは①登場キャラ②読み手です。

・誰が何を知っていて
・何を知らないのか
・それをいつ知るのか
・ずっと知らないままなのか
・知るならいつ/どういった方法で知るのか
といった登場キャラの情報管理です。
「変わったことはしない」で挙げた登場キャラを少なくする、はここに直結するので極力少なくした方が楽です。また、視点を動かさないというのも関わってきます。
視点を固定することで感情の流れが汲み取りやすくなるだけでなく、知らないはずのキャラが知っていたり、知っているはずが知らないことになったり、といった間違いが起きにくくなります。

膨大な設定を考えようと不要な情報は書かない、あるいは匂わせるだけにしておく、といったものは主に読み手を意識して考える部分です。
読み手にどの情報を開示するのか?説明的になりすぎないように気をつけつつ、どういった描写で伝えていくか、ということです。

情報管理は、話の整合性を得るために必要です。
基本的には「理解出来ないが納得は出来る」を目指しているので、種明かしの瞬間に「なるほどね!(それはそれとしてこいつらわけわかんねーやつらだな…)」と思ってもらえれば喜びます。

①登場キャラが持つ情報の処理について。
会話の声の調子やちょっとした言葉の選び方で、すれ違わせたり通じ合わせたり勘違いさせたりを操ります。
恥ずかしい、プライド故、思い込み、打算、横着、苛立ち、言葉にするのが得意でない、など、はっきり言葉にしない状況から好きなだけややこしくします。言葉にしても言葉足らずだったり前提条件の不共有から思い違いを起こせます。言葉にしているだけ余計にややこしいという方向にも出来ます。
ここで性格設定が生きてきます。
・建前や、社会的に見られる面
・本当の性格
・本人が周囲にどう思われていると思っているか
・本人も気づいていない感情や考え
などの印象を場面によって出し入れします。
誰が、誰の、どの面を、どう見て、どう反応する、を繰り返します。

良かれと思ってやったことで悪い方向へ転がったり、何気ないことが好転のきっかけになったり、何もかも自由なので存分に面倒くさい状況にします。

視点違いも書く時は、言ったのを聞き取れなかった、などをわかりやすく処理しやすいので、なおのこと、やりたい放題やります。
視点違いを書かない時は読む人がすれ違っていると気づくようにするか、あえて伏せてミステリー調にするか、ヒントはどれくらい散りばめるかもコントロールします。
個人的にはここが一番楽しいので、その勘違いやすれ違いを最終的に解消させたりさせなかったりします。まあ現実の人間関係もそんなもんですし……。
思いがけないことでこの人ってこうだったんだ!?あの時のアレって!!が発生するものだと思うので、そういう諸々を仕込んでいく感じです。
基本的には登場キャラの数だけ思考(本人が何をどう考えているか/無意識の部分)と表出(考えていることなどがどう表に出ているか/何を意図して、それを相手がどう受け取ったか/意図していない部分/相手が何から何を読み取ったか)のタイムラインが必要になるので、私は出来るだけ登場人物を減らしています。わりと水平思考が得意な方ですが、登場人物たちの関係性が密になればなるほど情報量が増えてプロット段階でより細かく決めておかないと詰むので……。

②読み手の情報管理、読み手にどの情報を開示するのか?は①登場キャラの情報とも繋がっていますが、話の作りというよりも表現の仕方がメインになります。
書き方によってジャンルを変えたりもします。

例えば、
「この二人は初対面(描写・状況で伝える)」
「片方は大学生(本人に大学に入ってから…と語らせることで明確に説明する)」
「片方は大企業の営業をしていたけど転職して今の仕事をしている(話に出さないけど、その時の名残でよく働く)」
というように、読み手にどう情報を開示していくか考えながら書きます。

また、情報の出し方、伏せ方で読み手をどの立場に置くかが変わります。
いわゆる「難聴系主人公」はある種の定型で、視点の人物が持っている(理解している)情報と、読み手の認識に差異を生む一例です。

①は矛盾を生じさせないためでもありますが②は見せ方の問題なので、雰囲気づくりの意味もあります。
最後まで読み手の興味を引っ張るために謎(伏せられた情報)を用意しておき、それをどう演出していくかということなどが含まれます。
テーマやコンセプトで左右される部分でもあります。

私はだいたい
メインプロット:二人の関係
サブプロット:相手/自分が考えている、悩んでいる、気にしていること
にしてあります。こうしてしまうとだいたいどちらかが解消されると同時に全て解消されやすいので、話が単純かつ綺麗になって扱いやすいです。

ものすごく重要な情報を伏せておき、任意のタイミングで出してくることでガラッと変わるタイプの話が好きなのでよく書きます。
中でも「信用できない語り手」パターンは手軽に出来て多用しています。
語り手が自分に不都合な真実を伏せているパターン、勘違いから意図せず真実を隠すパターン、自己評価の低さから捻じ曲げるパターンなど様々ですが、最初に設定を作ってしまってから伏せる情報を決め、どうしてその情報が伏せられているのか?を決めてしまえばわりとすぐ出来るのでめちゃくちゃやります。
ミステリーが好きです!!

信用できない語り手ほどではなくとも、本心をなかなか話さない相手が本心を語りだした途端に前提が覆りあらゆるものの捉え方が変わる、というのはより手軽で話にしやすく、ほぼ毎度これです。
単純にそういう話がめちゃくちゃ好きなんですけれども……。

ここが個人的に書いてて楽しい!!!!!というポイントです。
種明かし/情報の開示がカタルシスを生み出し、勝手に話の盛り上がりになってくれるので、感情の起伏ラインを考えたあとは書いてて楽しいものを散りばめつつ、情報開示のタイミングをどこにするか決めていく感じでプロットを立てます。

感情の起伏ラインは好き勝手やります。
時々バランスを見て整えてますが、これといって定型はないです。
ぐだぐだ悩む場面を長めに、話の転換点が衝撃的になるようにみたいな調節は書きながら入れてます。あるいは落差がより大きくなるようにしたり、これより下はないだろうと思っていたらまだ下があった、みたいな裏切りが入れられるならそこに向けて助走させたりもします。

・伏線の仕込み方

情報管理の裏技(?)的なものですが、そもそも書き方として私は話の頭から最後まで、読み手が読むだろう順番通りに書いていきます。その時に伏線を仕込むわけですが、足し算の伏線か引き算の伏線かという話があります。
足し算の伏線は「後々これが生きてくる」ですが、
引き算の伏線は「ここではあえてこの情報を伏せておこう」になります。
私は混ぜながら書いています。さもめちゃくちゃ緻密に話を考えているかのように見える(と私は思っている)のでそのやり方についてです。

まず普通に話を書きます。
自分が書いていて楽しい山場・または話の山場まで書きます。
そこで使った台詞または単語、状況などをそのまま使えそうなところがないか、これまで書いたところを戻って探します。
仕込みます。
終わりです。
これは伏線か?とお思いでしょうが、これを繰り返すと段々伏線を仕込むのに悩まなくなってきます。
単に私がそういう話が好きだとも言います。
これは個人的好みをおおいに含んだ話になりますが、人の言葉使いはわりと偏りがあるもので、同じような言い回しや単語を使う方が一つの人格としての説得力が出ると思います。
しかし、あまりに高い頻度で同じ言葉を並べるのは抵抗がある……ということで意図的に散らしつつ、統一感を演出しつつ、さらにそれを上手く使うと伏線っぽくも見えるということです。

これに慣れてくると書きながら仕込めるようになってきます。ここは後々こういう風に繋がってくるから情報を小出しにはしておくけどあまり書きすぎないようにしよう……といった具合です。
伏線とは言いましたが、単純にいきなり「こういうことをしていました!」と提示されるより、本当に積み重ねがあったことを実感してもらいたいという方が適切かもしれません。
なんでもないことのように書いておきながら実は後の展開に繋がってくる、という構造です。ちゃんと話のヒントをちりばめておくと話の説得力が増すんじゃないかなー……?と一応、自分ではそう思いながら書いています……。

意味深なものや印象的なものをたくさんちりばめておいて、後々書き進めていく時にあの時のあれを今ここで使う!!といったものが足し算の伏線だと思っています。
引き算の伏線は最初から一部の情報をマスキングしておき、必要に応じて開示していく、という形です。
足し算引き算それぞれ

【足し算】そんなに慣れていなくても一発で仕上げられる気がする、派手、華がある、予定変更しやすい、無駄が出るかもしれない
意味深なものがたくさん置いてあるが全て使うわけではない脱出ゲームのような感じ
全て使いきる場合は洗練されているように感じるが、同時に展開の予測もしやすくなるので意外性を出す工夫が必要

【引き算】後からいくらでも仕込める、慣れていないと時間がかかるかもしれない、緻密に見える、日常に紛れ込ませやすい、仕込んでから取りやめるのが面倒かも、無駄な意味深さがない
「あるはずのものがない」違和感に気づいて謎解きする感じ
情報管理や視点管理が比較的シビアなので、プロットを作らずに書くタイプには不向きかもしれない

盛るか、ぎりぎりまで削ぎ落すか、雰囲気も変わってくると思います。
どちらもプロットをしっかり作り込むタイプなら意識するだけですぐ出来ます。
足し算の場合はどういったものを鍵にするか、小道具として使うかを考えればよく、引き算の場合はどの情報をマスキングすると面白くなるか、何故その情報が伏せられているのか、を考える形です。


・「プロットを練る」について

話の構成について述べてきましたが、「プロットを練る」というのは具体的にどういうことをしているのか?を、ここまでの内容を踏まえて、どう組み合わせていくのか、書いていきます。

・テーマ(主となる書きたいこと)
・コンセプト(どういう味付けにするか)
・モチーフ(象徴するアイテムや例えに多用するもの)
や他にも書きたいことを考えてから、それを盛り込んだ話を作っていきます。

私は三人称一元視点が得意なので大抵それで書きますが、テーマやコンセプトによって一人称を使い分けています。
ここでいうテーマ、コンセプトについてもう少し詳しく説明します。

・テーマ(主となる書きたいこと)
これは「どういうものが書きたいのか」なので、種別はその都度変わります。
ミステリー調で書きたいのか、大人がままならない感情をどうにかしようと互いに努力するのが書きたいのか、旅行記が書きたいのか、告解が書きたいのか、キャラクターの特定シチュエーションにおける反応を書きたいのか、話を書く動機です。
例えると、食べるものを決めるときに
辛いものが食べたい、あっさりしたものが食べたい、鶏肉が食べたい、和食が食べたい、低糖質なものが食べたい、簡単に済ませたい、など、様々な理由が存在する感じです。
どれも「それを選んだ理由」ですが、判断基準がバラバラです。

・コンセプト(どういう味付けにするか)
テーマをどう料理していくか、という部分です。
例えとして、

ミステリー調で書きたい
→意外性とホラーのミックス、エルム街の悪夢風
→でっかい黒幕を用意、書きたいところだけ書く!細かいことは気にするなシャーロック・ホームズリスペクト
→後味が悪い!でも話は緻密でめちゃくちゃ面白い!主人公の設定の面白さミス・マープル
→最初から何が起きたかわかっている古畑任三郎スタイル
→大どんでん返しや叙述トリック

大人がままならない感情をどうにかしようと互いに努力するのが書きたい
→日常を積み重ねて距離を縮めていく
→話し合いによって解決を試みる
→一から新たに作り上げる
→問題を共に解決することで関係性が変化する

など、何をどうするかが変わってくるので、テーマをどの方向性で書いていくのか、というのがコンセプトです。

・モチーフ(象徴するアイテムや例えに多用するもの)
話の一部分、キャラの心情や関係性の変化(または不変であること)、時間経過などをわかりやすく表現するために使います。

例えば、
向日葵
→発芽し成長していく過程で時間経過を表し、二人の関係性が変化していく象徴とする


→どこへでも自由に行ける可能性の象徴として状態を表す

二人の思い出の品
→誰がどう扱うかでそれぞれの心情や優先順位を表現

この
・テーマ(主となる書きたいこと)
・コンセプト(どういう味付けにするか)
・モチーフ(象徴するアイテムや例えに多用するもの)

を設定しながら、話の流れを考えます。

先にも書いたように、私は感情の動きで話の流れを考えます。
まず話のスタート時点を設定し、
・誰が何を知っていて
・何を知らないのか
・それをいつ知るのか
・ずっと知らないままなのか
・知るならいつ/どういった方法で知るのか
といったことを考えます。
情報のマスキングをする感じです。
神視点で全てを考えてから、登場キャラの目線に下りて、ところどころそのキャラが知り得ない情報を塗りつぶしていくのに近いです。

話の初期設定から、
・実際の振る舞い(建前・社会的/他者にどうみられるかを意識した行い)
・本当の性格・本人が周囲にどう思われていると思っているか
・本人も気づいていない感情や考え
などをふまえながら
・何をどう考えているか
・考えていることなどがどう表に出ているか
・何を意図して、それを相手がどう受け取ったか
・意図していない部分がどう生まれてどう影響を及ぼすか
・相手が何から何を読み取ったか
のタイムラインを作っていきます。
上手くいかなければ別の展開や遡ってそもそもの設定をいじります。

もう少しシンプルに言うと
・誰の、何が、誰に、どう影響したか
をひたすら考えます。
あとはコンセプトを元に、というかテーマやコンセプトをどう表現していくかを考えます。
また、テーマやコンセプトのために話の内容を変えたりもします。

プロットは話の流れを決めるものですが、
同時に、どう演出するか?を決めていくことを「プロットを練る」と表現しています。

絵コンテやネームを切る感覚に近いかもしれません。
このあたりのことはもう少し上手く言語化出来そうだったら追記します。

おわり

ざっと書いてきましたがどうでしょうか。
私が書いたものをご存知ないとイメージしづらい部分があるかもしれません。
タイトルにもある通り二次創作での話で、具体的なサンプルをお出しできないため、こういう人もいるんだな~程度で読んでもらえると嬉しいです。
過去の自分がメイキングを作っていたのを読んで面白かったので、きっと少なくとも未来の私は面白がって読んでくれることと思います。
小説のメイキングは読んでいて面白くて好きです。他人の思考が言語化されたものを読むのは楽しいですね。これを読んでくださった方も書いてくださるといいな~と思いつつ、ひとまず今回は終わろうと思います。
お付き合いくださり、ありがとうございました。

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