波の行く末
海は全ての始まりですから、全ての調律を担い、全ての均衡を保とうとする、全ての基準なのかもしれません。
大岩が砂粒になるまで打ち続ける波と同様に、波音もまた、目には見えずとも、乱れた呼吸、速まる心拍、不協和な身体の余力を見つけては、原初の拍に引き込み、宥めるように咀嚼を繰り返し、人が心地よいと感じる調子を思い出させてくれます。
海が静かになる時は、完全な均衡が訪れる時でしょう。
海が波打ち続けるのは、世界が終わりに向かっているからでしょう。
だからこそ、このまばらで不規則なだけの音が、命あるものには、生への問いへ近づくメトロノームのように聞こえるのかもしれません。