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Polar night

顔を露にすると表示からそいつが消える、という運動を繰り返している夜。少し苦しくなって笑う。痛みが陳腐で笑う。目に入るのは常にセックスを求めているマスクマン達の行列。
痛みは確かに蓄積されているけれど、昨日も今日も青空の振りをして学校に行く。そして最近は錠剤が効く。容量は守っているから、きっとプラシーボ。酒とは分けて飲んでいる、まだ。
さっき何年かぶりに鼻血が出た。驚くほど鮮やかな赤だった。この体に流れる血がこんなに赤で、まだ自分が人間を続けていることが面白かった。一つ一つの苦しみから生を感じることさえできていないなんて。
苦しくなって笑う。痛みは陳腐だとしても確実に続いて、小さな死を作っていると思って笑う。
僕から出る愛はいつも僕から出る愚かさに殺されている。幾つもの亡霊が僕の体を埋めつくしている。愚かさは僕の器官を殺しながらそのうち奥までやってくる。そうして日常に擬態したこの極夜を止めてくれるはず。
甘き死よ来たれ、艶やかに。

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