見出し画像

暇にて#1

僕のバディを語りたい。

僕にはバディがいる。もちろん仕事のだ。
年齢はもう70歳を過ぎている。
少し猫背で分かりにくいものの、身長は180センチを超え、体格もがっしりしていて、白髪で、いつもオールバック。
ギョロッとした大きな目で、ギロリといつも眼光を光らせている。
イメージするなら金剛力士像なんかを思い浮かべてもらえるといいと思う。

性格も荒いし、口も悪い。昔話も同じストーリーをもう何回聞いたかわからない。
現代の最前線で活躍する人達が、淘汰しようとしているものがそっくりそのまま残っているという感じ。

僕のこともしっかり罵る。
一応僕も昭和生まれなわけだけれど、30歳を超えて、直接人に「ばあか」と3回連続で言われたりなんてすると思っていなかった。
しかも真顔でだ。

1回目で聞こえてる!聞こえてますからー!

こういう時は若手のコメディアンみたいなリアクションで乗り切ることにしている。
ちなみにバディというのも僕が勝手に思っているだけで、本人にそのつもりは毛頭ない。

でも僕もしっかり噛みつくし、納得のいかないことはしっかり話し合う。
バディもなんでも否定するわけじゃなく、理屈や筋の通った意見にはうんうんと、しっかり聞いてくれることを僕は知っているのだ。

超がつく現場主義で朝も誰よりも早く出勤して仕事をしている。それに対して文句も言わないし、自慢もしない。

始業の時間まで自分の好みの音楽を流して、鼻歌まじりで慣れないパソコンと戦っている。
時々、独り言とは思えない音量で「なにぃ?」とか「この野郎」とか「間違っちゃった」とか言っているのもなんだか憎めない。

時折、仕事終わりに送迎を頼まれることがある。
特に用事もなければ快諾するのだが、一応どんな用事か聞いてみると、少しはにかみながら
「まあ、ちょっとな、かみさんとな、デェトなんだ」
とか言ったりするから、さらに可愛らしい。
「あら、素敵」とだけ返して、終わる。
それ以上言おうものならどんな罵詈雑言が襲ってくるか分からないから。

あまりにもたくましく、生命力に溢れている人だから、年齢を忘れてしまうほどだけれど、この職場を去るまでのカウントダウンは始まっている気がしている。
隠居をして、気ままに過ごしたってなんの問題もない年齢だ。

その時が来るまで、元気なまま僕に悪態でもついていて欲しい。

僕もそれまで感謝と敬意を忘れずに反抗していこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?