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ちゃぶ台の上から#3

冬が来る。
初雪からそのまま2、3日降り続き、雪はあっという間に町を白く塗りつぶしたけれど、その後の暖気でさっぱり解けてしまった。
それでも地面の熱は少しずつ奪われ、きっと次に降る雪は解けずに積もり続けるだろう。
北海道ではそれを“根雪(ねゆき)”と呼ぶが、良い表現だと思っている。文字通り雪が地面に根を張り、春が来るまで居座り続けるのだ。

北海道に生まれ育って、34年。
その歳の分だけ冬を越してきたことになる。
飽きるには事足りる回数だとも思うし、実際に辟易しているところもあるけれど、毎年、初雪の日はなぜだか気持ちが昂揚する。

それは僕が冬に生まれたせいもあるのかもしれない。
僕も兄も12月の生まれだし、ついでに言えば両親の結婚記念日も12月だ。幼少期はそれぞれの記念日が月の前半に来て、祝ったかと思えばクリスマスが来て、その日の朝は早起きをして、枕元のプレゼントをおそらくサンタクロース本人であろう両親に自慢したりして、それが終わった矢先に正月が来る。夜更かしをしても怒られないし、何より親戚一同からお年玉と称した現金を貰える一大イベントだ。
数千円でも子供の僕にとっては余りある大金で、その札束を両手で数えて、あれも買える、これも買えると妄想を膨らませるのだ。
ものの数分で札束は母親に没収されるのだが、後で1つだけ好きなものを買って良いと許可が下りる。そして必死に考え抜き、至極の一品をおもちゃ屋さんで手に入れるのだ。

そんな冬のワクワクを未だに僕は覚えていて、初雪が降るたびに、そのスイッチが押されて、勝手に気持ちが盛り上がってしまうのかもしれない。

当然、あの夢のような日々はもう帰って来ないけれど、この胸の小さな喜びのような気持ちはいつまでも持っていられたらと思う。
その喜びを今度は与える側になれたら、とも。

こんなことを書いてる間にも季節は足早に冬に向かっている。
今夜は身体が暖まるものでも食べて、一杯やろうじゃないか。


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