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灯りを見つめて#2

髪を切った。

2ヶ月ぶりだ。前髪は鼻先まで伸び、整髪料を付けても思うように動いてくれなくなる。

ここ数年はもっぱら床屋に行くことが多い。
顔剃りもしてくれるし、何よりそこの店の雰囲気が好きなのだ。
店主は僕より少し年上くらいだろうか。
落ち着いた口調ではあるが、茶目っ気があって、会話の端々にユーモアが折混ざる。
話をしながらも、仕事はきっちりこなしてくれる。
伸び切った僕の髪が手際良く、クリッパーと鋏で刈り取られていく様を眺めるのは、なんだか気持ちがいい。

今年、髪を切るのはこれで最後だ。
「よいお年を」
店主にそう告げ、店を出た。
何気なく口に出した言葉に、急に年末の気分にさせられた。
今年もあと1週間ほどで終わるのだ。
髪を切るというのも一つ、区切りになったな、と。

そんな年末の気分にそそのかされて、普段あまり見ることのない占いで自分の運勢を調べてみた。
来年の運勢を見ようとネットを開いたのだけれど、ふと、今年はどんな運勢だったのかが気になった。

以前教えられた、当たると噂の占いのサイトを見てみると、どうやら僕のこの1年は「激動」だったらしい。
そして、「区切りになる1年」とも書かれていた。
こういう風に誰かに言われると、そんな気がしてくる。

確かに、まず生活のスタイルが変化した。
今まで趣味に没頭していた時間が圧倒的に減ったのだ。
ここ数年、自分のために時間を費やしてきた。
好きなことを好きな時に好きな分だけしてきた。
それについてまったく後悔はないし、とても楽しい時間だったと思う。
自分と向き合う時間もとても重要だと思うし、今もそれは僕にとって必要なものだとも思っている。
けれど、その時間に浸かりすぎることへの恐怖心や、言い知れぬ焦燥感のようなものも同時にあって、それが、一旦離れた方がいいと足を止めさせてくれたように思うのだ。

おそらくそれが分岐点。
多分、僕は別の道へ足を向けたのだ。

そして引越しをした。
きっと今までの自分から変わるために必要なことだったのだ。
10年過ごした部屋を出て、新しい暮らしを始めた事は僕にとっては激動だったのかもしれない。

気まぐれもまた、必然なのだろうか。

年の瀬に、占い師のおかげでぐるぐる考えさせられることになったけれど、

これも一つ、区切りということで。

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