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ちゃぶ台の上から#4

白髪が増えた。

そりゃあ、そうだ。
もうすぐ35歳になるわけだから。
分かっていても案外ショックなもので。
若作りを意識しているつもりはないが、せめて気持ちくらいはフレッシュにいたいし、見た目も少しは格好良くしたい気持ちもある。
それでもやはり歳を追うごとに、少しずつ、何かが変わっている。

諸先輩方が口を揃えて言っていた、脂っこいものが食べられなくなったとか、今は肉より魚を食べることが多いだとか、そういう変化もしっかり自分の身に起きている。
焼肉屋に入ってメニューを見ても、カルビはほとんど視界にも入らないし、麺類といえばラーメンばかりだったが、蕎麦もいいなと思うようになった。
なんて事ない話だけれど、なぜかそこには諦めにも似た思考が働いているような気がして、少し寂しい気持ちになったりする。

着る服が同じものばかりになったり、最新の音楽ヒットチャートにあまり興味を持てなかったり、一丁前に将来に漠然とした不安を抱えてみたりすることもある。
こうして改めて文字に起こすと老化のテンプレートをなぞっているような気分になって少しため息が出た。
もう少し歳を重ねたら、“あの頃は良かった”とか、“最近の若者は”とか言いたくなるのだろうか。
ため息どころか身震いがする。

けれど、この歳になると自分の身に起きる変化が少し緩やかになり、その変化に度々気付いて、理解しようとするようになった。
白髪が増えたのはストレスかな。とか、目尻の皺は沢山笑えているからかな。とか。
まるで答え合わせでもするかのように、自分の変化を楽しんでいたりもするのだ。
これが大人になったということなのかは分からない。でもシンプルに、これまでの自身の変化を踏まえて、これからどんな風に変わっていくのか、ワクワクする自分がいる。

ただ沈黙し、座しているちゃぶ台を眺めながらそんな事を考えてみた。

さあ、今夜の夕飯はハンバーグとフライドポテトだ。
明日は鉛のように重く感じる、胃袋と向き合うことになりそうだけれど。

それもまた、悪くない。

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