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[Column] 一次方程式の呪い

方程式の解法

こんな問題を解けと言われたら、たとえばどうするだろうか。

中学1年生で習う方程式である(より正確には一元一次方程式)。

われわれの多くが(それどころかほぼ全員が)、方程式を解くときは「X」の付いた項を「=」の左側、すなわち左辺に、それ以外を右辺に「移項」して各計算せよと学校で習う。

つまり模範的な解法は次のとおりである。

この解き方について、筆者は中学生の時分から今に至るまで一貫して気に食わないことがある。
それが、「X」についてくる「マイナス」である。


“「X」は左辺に”という強迫観念

方程式の目的は、「X」にあてはまる値、すなわち「解」を求めることにある。解を求める過程において重要なのは、「X」のみの辺と、数字のみの辺にそれぞれまとめることであって、「文字式を左、数字だけのものを右」はあくまでも作法のひとつであり、決して義務ではない。

もちろん、数式は左から読むものではあるので、最後には「X =(数字)」の形に書き直す必要はあるけれども、こと計算過程において、はじめからずっと「X」の項をすべて左辺に寄せておく必要はないのだ。ゆえに、次のように解いたところで、何も咎められはしない。

こうすれば、「X」にマイナスが残らないので、「両辺に-1をかける」手間がはぶける。

同じようなことは「等式の変形」にも言える。「等式の変形」は、一方の辺を[ ]内の文字だけ残るように変形するものである(これを「~について解く」という)。

こういう問題はふつう、いの一番に両辺を入れ替えて、[ ]の文字を含む辺を強制的に左に移すのが定石だが、わざわざそんなひと手間をかける必要はない。要は、どちらでもいいから一方の辺を[ ]内の文字だけにすればよいのだ。

解答欄に書くときに左右を入れ換える。


もはや“呪い”

筆者は塾の講師だからかもしれないが、最後、両辺に「-1」をかけ算して符号を入れ替えるというのが、どうにも不要な計算ミスを生んでいるような気がしてならない。

現に、上の解法を筆者が誰に教えられるでもなく自らやり始めたのは、中学生のころに自分自身、符号によるミスを頻発させていたせいでもある。

“「X」を左辺に”というのは、筆者からすれは強迫観念というより、もはや“呪い”である。

多くの中学生は案外と律儀で、一度「こうだ!」と習ってしまうと、頑なに方法を変えない。それ自体は決して悪いことではないし、批判するつもりもないのだが、ただひとつ言えることは、筆者は塾講師として「いかにおかしな減点をなくすか」という視点で方法論を考えるので、総合点を上げたいなら、上に示した「別解」も試してみる価値はあると思っている。学校で教えられることだけが正解ではない。

被験者第一号であるところの筆者が言うのだから、多くは間違っていないはずである。

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