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投票率ジャーナル 【緊急特集】 沖縄におけるIRと自民・維新についてのレポート

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1 【緊急特集1】 急展開!金を貰った5人とは誰なのか?

 全てのきっかけは、元旦に朝日が掴んだ大スクープだった。

「IR事業をめぐり、中国企業が日本の政界に幅広く工作しようとしていた疑惑が新たに浮かび上がった。

 関係者によると、5人の内訳は自民党4人、日本維新の会1人。北海道を含むIR誘致を検討していた自治体出身の議員や超党派でつくる「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」の幹部らで、閣僚経験者や現職の政務官も含まれる。

 5人に現金を渡したと供述しているのは、贈賄容疑で逮捕された中国企業「500ドットコム」(本社・広東省深圳)の顧問で、元沖縄県浦添市議の仲里勝憲容疑者(47)。同社側の別の3人が2017年、計約2千万円を無届けで日本に持ち込み、国会議員らへの現金提供を計画。衆院解散当日の同年9月28日に秋元議員へ300万円を渡したほか、同時期に「国会議員5人にそれぞれ100万円前後を渡した」と話しているという。」(朝日新聞 1月1日の記事から抜粋)

10年ぶりに現職国会議員の逮捕まで発展した中国企業「500ドットコム」によるIR汚職疑惑。現在クローズアップされているのは、2017年の総選挙時に500ドットコム社側が国会議員に現金を渡したという疑惑であるが、どうやらこの時に現金を貰ったのは、秋元氏だけではないようだ。

 朝日の記事の後を追うように、産経も注目すべき内容の記事を出している。

「関係者によると、仲里容疑者が特捜部の調べに対し、衆院解散日の同年9月28日に衆院議員会館内の事務所で秋元容疑者に「陣中見舞い」名目で300万円を渡したほか、同時期に「5人の国会議員にそれぞれ現金約100万円を渡した」という趣旨の供述をしているという。

 5人はいずれも、北海道や九州・沖縄選出の衆院議員で、所属は自民党4人、日本維新の会1人。超党派のIR推進議連で幹部を務めるなどしていた。」(1月1日 産経新聞記事より)

 二紙の情報を総合すると、今回現金を渡したという証言があったのは、

① 自由民主党の4人の国会議員と、日本維新の会の国会議員
② いずれも、北海道・九州沖縄地方の選出
③ 閣僚経験者と現職政務官も含まれる
④ IR 議連の幹部ら

のいずれもの条件を満たす人物であったということだ。現職国会議員という表現がなされていないので、現職ではなく、2017年の選挙時点で現職だったが、現在は落選している人物の可能性もある。

 今回、Spread Voter は2014年時点でのIR議連のメンバー一覧を入手したので、ここに掲載しておこう。



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この表は2014年総選挙前のものとみられる。国会議員の半数近くが参加していることを見ると、いかにIR議連が強力なものであったか、その一端を窺い知ることが出来るだろう。

 ではこの中で、維新議員と現職政務官、そして閣僚経験者、これらの特徴から、金銭を受け取ったという国会議員を絞り込んでいきたい。

① 維新議員

 これに関しては、ツイッター上で、沖縄選出の某議員の名前が挙がっているが、両新聞とも現職であるとは記載していないので、断定するのはまだ早い。慎重に見て行こう。

 まず、北海道沖縄選出の維新議員で、2017年の総選挙時に現職だったものは誰だろうか。調べると、次の三氏が浮かび上がる。

 下地ミキオ 元大臣 沖縄一区選出
 かわの正美     福岡四区選出
 儀間光男  元浦添市長 参院比例選出

まず河野氏から見て行くと、氏のブログにIR 議連の勉強会に出席したという記述がある。

「本国憲法施行70周年記念式が開催され出席致しました。
その後、国際観光産業振興議員連合(IR議連)勉強会にて、ギャンブル障害の治療などについて各博士からお話しを伺いました。
続けて、森林・林業・林産業活性化推進議員連盟総会に出席致しました。
副幹事長に就任し、平成29年度林野庁関係予算と森林環境税(仮称)創設への動きについて説明を受け意見交換をしました。

厚生労働部会を開催し、児童福祉法・児童虐待防止法改正案について厚生労働省より説明を受け、質疑応答を重ねました。」

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その勉強会の様子(かわの正美公式HP より)

そして、先程の表にもIR議連のメンバーとして名前が挙がっている。

そして儀間光男氏。今回逮捕された仲里容疑者が活動する浦添市を地盤としていたこともあり、関係性が疑われるが、2017総選挙に立候補していないため金銭を受け取る理由に乏しいこと、そしてIR議連に参加していないこと、国会でのIRに関する発言も一回しかないこと、松本市長との関係等踏まえると、今回金銭を受け取っていた可能性は低いのではないかと推察する。

 一方、下地ミキオ氏もIR議連のリストに名前はない。だが、このリストはあくまで2014年衆院選前に議員だった者を対象とするもので、この時期下地氏は落選していた。そして、下地氏の周辺を洗い出していくと・・・

ここで、かつて国民新党時代にIR副会長を務めていたことが書かれている。

この記事にはIR議連の主要メンバーと役割も書かれているので、全て載せておこう。

「IR議連の主なメンバー

【当選】
会長    細田博之 (自民) 議連のリーダー、清和研の派閥領袖に就任
副会長   小沢鋭仁 (維新) 国対レベルで他党間調整に尽力
同     柿沢未途 (維新) 東京都議時代から15年の推進派
同     佐藤茂樹 (公明) 公明党内の調整を進める
同     鈴木克昌 (民主) 生活の党のIR法案共同提出に尽力
同     前原誠司 (民主) 民主党内の調整を進める
幹事長   岩屋毅  (自民) 自民党有志議連時代からの議論を牽引
副幹事長  石関貴史 (維新) 法案提出者のひとりとして維新で奔走
同     遠山清彦 (公明) 佐藤氏と2名体制で党内調整を進める
事務局長  萩生田光一(自民) 岩屋氏とともに議連の屋台骨を支える
事務局次長 玉木雄一郎(民主) 前原氏と2名体制で党内調整を進める

【落選】
最高顧問  石原慎太郎(次世代)都知事時代にお台場カジノ構想を推進
副幹事長  村上史好 (生活) 生活の党で鈴木氏とともに党内調整
事務局次長 田沼隆志 (次世代)次世代の党の党内調整に奔走
会員    岩永裕貴 (維新) 維新IR議連事務局長として党内調整

【復帰】(前回の選挙で落選、今回復帰した以前の主要メンバー)
牧義夫  (維新) 民主党政権時、議連の事務局長を務めた
下地幹郎 (維新) 国民新党在籍時、議連の副会長を務めた」

そして最近でも、

一貫してIRに親和的かつ、IR議連の勉強会に出席したこともわかる。これをみるに、氏がIR議連と現在も極めて大きな繋がりを有していることは間違いないだろう。

 そして、下地氏は大臣経験者だ。もし下地氏であれば、「閣僚経験者」かつ「維新議員」両方の特徴を満たすことになる。

 下地氏やおきなわ維新については後述するが、現時点では仲里氏が沖縄を拠点にしていることも含めて、河野氏より下地氏を疑わざるを得ない状況であろう。

②現職大臣政務官

これははっきりと現職と呼ばれ、かつ北海道九州地方選出(全国比例選出は除く)となると、ほぼ数人に絞られる。

井上 貴博 福岡1区
岩田 和親 佐賀1区(比例九州)
渡辺 孝一 比例北海道
宮崎 政久 沖縄2区(比例九州)

それぞれ見て行こう。

先程の表を見る限り、IR議連に参加しているのは井上氏及び宮崎氏であり、他の二人は参加していない。井上氏は、国会において、石井啓一大臣の不信任決議案の際に反対討論を行っている。そのリンクも載せておこう。

そして宮崎政久氏は、仲里氏が拠点とする浦添市を含む沖縄2区選出の議員であり、氏自身も半グレリーダーとの写真など不祥事を起こしている議員である。沖縄と北海道が主な舞台になっていることを考えれば、福岡の井上氏より宮崎氏が関わっている可能性が高いだろう。

2 そもそもなぜIRは沖縄を狙うのか

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これはかつて仲井間県政時代にIRを推進していた県の財界が行っていたカジノ・エンターティメント検討委員会の資料である。

ここにリンクを掲載しておく。

この委員会が実施した海外視察に同行したメンバーは実に豪華だ。

元山氏は保守系の沖縄を代表する研究者であり、仲田氏は那覇商工会議所の専務理事かつ県の観光商工部長を務めていたこともある。株式会社イタク 代表取締役の糸数久美子氏に、国場幸一氏と言えばいわずと知れた國場組の代表である。

これからわかるように、そもそも沖縄におけるカジノ誘致は仲井間県政時における財界の大きな関心事であり、海外視察を含むこうした動きは非常に活発化していたことを抑えておく必要があるだろう。

 そして、ここからが重要であるが、沖縄におけるIR導入をもくろむ勢力にとって、沖縄県知事選は何よりも重要だった。

IR業界が沖縄県知事選にどれほどの関心を抱いていたか、それは当時のカジノ関係の情報サイトを見るとわかりやすい。


「オール沖縄知事候補の玉城デニー氏の勝利により、沖縄のIR主催をめぐる競争参加への道が完全に断たれる可能性が出てきている。

玉城氏は2014年に沖縄の経済基盤をギャンブル事業に置くことは沖縄の人々の尊厳を損なうという理由で前任者らが推奨していたカジノ政策に対して反対の立場を取った故翁長雄志前知事の後任者とされていた。

玉城氏自身も野党議員としてIR実施法に対して強く反対しており、反カジノの姿勢を変える可能性は極めて低い。

日曜日の選挙に先立ち何ヶ月も前から保守派の政治家や一部の企業も今年はオール沖縄の勢力が崩壊し、過去のIR計画が復活する可能性があると踏んでいた模様。

IRオペレーターらの中でも500ドットコムの社最高経営責任者である潘正明氏(Zhengming Pan)とパートナーと成り得るレ・アンバサダー・クラブ(Les Ambassadeurs Club)社最高経営責任者のケビン・マゴワン氏(Kevin McGowen)は近年沖縄にて2つのイベントを開催し、さらに7月には沖縄のビジネスマンや政治家相手にカジノの案を売り込んでいた。

さらにニッケイ・アジア・レビューは数日前にシーザーズの国際開発社長スティーブン・タイト氏(Steven Tight)の言葉を引用し、「沖縄は観光地としては素晴らしい場所であるから知事が統合リゾートを支援してくれたら我々にとってこの上ない機会になるだろう」と記事で述べている。

これらの希望の実現は少なくともIR構築における第一段階では難しいと思われる。(AGB Nippon)」

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これらを見ればわかる通り、今回の知事選でもし自民系が勝てなければ、IRに立候補できるのは十年単位で遅れることが確実となる為、沖縄のIR関係者にとっては負けられない戦いだったことは間違いない。それを示すかのように、県知事選の自民系候補者の佐喜眞氏の後援会は秋元氏の後援会に支出していることが収支報告書から明らかになっている。

オール沖縄が辺野古のために負けられない戦いだったように、自民のIR関係者にとってはIRのために絶対負けられない戦いだったのだ。

そう考えると、衆院選ですら2000万円単位の金をばら撒いた500ドットコム側が、沖縄県知事選で何もしなかったとは考えにくい。秋元氏を含め現在捜査中の2017衆院選ルートだけでなく、2018年県知事選ルートで何かしらの不祥事が今後発覚する可能性は大いにある。

いずれにせよ、この事件はまだまだ氷山の一角とみていいだろう。

3 沖縄維新の怪 ~自民県連から1千万円の不思議~

県知事選のし烈さを物語るエピソードとして、自民沖縄県連が18年に党本部から受け取った金額は、前年の7倍だった。それだけではない、なんと、18年に沖縄維新の会は、自民党沖縄県連から1000万円の寄附を受けていたことがSpread Voterの調査で判明したのだ。

同年の維新沖縄支部が維新党本部から交付された金額が436万円だったことを考えると、この金額がいかに異質なものかわかるだろう。同年の県連の収入の4割近くをこの寄附が占めるというのだから驚きだ。県知事選の軍資金との見方が強いが、それでも異様である。

 維新沖縄県連の中心人物である下地ミキオ氏は、菅氏と懇意なことで知られ、自民党復帰を模索していることは既に報じられた通りだ。そして、県知事選で菅氏は並々ならぬ執着を見せた。そこから考えるに、この異様な寄附に菅氏が一枚噛んでいると考えるのはおかしいだろうか。

 沖縄県知事選だけでなく、県連が昨年の選挙では県民からのイメージの悪い菅氏を隠すような戦術をとったにもかかわらず、菅氏は今年も沖縄の選挙に執着を見せている。この異様な執着は2018年の沖縄県知事選で、内地からの創価学会大量投入であったり、維新への1000万の寄附、さらには偽の世論調査データの流布など、なりふり構わない戦術を生み出した。

この執着の裏に、IRが隠れているのかは分からない。だが、昨年から続く菅つぶしと言われるような一連の動きと今回の沖縄の波乱を一続きとして考える者もいる。

今年の県議選は今回の捜査の進展によっては大波乱が予想される。また、新たな情報が入り次第、この記事も更新したい。

【投票率ジャーナル 緊急特集号 完】

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