(闘病日記5)そんなこと言われたってさ
5/18
ここ1週間、体調はすごくいい。というか、悪いところは何も感じない。ステロイド剤が効いて、腫瘍の成長が止まっているためだろうか。そうなると、なぜ僕は今病院にいるのだろうかという疑問が常に湧いてきてしまうのだが、腫瘍があるからしょうがないと言い聞かせ、今日もゼルダの伝説をプレイする。
実は昨日、1週間以上かかっていた検査結果が出たと先生から報告があった。
病名はB細胞リンパ腫というものだそうだ。本来、外からの侵入者を撃退する役割を持つB細胞がガン化し、異常に増殖してしまい、腫瘍化、他の臓器を圧迫という流れだと思う。(ネットで自学した感じ)
ということで、今週末くらいから抗がん剤治療が始まる。詳しいことは、本日の午後、母親を交えて先生から話があるそうだ。
抗がん剤治療と聞くと、苦しいイメージがある。実際に調べても、副作用としては、吐き気、だるさ、発熱、脱毛、血尿、免疫力低下など恐ろしいものばかり書いてある。特に私は脱毛が嫌だ。禿げたらもう死にたくなりそうだ。そして、もう一つ先生から直接言われた副作用が、抗がん剤治療によって無精子症になる危険性があることだ。
もし完治しても自分の子供を作ることができないかもしれない。この事実はかなり心に深く刺さった。今子供が欲しいか?と聞かれれば正直あまり思わない。彼女と愛犬との生活が私は好きだ。でも、将来はどうなるかはわからない。不妊治療は精神的にとても辛いと聞く。無精子症は治る可能性はあるようだが、これがきっかけで好きな人とお別れする可能性もある。そんなこと辛すぎる。
そんな話があり、抗がん剤治療をする前に精子を凍結保存するかどうかの判断を求められた。そんなこと急に言われても、めちゃくちゃ困る。そんな判断をする以前に、無精子症になるかもという心のダメージが処理しきれない。なにこれ。ガンなんて治療で治るやろと軽く考えてた自分に、重いカウンターが来た。きつすぎる。こんなこと1人病室で考えていたら、かなり死にたくなった。
精子の凍結保存は、初期費用は6万円ほど。以降、1年経つごとに保存更新という形で2万円課金という形のようだ。理論上は永遠に凍結しておけるらしい。だが、凍結精子を使った妊娠確率は30%ほどだ。つまり、お金をかけて、時間をかけて保存しても、7割の確率では子供は作れないのだ。それでも保存をやるのか。ここでやらないという選択を選べる強い人間はどれほどいるのだろうか。目の前に少しでもひかりを出されたら、お金がかかろうとすがってしまうのが人間だろう。健康を取り扱う不安を煽るサービスって、いいビジネスなんだろうなと思った。思考停止で人が来るから。だってそれしかないんだから。
たぶん、私は精子保存をする。たとえ、やって最終的に上手くいかなかったとしても、やらなかった後悔には負けるだろう。
保存すると心に決めても、なぜかずっとモヤモヤする。生殖能力を失った人間はどういう価値があるのか。LGBTは生産性がないと言う言葉が少し思い出された。こう言う気持ちだったのか。
なんか少し疲れてきた。
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