黄色の贈りもの

夕日が照らしたのは、ゆーやんのほっぺたでした。

ランドセルの肩紐をぎゅーと握りしめ、学校からの帰り道をゆーやんは泣きながら歩いていました。

悲しいことがあったから、

悔しいことがあったから、

涙をながしていたのです。

でもどんな悲しいこと、つらいことがあったのでしょうか。

ゆーやんは家の玄関の前で、服の袖口で涙をふきました。

ランドセルを背負いはじめてから、なんだかお母さんの前で泣くのは我慢してるのです。

さぁ、泣いてばかりもいられません。

ただいま。

ぼそっとですが、言いました。

おかえりー。お母さんの声です。

ゆーやんは、この声を聞くと、ホッとしました。

でも、ホッとしたことにゆーやんは気づいていないのです。不思議ですね。

ランドセルを背負ったまま洗面所に行って手を洗って、うがいをしていると、足元にふわふわと猫のちょろがまとわりついてきました。

ちょろは、お腹はいっぱいのはずなのに、ゆーやんがおやつをくれるのを期待していました。

ゆーやんの足にまとわりついて、頭をぐりぐり

おやつのある場所へゆーやんを向かわせようとしているようです。

うにゃー、うにゃーと、鳴いてますが、ゆーやんは気にしません。

ランドセルを投げ出して、ひょいっとちょろを抱き上げて、ソファへ座りました。

ずずっ、鼻水をかむ音がお母さんに聞こえました。

どうしたの?

ゆーやんの膝の上にいる、ちょろまつものどをごろごろ鳴らしながら、ゆーやんの顔を見ています。

ふと、テーブルの上に目をやると黄色の包み紙に覆われた、なんだか見覚えのある箱が置いてありました。

これ、なに?

ほら、いつもおばあちゃんが送ってくれるでしょ?ゆーやんが好きだからってまた送ってくれたんだよ。

それは、ゆーやんの大好きなおまんじゅうが、入っているのです。

おばあちゃんは遠くに住んでいるので、なかなか会えませんが、遊びに行くと必ずこのおまんじゅうを食べさしてくれます。

食べていいの?

夕ご飯前だから一個だけだよ。

お母さんがペラペラ雑誌をめくりながら言いました。

ゆーやんはソファから降りて、カーペットにすわり、ビリビリ、包み紙をはがしていきます。

ちょろも興味深々です

いつもの絵柄がでてきました。

箱には踊っているひとの絵が書いてあります。

箱を開けると、丸いおまんじゅうが、ゆーやんに向かってほくほくわらっているようでした

一つとって、透明なフィルムをはがします。

やさしいおまんじゅうを、ぱくり一口。

ちょろがゆーやんの口元をじーと見つめています

もしかしたら、自分にもおまんじゅうがやってくるのではないだろうかと待っているのです。

おまんじゅうがゆーやんの大好きな食べ物になったのはおばあちゃんとの思い出があるからでした。

おいしいと思えるのはおいしいだけじゃないんですね。

おばあちゃんを思い出して、ゆーやんは元気が出てきました。

夜ご飯は、お父さんが作るから、お母さんとゆーやんで洗濯物畳むよー。

夕日が沈んで、さらには月が輝く頃、ゆーやんのほっぺたはあったまっていました。





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