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(韓国語)文法要素と連結語尾の組み合わせ 【-(았/었)었-】 #16

 前回まで、3回にわたって過去の -았/었- と連結語尾の組み合わせについて見てきました。今回はいわゆる大過去の -(았/었)었- と組み合わさる場合について解説します。ただ、ここ数回歯切れが悪くて申し訳ないのですが、いかんせん研究が進んでいない分野なので、これまでのわたしの研究と簡単なコーパス調査による中間報告のようなものとお考えください。

-(았/었)었- の用法

 まず、そもそもの -(았/었)었- の使い方について簡単に説明しておきたいと思います。以前研究対象にしたこともあり得意分野ではあります。
 過去の -았/었- を二つ重ねた形である -(았/었)었- は、過去の -았/었- と比べると、現在と断絶された過去を表すと言われます。そんな抽象的なこと言われても…となりそうなので、いくつかある -(았/었)었- の用法のうち、最も基本的かつ -(았/었)었- の使用がなかば必須の用法を紹介しておきます。それは、過去の -았/었- を使うと現在もその出来事の結果が残るような場合に、その結果がすでに残っていないことを表す場合です。例えば、가다(行く)であれば 갔다(行った)と言うと、発言した時点も行っていることになります。行くという出来事の結果が残っているんですね。で、もう結果が残っていない、行っていない、ということを言いたい場合に 갔었다(行っていた)と表現するわけです。
 日本語では過去形にしないけれども、韓国語では過去形で表現する場合があります。例えば「結婚している」は 결혼했다 だし、「似ている」は 닮았다 です。では、もう結婚していないとか、もう似ていない、と言いたい場合は?わかりますね。 결혼했었다 とか 닮았어다 と言えばいいわけです。

(1)
선겸: 아저씨 처음 봤을 때 생각나네요
현진: 처음 만났을 때? 지금보다 젊고 잘생겼었나
ソンギョム:おじさんに初めて会ったときを思い出します。
ヒョンジン:初めて会ったとき?今より若くてかっこよかったかな?

(런온 ep. 16)

 (1) の 잘생겼다(かっこいい)もそうですね。今は違うと言いたいときは 잘생겼었다 となるわけです。
 
 ここまで必須ではないにしろ、よく使われる -(았/었)었- の用法が、믿다(信じる)、걱정하다(心配する)などの精神的な活動を表す動詞とともに、もうそのようなことはしていない、と暗に述べる用法です。
 (2) であれば、"믿었었어요" と言うことで、今はもう信じていないことが暗示されているわけです。

(2) 【子供のころお父さんがクリスマスプレゼントを包んでいるのを見てしまったという話】
태무: 근데 어머님이 그러시더라고요
산타 할아버지가 너무 바빠서 포장만 맡기신 거라고
하리: 잘하셨네‎
태무: 그래서 그 후로도 몇 년간 산타 할아버지 쭉 믿었었어요
テム:でも、お母さんが言ったんです。サンタさんが忙しすぎて包装だけ頼まれたんだって。
ハリ:いいフォローですね!
テム:で、そのあとも何年間かサンタさんをずっと信じていたんですよ。

(사내 맞선 ep. 11)


-(았/었)었- と連結語尾

 これからの連載内容とも関わるので先に簡単に説明しておきたいのですが、連結語尾には否定の -지 않다 なり、進行の -고 있다 なり、過去の -았/었- なり…いろいろな文法要素と組み合わさるものもある一方で、組み合わせに制限があるものもあります。組み合わせが(比較的)自由な連結語尾としては -는데/ㄴ데, -지만, -니까, -면 などが、制限がある連結語尾としては -더니, -(아/어)서, -면서 などがあります。まだ登場していない  -게, -도록 はかなり制限があります。このような組み合わせにおける包容力 (?) は、連結語尾の後にどれだけ助詞をくっ付けられるか、といった他の現象とも関係してきます。追々ちゃんと説明します。
 さて、今回のテーマである -(았/었)었- との組み合わせが可能な連結語尾はあまり多くありません。文法的には可能で、言おうと思えば言えるようなのですが、実際によく使われるのは一部の組み合わせ、という感じです。今回はドラマに使われている例に限られますが、その実態を簡単に紹介しましょう。
 まず、-(았/었)었- と組み合わさって現れるのは連結語尾だとだいたい -는데/ㄴ데 です。圧倒的に他の連結語尾より多いです。-지만 はもっと書きことばっぽくなれば現れるでしょうが、ドラマのためか例はほとんどありませんでした。
 まず -는데/ㄴ데 の例から。(3) のように形容詞を用いた場合も (2) のように昔はそうだったけど、今はそうではない、というニュアンスが出やすくなります。(4) は "그땐"(そのときは)という副詞が一緒に現れていますが、-(았/었)었- と 그때 はしばしばよく一緒に登場します。当時はこうだったけど、今は、という前提を話すときのパターンです。

(3)
이렇게 작았었는데‎ 언제 이렇게 컸어, 아들?
これぐらい小さかったのに、いつの間にこんな大きくなったの、チュンミン(息子の名前)。

(슬기로운 의사생활 ep. 12)

(4)
서준: 차 편집장님이 이런 델 좋아할 줄은 몰랐네요?
은호: 고등학교 때 처음 왔습니다
그땐 파전만 먹었었는데 강 선생님이 참 좋아하셨어요, 이 술집
ソジュン:チャ編集長がこんなところがお好みだとは知りませんでした。
ウンホ:高校のときに初めて来ました。
その当時はチヂミばっかり食べてたんですけど、カン先生がすごくお好きだったんです。この飲み屋。

(로맨스는 벽책부록 ep. 16)

 (5) は -지만 の例です。過去に繰り返したことを述べるときにもよく -(았/었)었- は用いられます。(4) にも似たニュアンスが感じられますね。

(5)
우리가 싸우고 헤어지고 다시 만나기를 반복했었지만 그때마다 확신이 있었거든
그래도 우리는 절대 헤어지지 않을 거라는 확신
喧嘩しては別れ、ヨリを戻してを繰り返してきたけど、そのたびに確信があったんだ。
それでも絶対に別れることはないだろうっていう確信が。

(그 해 우리는 ep. 14)

 (6) は -면 の例で、これは #14 で解説した反実仮想の例とも考えられるし、単に過去の仮定とも考えられます。難しいですね。ただここでも 그때 があるので、その兼ね合いで -(았/었)었- が使われているのかもしれません。

(6)
미선: 야! 너 왜 그런 얘기를 이제 해?
혜진: 그때 얘기했었으면 너 여기 안 남았을 거잖아
ミソン:あんたなんでそんな話を今更するの?
ヘジン:あのとき話してたら、ここには残らなかったでしょ…

(갯마을 차차차 ep. 2)

 (7) は -면서 の例です。逆接的に「〜のに、〜くせに」というときは -았/었- との組み合わせがあることはすでに解説していますが、ここでは -(았/었)었- と結合しています。まれな結合例ではあります。

(7)
은호: 형이 연수 누나를 또 만난다는 게 이해가 안 돼‎
웅: 뭐?‎
은호: 그렇게 힘들어했었으면서 그걸 또 하고 싶어?
ウンホ:ヨンスさんとまた付き合うなんて理解できない。
ウン:なに?
ウンホ:あんなに苦しんでたくせに、また経験したいの?

(그 해 우리는 ep. 13)

 
 今回参照しているドラマの数がそれほど多くないのもあり、-니까 の例は見つかりませんでした。例としてはわりと見るんですけどね。ただ、上でも述べたように、いろいろな文法要素と組み合わせが可能なのは -는데/ㄴ데, -지만, -니까, -면 あたりの連結語尾で、特に -는데/ㄴ데 は包容力が一番ある連結語尾です。これは連結語尾の中で一番文に近いことを意味します。これは今後も重要な観点となってきます。
 長々と過去、大過去との組み合わせの様子を見てきましたが、次回からは推量、意志を表す -겠-, -ㄹ 것이다 などとの組み合わせについて深掘りしていきたいと思います。

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