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『白い病』スタッフ紹介!「美術編」

こんにちは!日本大学芸術学部演劇学科 令和5年度 総合実習A2『白い病』制作部です。

いよいよ本番を明日に控えた『白い病』。
スタッフ紹介の最後は、舞台上の世界観を創り上げる「美術」セクションです。今回は、美術に携わる4名にお話を聞きました。

左から兼弘さん(3年・美術チーフ)、井花さん(3年・小道具チーフ)、向井さん(2年・美術プラン)、原さん(3年・大道具チーフ)

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聞き手)
今回は美術チームの4名にお集まりいただきました。早速ですが、舞台における「美術」の役割について、教えてください。

兼弘さん●)
舞台美術は、視覚を支配するものだと思います。お客さんは一番最初に、言葉よりも色や形という物体で、この作品がどんな話なのか、どんな時代でどこのお話なのか、その状況を想像できるでしょうし、そういった意味で、美術はお客さんのファーストコンタクトになる、重要な役割を担っているのでないかな、と。

聞き手)
この『白い病』では、美術のデザインを決定するにあたり、学生による複数の美術案から1つのデザインを選ぶ、コンペティションが行われました。昨年10月~11月頃に実施された美術コンペについて、その様子はいかがでしたか。

兼弘さん●)
最初に演出の山田先生と『白い病』について作品の整理をし、中間発表を経て最終コンペを行いました。各々が中間発表に向けてアイディアを練り、そこで山田先生からいっぱいフィードバックをもらった人もいましたが、基本は自由にやらせていただいて、だからこその難しさを感じました。
今回は向井さんの、温かみのあるデザインが選ばれました。中には、たくさんの転換を想定したものや、すべての場面を一つの絵にしているものまで、5人がコンペに参加しましたが、ほぼ被りがなかったです。

聞き手)
いろんなデザイン案が出たのですね!なるほど。
大道具や小道具はどういった役割を持っているのでしょうか。まず、大道具の原さんからお願いします。

原さん■)
大道具は美術家からあがってきたビジュアルを、実際の舞台に具現化する役割を持っています。例えば、扉を作るにしても、扉の大きさとビジュアルはデザイナーから情報が来るのですが、実際に作るための細かい寸法や、どうすれば上手く機能するか、俳優がお芝居の中でスムーズに開け閉めできるか、それらをすべて考慮して、ベクターワークスという図面作成ソフトを用いて、設計します。
その図面から、製作するためにはどの木材や塗料がいるのか、全部洗いだして金額面も整理し、発注まで行います。
日芸には「workshop A」という大道具を作るのに素晴らしい環境があるので、そこで製作し、舞台上にセットを作り上げることが仕事になります。

聞き手)
ありがとうございます。
小道具の井花さん、いかがでしょうか。

井花さん▲)
戯曲と美術デザインをもとに、その作品の空間に登場するものを用意したり、あるいは自分たちで作ったりするのが大きな役割です。
演出家や美術デザイナーとすり合わせながら、必要な小道具を用意していきます。小道具と聞くと小さいものを想像するかもしれませんが、大きな家具類や照明具はもちろん、ほかにも本やグラスといった持ち道具と呼ばれるものも揃えています。小道具会社からレンタルしているものもありますが、中にはいちから手作りしたものや、既製品に加工を施したものもあります。また、演出助手や舞台部の小道具担当と協力しながら稽古場で使用する仮小道具の用意、製作も行っています。

聞き手)
ありがとうございます。
この『白い病』の美術デザインを担当した向井さんにお聞きします。デザインの特徴を教えてください。

向井さん★)
この戯曲を初めて読んだときに、物語がトントンと進んでいく緊張感をすごく感じました。それは物語に登場するはずの時間描写がなかったり、多くの恐怖が登場する物語だったからだなと思います。 山田先生からは、コンペの前に演出プランの説明があまりなく、自分が演出を考えているような気持ちもありました。
まずは、(歳曲が書かれた)当時の時代背景や、建築様式をしらべたり、登場人物の性格やその場面が物語の中でどういう意味を持っているかだったりを考えながらデザインを進めました。
場面転換がとても多いお話なので、どう舞台に落とし込むか悩みました。
最初に感じた緊張感をコンセプトに、1つの場面が進んでいる時にも、違う場所と同じ時間が流れていて、全てが繋がり合い関与している、その淡々と恐怖が蔓延する様子を見せようとデザインをしました。
私自身、いままで絵画をやってきて、演劇の大勢で1つのものを創り上げるということを経験するのがほぼ初めてでした。自分が平面で描いていたものが、大勢の手を通して図面になって、立体になっていくことに不安も感じましたが、感動もありました。

聞き手)
この『白い病』だからこその魅力はありますか?大道具の原さんからお願いします。

原さん■)
今回の美術はすべてのシーンが全部1つの絵になっているので、とにかく色んな部屋があるんですね。部屋があるということは「扉」があるということ。今回は合計で8個もの扉を作りました。しかも1ずつ種類も寸法も違う。扉は少しのズレも許されないので、大変でした。
あとは、2階建てのセットがあり、人が乗ってお芝居するわけなので、設計の図面はとても頑張りました。2階建てのセットは2つあるのですが1つは鉄パイプを用いていて、もうひとつは木材で建てたものになります。違う建て方でアプローチしたことにもやりがいを感じました。

聞き手)
小道具としての魅力はいかがですか、井花さん。

井花さん▲)
小道具の魅力は、「戯曲の世界」と「登場人物の日常や好み」を表現している部分です。登場人物がその戯曲の世界でどんな時代で生活しているのか、性格や好みなどを想像しながら製作しました。万年筆や薬瓶などの細かい小道具1つ1つも、作品の世界に飛び込めるように、役者さんのお芝居がより魅力的になるようにこだわりを施しました。

聞き手)
特にこだわった小道具はありますか?

井花さん▲)
とあるシーンで「旗」が登場するのですが、これはイチからデザインして、用意したものなので、目に焼き付けほしいなと(笑)

聞き手)
どこかに登場しますね(笑)。ぜひ観ていただきたいポイントの一つだと思います。
コンペから数えると、3~4ヵ月経っていますが、ここまでで印象的なエピソードはありましたか?

井花さん▲)
自分の頭で考えてから創り出す、現実のものとして作り起こすというのは大変で、苦しいと感じる瞬間もありますが、出来上がった時の達成感があります。また、何かを作ってカンパニーメンバーや役者さんの喜んだ顔が見れるとやはりホッとしますし、小道具一同はそこにも仕事のやりがいを感じています。

原さん■)
そうだね、舞台空間にセットが立ち上がった時、客席から観た時は苦労が全部飛ぶんですよね。その時、演劇楽しいって。

向井さん★)
1人で作品を作るのと、大勢で作品を作るのとでは責任感が当たり前ですがまるで違いました。自分の無知さから判断に自信を持てなくないことも多くありました。自分の指示で何人もの人が動いて、たくさんのお金が動いていくことに不安を感じ、大変でした。

聞き手)
ありがとうございます。
いよいよ明日、『白い病』は初日を迎えます。ご来場いただく皆さまに一言お願いします。では、井花さんから。

井花さん▲)
実は小道具の数は100点を超えていて、ここに込められた学生たちの想いというのを受け取ってもらえればうれしいです。
ぜひ、オペラグラスを持ってきてもらい、小道具を見てもらえたらと(笑)

兼弘さん●)
自分たちにとって中ホールという空間は非常に大きく、挑戦ではあるのですが、頑張って食らいついた努力の結晶でもあるので、ぜひ見ていただきたいと思います。
そして、この世界観に美術が綺麗に溶け込んでいるので、作品全体を楽しむのも良し、もちろんオペラグラスで見るのも良し(笑)。お待ちしております。

向井さん★)
総合実習の中でも美術が豪華な作品になっていると思います。たくさんいる美術スタッフと頑張ったので、ぜひ美術を楽しみに観に来ていただければ嬉しいです!

原さん■)
先ほど出した扉や2階建てなど、やりがいを感じるセットなので、そこに俳優たちがどう溶け込んでいるのかを見ていただきたいですね。ぜひアンケートに、美術のことも書いてください!(笑)

聞き手)
たくさんのお話ありがとうございました!

聞き手・文=本庄陸人

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30分余り続いたインタビューを座談会形式でお届けしました。
とても聞き応えのあるお話をありがとうございました!

今日、カンパニーは本番同様に行うリハーサル、「ゲネプロ」を実施しました。いよいよ全貌が明らかになった『白い病』。明日、皆さまにお披露目となります。

公演の詳細は、22日午前中に投稿いたします。

劇場でお待ちしております!

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