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今日の1冊 その4

こういう体調が不完全でもう寝ようかな〜という時、書くのに丁度いいのが「今日の○○」シリーズだ。特に本の類は全くもってストックがなくならない………こんなに便利なネタはそうそうないのだ

というわけで、本日2本目の「今日の○○」は1冊、小説をご紹介しようと思う。今回はこちら!



東野圭吾
聖女の救済

とても綺麗な装丁だ
ガリレオシリーズでも屈指の名作だと思っている


そう、こちら東野圭吾のガリレオシリーズの長編小説。こちらが2作目となっている。実写版ではドラマ第3シリーズで天海祐希がゲスト出演して、最終回としていた………

のだが!あれは間違いなく矮小化だし、ひどい原作改悪と言えた。正直あの回だけは全く見ていない。とても陳腐なものにされてしまっていたのだ。もちろん俳優陣の問題ではなく、監督やプロデューサー、脚本に問題がある。そもそも論だが、やらない方がよかったのだ、この作品は

ドラマでの1シーン
うーん、湯川と綾音がいい仲って無理がある
というか枠外にいる湯川だからこその良さが………
揃ってる俳優陣の問題ではないので切なさ倍増だ


改変された設定(湯川の人間性など)が足を引っ張ってしまい、友情も絡まったこの作品の良さを活かせないからだ。ただガリレオシリーズに関しては難しいところもあり、第1話目の「燃える」のように、明確な殺意があり何度も失敗したが殺害に成功した、という現実的改変もあるからだ。まあ東野圭吾は実写化に当たっては文句を一切つけないので、間違ってはいないのだが………

「燃える」での実験
それこそレーザー光線を相手に当てるのに、
そんな一発で当たったりはできないのだ
科学はそれほど万能じゃない
これはいい改変例だと思ってる


閑話休題。話を戻そう。まずは簡単に話のあらすじを

ある企業の社長、真柴義孝が毒物中毒で自宅で亡くなっていた。第一発見者は妻でパッチワーク作家、綾音の弟子若山宏美だった。警察の草薙、内海両刑事を中心に捜査が始まる。真っ先に疑われる宏美

そして北海道の実家から急ぎ戻ってくる綾音を迎えに行った草薙に芽生えたのは恋心だった………その事に気が付き内海は天才物理学者 湯川学の元を訪れる


という話。この話のポイントは綾音の複雑な胸中と、草薙の揺れる心と警察官としての矜恃。そして湯川の友情と犯人の壮絶な覚悟などなど…………まずミステリーとしてのトリックの複雑さ。そしてなにより人間ドラマとしての深さになるだろう。正直ミステリーマニアと言えない私にはトリックより、この小説が指し示す人々の心模様こそ醍醐味に感じる

結局どんな話であれ、(SF作品の一部などを除けば)基本人間の生み出すいろいろがメインになってくる。ゴジラ-1.0でもスターウォーズでも東海道中膝栗毛でも、全て人間を描くことが物語を作っている。だからこそ深い話になっている東野圭吾作品が好きだ。特にガリレオシリーズは容疑者Xの献身を初めとして、この手の話に事欠かない


確かにこの作品のトリックは素晴らしいのだが、それに至る経緯などを考えた時には、確かにこの方法しか有り得ないわけだ。それは人の矛盾を抱えた思考や行動が生み出している。やはりとことんまでこの作品はヒューマンドラマだと感じる


今は文庫版も発売されている。なので是非手に取って欲しい。特にドラマ版でこちらを見てしまったという、切ない思い(になったはずだ)の諸兄には一読してもらいたいところ。「聖女の救済」は決して陳腐な話ではない。むしろガリレオシリーズ屈指の名エピソードだと私は思う

読了してもらい、矛盾だらけの人の思いを感じて欲しいと願ってやまない


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