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物語で勝手に経済学その2

前回までのあらすじ

世界は農耕社会に突入!人々は豊かな食事を得ることが出来ました。しかし、労働としては皆がしっかり働かないといけない、生産主義になってしまったようです。労働者にとっては逆にきつくなってしまいました。さて、世界は今後どのようになってしまうのか?労働者は幸せな世界に辿り着けるのか?

それでは物語の続きをどうぞ〜

リーダーの誕生

更に時代は経過し、最初にあったリンゴの木と梨の木は枯れてしまいましたが、人々は農耕社会を継続しリンゴの木を10本、梨の木を10本まで生産を拡大しました。木のお世話に0.5人工、実を採取するのに0.1人工掛かります。なので、リンゴの木10本では6人工必要となり、生産量はリンゴ10個となります。リンゴの家族は生産が拡大しても皆が一生懸命働き続けたので、家族は人工と同じ6人です。また、消費も変わらず一人1日1個のリンゴで生活していたので、10 - 6 = 4個のリンゴが毎日余ることになりました。

*解説1
改めて状況を整理してみます。梨の家族もリンゴの家族と状況は同じです。
資源 : リンゴ10個、梨10個(木になっている)
労働 : リンゴ家族6人工、梨家族6人工
商品 : リンゴ10個、梨10個
消費 : リンゴ6個、梨6個
自然 : リンゴの木10本、梨の木10本
人口 : 12人

ここで、二つの家族に大きな問題が起こります。まだまだ挿し木で生産を拡大したいのですが、外敵が居るために農地を拡大できません。リンゴの家族は考えます、外敵を倒し農地を維持する為には全員が一致団結するためのリーダーと外敵と戦ってくれる兵士が必要だ。そこで、リンゴの家族は一人リーダーを立てて毎日リンゴを2個あげることにしました。それでもリンゴは余るので残りを全部使って、兵士を雇えるだけ雇うことにしました。
一方、梨の家族では別のアイデアが発案されます。生産量(商品)の20%を使って兵士を雇おう、それでも梨は余るので残りはリーダーに預けて役立ててもらおう。
この様に二つの家族はチョット考え方が異なりますが、リーダーの元で兵士を雇って生産を拡大させていきました。

*解説2
先程の解説で、リンゴも梨も余りは同じく4個でした。兵士も労働者と同様に毎日の消費は1個です。そうすると、それぞれこうなります。
リンゴの家族 : リーダー1人(リンゴ2個)、兵士2人(リンゴ2個)
梨の家族   : リーダー1人(梨2個)、兵士2人(梨2個)

全く同じですね。梨の商品は10個なので20%は梨2個となる為こうなります。

二つの家族は順調に生産を拡大し、遂にリンゴの木が20本、梨の木が20本となりました。必要な労働力はそれぞれ12人工です。また、梨の商品は20個なので、20%は4個となります。

*解説3
また、リーダーと兵士について整理してみましょう。それぞれの家族の余った商品は20 - 12 = 8個です。

リンゴの家族 : リーダー1人(リンゴ2個)、兵士6人(リンゴ6個)
梨の家族   : リーダー1人(梨4個)、兵士4人(梨4個)

となり、兵士の人数が変わってしまいました。

封建社会

物語は更に続きます。人類史上最大の難問が現れました。それぞれの開墾先がとうとう重なってしまったのです。リンゴの家族と梨の家族はお互いに自分達が開墾するんだと言って一歩も引きません。
戦争です!!
リンゴのリーダーは考えました。相手の戦力は把握できてます。兵士の数はこちらが2人も多いのですから間違いなく勝てるでしょう。しかし、いざ戦うとなるとこちらの被害も考えなければなりません。もし、向こうの労働者も戦いに参加してきたら、こちらの労働者にも被害が出るかもしれません。そうなるとせっかく拡大してきたリンゴの木がいくつか維持できなくなるでしょう。それはなんとか避けなければならない。
そこで、リンゴリーダーは暫く睨み合いをする事にしました。その間に他の国から更に兵士を雇ってやろうと考えたのです。両者は100日間睨み合いを続けました。幸いにもリンゴの家族にはリーダーに余力があります。自分の生活にはリンゴが1個で充分なので、もう1個は貯めておけます。リンゴのリーダーは100日間で100個のリンゴを蓄えました。傭兵を雇うのに一人当たり10個ものリンゴが必要ですが仕方ありません。チョット高くつきましたが、傭兵を10人雇うことができました。リンゴのリーダーは兵士6人と傭兵10人を引き連れて一緒に梨の家族に攻め上がろうとします。相手も労働者を入れて17人、こちらの被害は最小限に出来そうです。意気揚々と突撃しようとした正にその時です、背後から20人もの敵が突撃してくるではありませんか。応戦しようにも人数が人数です。あっという間に無力化され、リンゴの家族は梨の家族に征服されてしまいました。

*解説4
聡明な読者の皆様はもうお分かりかと思いますが、梨のリーダーもリンゴのリーダーと同じように梨を蓄えておいて、傭兵を雇ったのです。リンゴのリーダーは100日でリンゴを100個蓄えましたが、梨のリーダーはどうだったでしょうか?
何とその数実に300個!20人の傭兵を雇っても更に100個もの余力がありました。どうしてこのような差が生まれてしまったのでしょうか?
実はリンゴの家族のやり方は町内会の会長を決めるようなものです。リーダーの報酬が規定されており、一般市民との間で権力差が広がっていかないようになっているのです。一見すると平和的で平等ですが、その為に余力を皆で分けあってしまい緊急時に戦力に集中ができなくなってしまっています。経営でいうところの「選択と集中」が出来ないのです。一方で梨のリーダーの権力は強大です。毎日一般市民の4倍もの収入を得ています。まさに封建社会の王様ですね。優秀な王様であれば、日頃から武器などを製造し兵士達に与え兵士達の蓄えも増やしていたかもしれません。もちろん今回のように緊急時にはその蓄えを一気に放出し、外敵の排除に集中させた事でしょう。
残念な事に歴史を見るとこのような封建社会が勝ち残っていったようです。このような社会では労働者と特権階級との権力差はどんどん広がっていってしまいます。もしかしたら労働者は毎日1人工以上の労働を強いられていたかもしれません。それでも得られるものは何とか生きるていけるだけの梨1個だけであったでしょう。

梨の王様はリンゴの家族を征服したので、世界の主食を梨に変更してしまいます。リンゴの木は全て梨の木に変わっていってしまいました。兵士は特権階級となり、当初の取り決めの通り商品の20%を日貢として納めることとし、残った余力は全て王様のものとなりました。

*解説5
労働者目線でこれまでの状況をまとめてみましょう。条件をそろえる為に労働者4人だけを切り取って、食糧も梨だけで考えてみます。 

狩猟採集社会では
資源:梨4個
労働:2人工
消費:梨1個/人

農耕社会では
資源:梨6個(全部挿し木)
労働:3.6人工(生産主義)
消費:梨1.5個/人

封建社会
資源:梨6個(全部挿し木)
労働:4人工
消費:梨1個/人

如何でしょうか?あなたはどの社会で暮らしたいと思いますか?
単純に個人の報酬(消費)だけで見ると農耕社会が良いように思えます。しかし労働生産性で見ると狩猟採集社会の方が少ない労働で成果を上げており効率が良いように思えます。これは自然の働きを最大限利用することで、労働をしなくても商品が完成に近づいている事に起因しています。なので、働きに対する報酬は実は農耕社会よりも高いのです。ただし、報酬額、労働生産性のどちらにおいても封建社会は劣っています。少なくとも封建社会は労働者にとっては最も厳しい社会構造であったことと思います。


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