グーグル世界を使ったスポーツ分析ソリューション

2021年12月6日 12:52

この記事は、スポーツアナリティクス Advent Calendar 2021のために書いた記事です。
2年前にハンドボールの試合でのタグ付けし、その時の統計データを取得するエクセルシートを作成しまししたが、その後の展開です。
昨年外出自粛で現地での分析活動ができないときに遠隔でかつ手頃なシステムでリアルタイム分析ソリューションをノーコードで既存のサービスを組み合わせて作れないかと考え作ってみました

はじめに
近年、あらゆるスポーツコーチングのプロセスの中において、映像と統計データが選手やプレーの評価およびトレーニングプランの作成に役立てられてきている。同様に、ハンドボールにおいてもトレーニングや試合時の出来事映像や統計データの収集が行われチームの成長に役立てられている。この映像や統計データの収集のためのソフトウェアやツールは、多くのメーカーから販売されているが、アマチュアやグラスツールにとっては、それらは非常に高価である。
そこで、インターネット上で誰でも無料で使用することができるYouTube live Streaming、GoogleスプレッドシートとGoogleデータポータルを組み合わせて、それぞれのシーンのタグ付による映像編集とタグ付けによる統計データの自動生成および編集映像と統計データの共有を行うことのできるシステムを開発することとしました。

本分析ソリューションの前提
本分析ソリューションでは、誰でも無料で利用できる汎用的なアプリケショーションを用いることとした。
また、本分析ソリューションは、リアルタイムにてゲームの記述および映像、統計的な結果の入出力を目指し、かつ、入力地と出力地が異なる場所で利用できることを重要視して作成された。
その結果、映像の視聴はYouTube Live Streamingを、記述データの入力は、Googleスプレッドシートを、映像および統計データの結果の出力はGoogleデータポータルを利用することとした。

データ入力部分について
本スプレッドシートは、1．ゲームの記述分析を行うために必要な変数の定義する部分（C列からE列）、2．映像共有時に使用するタイムスタンプ作成のために必要となる動画上の試合開始時間およびチームや選手名を設定する部分（H列からK列）、3．記述分析時に文字を入力する部分（S列からV列）、4．動画共有のためにYouTubeのURLにタイムスタンプ機能を加える部分（S列とAV列からBD列）、5．記述分析による統計的なデータを算出する部分（BF列からDH列）の5つの部分により構成された（図1）。

1．ゲームの記述分析を行うために必要な変数の定義（B列からE列の部分）
今回は、統計的な分析データ算出のためには、4つのゲーム局面、9つの攻撃シチュエーション、7つのシュートポジション、10つの結果に分類した。本システムでは、1．ゲームの記述分析を行うために必要な変数の定義する部分（C列からE列）で自由に分析したい変数を設定することが可能であり、チームや分析者のアイディアに沿った自由度の高い分析項目の設定を行うことができるようになっている。

2．映像共有時に使用するタイムスタンプ作成のために必要となる動画上の試合開始時間およびチームや選手名を設定する部分（H列からK列）
YouTube映像のリアルタイム共有のために、動画配信されているURLに”&t=”のコマンドを加え、タイムスタンプ機能利用した。この機能を用いて、動画再生時の時刻とタグ入力したときの時刻の差分を求め、その映像上の経過時間を算出した。
加えて、チーム名や選手名もこの部分で設定できるようにした。

3．記述分析時に文字を入力する部分（S列からV列）
S列からV列の間には、それぞれB列からE列にて設定された記号を入力する部分とした。
S列にはモーメントを、T列にはシチュエーションを、U列にはシュート位置を、V列には結果を、W列には、選手の番号を入力するように設定した。なお、モーメントを入力することで、AB列に攻撃しているチーム名を示し、同様にAC列からAR列には入力項目を確認できようにした。

4．動画共有のためにYouTubeのURLにタイムスタンプ機能を加える部分（S列とAV列からBD列）
S列のモーメントを入力したときに、Google Apps Scriptを使用して、入力時の時刻を取得した。そのコードは以下のようであった。

AV列からBD列の間で、動画開始時刻とGASを用いて取得されたモーメント入力時の時刻との差分を計算した。計算された差分時間をYouTubeURLに”&t=”とともに加えることで、それぞれのモーメントの開始時から開始されるタイムスタンプ機能を有したYouTubeURLが作成された。

5．記述分析による統計的なデータを算出する部分（BF列からDH列）
　BF列からDH列の間では、BIツールであるGoogleデータポータルにて、統計的なデータを示すためにそれぞれ入力したデータのカウントや計算を行った。

データ出力
Googleスプレッドシートにて入力されたデータから作られたタイムスタンプ機能を有したYouTubeURLと統計的なデータはGoogleデータポータルを用いて表示した（図2）。
左側上部には、ゲームペース、それぞれのチームのポゼッション、シュート、ゴール数およびポゼッションあたりのシュートの割合(xS)、ポゼッションあたりの得点の割合(xG)、Shot Effeciencyを示した。右上部には、xSとxGの時系列変化を示した。中央の表はそれぞれのチームの時系列なゲームトレンドを示しており、表の右にあるURLでその場面の映像をすぐに視聴することを可能としている。また、表やグラフは他の表やグラフとインタラクティブにリンクさせ、データを選択できるようにした。

21年世界選手権での本システムの検証
　そこで、2021年1月に行われた男子世界選手権のYouTube Live Streamingで配信される日本の試合6試合を対象として、Googleスプレッドシートを用いたデータ入力と、Googleデータポータルを用いてデータ出力を行い、本システムの有用性を検証した。なお、本データは当時にリアルタイムで分析したデータである。

データ入力については、以下のスプレッドシートを参照ください。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1AqcUbru5-DdqDr_ddCqJK9UwiA4m5oIfgt6utJNJNmA/edit?usp=sharing

データ出力については以下のURLを参照ください。
1試合目
https://datastudio.google.com/reporting/193d7948-fa70-490e-944c-57c758913bfa
2試合目
https://datastudio.google.com/reporting/a84dc11c-0165-40f5-b716-d1b0bd2d286e
3試合目
https://datastudio.google.com/reporting/b27dbd7d-a989-4162-988c-21a15cfad424
4試合目
https://datastudio.google.com/reporting/d2f529df-61ca-4d0a-b66f-70682ff5a17e
5試合目
https://datastudio.google.com/reporting/38032fb3-9b55-4dea-a429-68ee1456fcec
6試合目
https://datastudio.google.com/reporting/b0b350a3-a815-4d02-8f4f-d45c349e2004

まとめ
本システムでは、インターネットにアクセスさえすれば誰でも利用することが出来るYouTube Live Streaming、Googleスプレッドシート、Googleデータポータルの3つアプリケーションを組み合わせることで、有料のスポーツ映像および統計分析ソフトウェアとほぼ同様な機能を持った映像および統計的な分析システムを開発することができた。本システムの特徴は、データ入力と出力をそれぞれ別の端末で操作することが可能であることと、複数端末で協同したデータ入力と出力を可能としたことであった。さらに、入力データをインターネット上で共有することで、データ入力とデータ出力の場所の距離をデータ入力とデータ出力の場所の距離は無視できることが本システムの特出した特徴である。このような、無料で使用でき、リアルタイムに映像と統計データを世界中で共有できるシステムは、我々の知る限りでは本システム以外はないと思われる（ホントかよとのツッコミがありそうです・・・）。

将来について
本システムは、インターネット上にて自由に使用することができるYouTube Live Streaming、Googleスプレッドシート、Googleデータポータルの3つアプリケーションを組み合わせていることから誰でも自由に使用することが可能なシステムである。もちろん将来的には、それぞれの試合にて分析された映像と統計データをデータベース化することを視野に入れている。本システムのような自由でフリーなスポーツ分析システムが発展すれば、世界中のハンドボール愛好家達の協力を伴うことでサッカーのwyscoutのようなデータベースをオープンな環境下で作ることができると考える。そして、世界中のハンドボール愛好家達が自由に試合を分析し、試合の映像と統計データがデータベース化されることは、さらなるハンドボールの発展につながることと信じている。

制限事項
　本システムはで使用したGoogle社の3つのアプリケーションはインターネット上で非常に有用で簡便に数種類のアプリケーションを連携させることが可能であり、自身で新たなアプリケーションを開発するよりも非常に簡便であった。しかしながら、本システムは、すべてGoogle社のサービスに依存しており、これらのアプリケーションのサービスの改変や終了により本システムは使用できなくなるリスクが含まれおり、避けることの出来着ないことである。また、本システムでは動画公開サイト上のタイムスタンプ機能を利用している。したがって、映像の公開がタイムスタンプ機能を有していないサイトでは、本システムでは統計データのみしか適用できない制限がある。

なお、2021年12月1日から行われているハンドボール女子世界選手権でも本システムを使用し、分析中であります。ご興味のある方はご連絡ください。
以下、大会のライブ配信URL

本当はスポーツコードやナックスポーツ、スプライザを、データベースではwyScoutなどを使うのが好きです。なので、どなたか与えてください。

それらの最新版を手に入れることのできないので、作ってみたということでした。
この次は、この延長で、スマホでのデータ入力に挑戦したいと思います。
以上。

皆様、よい年末年始をお迎えください。

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