LIVEALIVEワンライ60分文字書き

使用お題
『Go!Go!ブリキ大王!!』
『オルステッド Oersted』
『人間っておかしいだろ…?』

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 私は…これを知っている。そう、城の書庫で。古の力を持ち、人の命を動力源とし、地の果てまで破壊の限りを尽くす魔神。名を…
「ブリキ大王じゃ。カッコええじゃろ」
 この大地下のブリキ大王へ続く鉄橋の上、足元も見えない天地空間で構成された安置室では、僅かな声でも遠く残響が抜けていく。
「電磁波の急変動をタンチしたので港の倉庫に行ってみれば、素っ裸で寝ておったオヌシ。ところどころ記憶が飛んどるようじゃから気晴らしにと思って一週間ものあいだ、自由にさせてみた。散歩をさせてやれば鯛焼き持って帰ってくる。濡れ鼠になって帰ってきたと思えばケーサツがやってきて表彰されておる。ちびっこハウスに行ったら子供たちを全員担いで妙子サンに怒られておる。そして」
「…このブリキ大王の前で見るオヌシの顔は、今までのどれにも当てはまらないものじゃな」
 スケスケの電脳がキラリと光る。
「オルステッド…ヌシの名その姿をあらゆる時代、場所において調べさせてもらったが、このワシ、藤兵衛の天才的頭脳をもってしてもワカラン。このデカブツもそうじゃ。ワシがワカランものは、他の誰にもワカランものじゃ」
 オルステッドと呼ばれた青年は藤兵衛に目もくれず、踵を返す。バッシュの靴音が鉄橋を通じて響く。興味に乗じてこんな地下まで来るものではなかった。自分の記憶違いかもしれない。
「乗ってみるか?」
 背後から聞いたことのない声が聞こえる。今のは藤兵衛の声なのか?振り返ることは出来ない。
「帰れるかもしれんのに…」
 足が止まる。何を…
「何を言う…ッ!」
 足元の藤兵衛は顔を見ずに続ける。オルステッドは距離を置く。
「ブリキ大王には未知の機能がある。例えば、ボロボロになってもその傷もしばらくするとフクゲンしてしまう。時空の歪みを持っておるとのちに分析を進めてわかったことじゃ。オルステッド君、ヌシの帰る場所はこのブリキ大王の進む先にあるとワシは確信しておる」
 藤兵衛は歩を進める。
「超能力でも無かった。集中力でも無かった。要は…」
 ガシャン、と背に鉄柵が当たる。
「命の炎が燃える時にブリキ大王は動く」
 もはや逃げ場はない。決意しなければならない。ルクレチアの地下深く、苔生した古の王の間で。私が絶望の祭壇で身を捧げたその時、全てが終わったはずだった。が、この場に誘われた。この破壊と再生の神の元へ。
「わかった、案内してくれ」
 全てをやり直せるかも知れない。一抹の希望を賭けて。オルステッドは藤兵衛を押し退けると、強い足取りで階段へ消えていった。
 残った藤兵衛は振り向き、言う。
「人間っておかしい…じゃろ?」





 




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